ハノイの治安ガイド2025:安全度・注意点・現地トラブル対策まとめ

2025.11.01
旅・ガイド

ベトナムの首都・ハノイ。

バイクのエンジン音とクラクションが入り混じる旧市街の喧騒、美しいホアンキエム湖を囲む緑の木々、そして香ばしいフォーの香り。

東南アジアらしい熱気と人情に満ちたこの街には、旅人を惹きつけてやまない魅力があります。

しかし、そんな活気の裏側には、旅行者が思わぬトラブルに巻き込まれる危険も潜んでいます。

ホアンキエム湖の北側から広がる旧市街はハノイらしいエネルギーが凝縮されたエリアですが、そのぶん観光客が狙われやすい場所でもあります。

私自身、初めて訪れたときは街の勢いに胸を躍らせつつも、いくつかの“ヒヤリ”とする瞬間に出会いました。

この記事では、実際に現地で体験したこと、そしてハノイ在住者のリアルな声をもとに、ハノイの治安の実情と、安全に旅を楽しむために絶対に知っておきたいポイントをお伝えします。


ハノイは本当に危険?最新データで見る治安状況(2025年版)

結論から言えば、ハノイは東南アジアの中でも治安が良好な都市です。

都市の安全度を比較するNumbeo(2025年上半期版)のデータによってもそれは裏付けられており、ハノイの安全度は66.1ポイント。治安が安定した都市に位置づけられています。

Numbeoでは、安全度の数値が高いほど安全性が高いことを示し、日本では東京が75.1ポイント、大阪が67.0ポイント。ハノイはおおむね大阪と同程度の安全度です。

ベトナム国内でも都市によって印象は異なります。ホーチミン市は49.6ポイントとやや低めで、観光地や夜間の移動では注意が必要な都市に分類されます。

その一方で、ダナンは76.2ポイントと東京すら上回る安全水準。空気もきれいで、穏やかな海辺の街として「最も安心して過ごせる都市」として近年人気が高まっています。

とはいえ、スリや置き引き、ぼったくりといった軽犯罪は日常的に発生しています。「日本と同じ感覚」で過ごすと、思わぬ被害に遭うこともあるため、街歩きでは常に少しの注意と準備を心がけましょう。


旧市街・市場で多発するスリとお釣りトラブルに注意

旧市街のドンスアン市場やナイトマーケットは、ハノイらしい熱気を感じられる人気スポットです。

同じくホアンキエム湖の北側にあるハンガイ通り周辺も、土産物屋が密集する典型的な“スリが多いエリア”のひとつとして知られています。人が多く集まる場所ではスリや置き引きの被害が起こりやすく、観光客は格好の標的になります。

特にリュックを背中に背負っていると、気づかぬうちにファスナーを開けられることがあります。バッグ類は体の前で抱え、荷物を置いたまま席を立たないようにしましょう。また、スマートフォンをテーブルに置きっぱなしにするのも避けるのが賢明です。

さらに現地在住者が口をそろえて言うのが「お釣りトラブル」。

市場や個人商店では、高額紙幣(50万ドンや20万ドン)で支払うと、「お釣りがない」と言われたり、意図的に金額をごまかされたりすることもあります。

こうしたトラブルを避けるために、地元の人は常に細かいお金——1万、2万、5万ドン札など——を別に用意しています。少額紙幣を多めに持っておくことが、最強の自衛策です。


バイクによるひったくり被害——歩きスマホは厳禁

「バイクの街」と呼ばれるハノイでは、無数のバイクがまるで川のように流れています。中には、すれ違いざまにバッグやスマホをひったくる犯人も。

とくに旧市街の細い路地や、ハンガイ通り周辺のように車道と歩道の境目があいまいな場所は要注意です。地図を見るときは立ち止まり、バッグは車道と反対側に持ちましょう。

一瞬の油断が命取りになる場面もあります。


タクシーやシクロでのぼったくり——“Grab”が最強の味方

ハノイではタクシーやバイクがすぐに乗れて、しかも安く、どこに行くにもとても便利です。ほぼ自転車代わりといっても過言でないぐらい活用できるでしょう。

ですが、ハノイでは、観光客を狙ったぼったくりタクシーも後を絶ちません。

メーターを使わずに法外な料金を請求されたり、遠回りされたり、お釣りを返さないケースもあります。観光用の三輪自転車「シクロ」でも、交渉した金額と違う料金を請求されたり、高額なチップを要求されたりすることがあります。

最も安全で確実なのは、配車アプリ「Grab」を利用すること。乗車前に料金が確定し、ドライバー情報も表示されるため、トラブルをほぼ防げます。

ただし、Grabが使えない場面もあります。流しのタクシーを使う場合は、「Mai Linh(マイリン・緑)」や「Taxi Group(タクシーグループ・白)」など大手を選び、「メーターを使って」と伝えましょう。


道路横断のコツ——焦らず“ゆっくり進む”勇気を

ハノイの交通は混沌そのもの。

バイクが絶え間なく流れる道路を前にすると、初めての旅行者は足がすくんでしまうかもしれません。

けれども実は、渡り方のコツがあります。それは、ゆっくりと一定の速度で歩くこと。立ち止まったり走ったりすると、バイクのドライバーが動きを予測できずかえって危険です。流れに身を任せながら、リズムよく進むことを意識しましょう。

不安な場合は、地元の人が渡るタイミングで一緒に進むと安全です。バイクの大波の中を悠然と歩くことができれば、ベトナムの現地にちょっと溶け込めた気持ちになるでしょう。


夜の繁華街に潜む違法な誘い——絶対に関わらない

旧市街のビアホイ・コーナー(ターヒエン通り周辺)など、夜になると観光客で賑わうエリアでは、まれに「ガンジャ?」「マリファナ?」と声をかけられることがあります。

また、ハノイ大教会の近くにあるバックパッカー街・ゴーフィン通り周辺でも、似たような声かけをされることがあります。軽い冗談のように感じても、絶対に応じてはいけません。

ベトナムでは大麻やドラッグの所持・使用は厳罰対象で、外国人であっても最高刑は死刑という非常に重い刑罰が科されます。話しかけられても、目を合わせず、足を止めず、静かに立ち去りましょう。

これだけは、「ダメ、絶対。」です。

インスタ映えスポットとして知られるロンビエン橋も、夕方以降は雰囲気が一変します。暗がりに人がたむろしていたり、酒やドラッグの匂いが漂っていたりすることもあるので、観光で訪れるなら日中の明るい時間帯だけにしておくのが無難です。

しつこい客引きや押し売りは“笑顔で断る”のが最善策

ハノイの旧市街や観光地では、しつこい客引きや押し売りに遭遇することもあります。

私や友人が現地で見かけたり聞いたことがある事例をいくつかご紹介します。

  • 「写真を撮ってあげる」と近づき、天秤棒を担がせて写真を撮らせたあとに高額な果物代を請求する“フォト商法”は典型的な手口です。
  • 通りを歩いていると「靴が汚れている」と言って勝手に靴を磨き始め、高額な料金を要求されるケースがあります。
  • 寺院の周辺では、花や線香を差し出して「幸運をもたらす」と勧め、受け取った後に料金を請求する人も見られます。
  • 夜のナイトマーケットでは、子どもがポストカードやブレスレットを売り歩く光景もありますが、その背後に大人の管理者がいることも少なくありません。
  • 路上物売りや路上マッサージ、手相占いも同様で、「試食」「無料」「体験だけ」と言いながら、終わった後に料金を請求されるケースもあります。
  • さらに最近では、身体に障がいのある人が募金箱を持ち、スピーカーから感傷的な音楽を流しながら観光客の前に現れるケースも報告されています。彼らの背後には、移動を手伝ったり、感傷的な雰囲気を演出したりする人物が控えていることがあり、一概に悪質とは言い切れないものの、こうした行為を「商売の一形態」として利用している可能性も指摘されています。本当に支援を必要としている人なのか、あるいは商業的に演出されているのか——旅行者には判断が難しい場面です。
    そのため、その場の感情に流されず、募金や寄付は信頼できる団体や施設を通じて行うのが安心です。

私自身、ハノイへはじめて訪れた際、旧市街でバイクに乗ったふたり組のお姉さんに「バイクの後ろ乗ってみない?」と声をかけられてホイホイ同乗したら、怪しいビルに連れて行かれて高額請求された苦い記憶があります。

こうしたトラブルを避けるには、関心を示さないことが一番の防御策です。

笑顔で「ノー・サンキュー」あるいはベトナム語で「Không, cảm ơn(ホン・カム・オン)」と伝え、立ち止まらずに歩き続けましょう。

曖昧な態度を取ると「まだ可能性がある」と誤解され、さらにしつこくされることもあります。毅然とした態度で接することが、結果的に自分を守る最も確実な方法です。


警察は“最後の砦”ではないと心得る——“自衛”こそ最大の防御策

これは現地生活者が強調する大切なポイントです。

万が一、スリやぼったくりに遭ったとしても、盗まれた物が戻ってくることはほとんどありません。言葉の壁に加え、軽犯罪の捜査に積極的でないこともあり、実際に解決に至るケースは稀ですので、警察に頼り過ぎない方が安心です。

もちろん、保険金請求などのためにポリスレポート(被害届)を作成してもらうことは可能です。

ですが、基本的な心構えとしては「警察に頼るより、被害に遭わないことを最優先に考える」べきです。“盗られない”“巻き込まれない”ことが最大の防御なのです。

万が一被害に遭った場合、緊急時のフレーズはベトナム語で「ゴイ コンアン!」(「公安」を呼んで!)と覚えておきましょう。宿泊先のホテルスタッフに相談すれば、通訳などサポートをしてくれる場合もあります。

ハノイ公安の緊急番号は113、交通警察は069-2196-779です。

女性一人旅で気をつけたい服装と行動エリア

ハノイは女性一人旅にも人気ですが、夜の街歩きや服装には少し注意を。

人通りの少ない路地を避け、明るく人の多い通りを選びましょう。宗教施設を訪れる際は、肩や脚を大きく露出しない服装を心がけてください。

また、カフェではバッグを椅子の背もたれに掛けず、常に手元に置いておくことをおすすめします。


安全に旅を楽しむための準備とチェックリスト

旅行前には必ず海外旅行保険に加入しておきましょう。ケガや病気はもちろん、盗難被害(携行品損害)に対応しているプランを選ぶと安心です。

また、現金・パスポート・クレジットカードなどの貴重品は一か所にまとめず、分散して管理することが大切です。

外務省の「たびレジ」に登録しておけば、現地の緊急情報を日本語で受け取ることができます。もしもの時に備える“旅の保険”として、出発前に必ず登録しておきましょう。

あわせて、落ち着いた滞在先を選ぶなら、観光の中心であるホアンキエム湖周辺や、外国人居住者が多いタイ湖(Tay Ho)エリアは、初めてのハノイでも過ごしやすい場所です。


まとめ:注意を怠らなければ、ハノイは最高に魅力的

ハノイの治安は、注意を怠らなければ驚くほど安全で、そして魅力に満ちた都市です。

軽犯罪のほとんどは、ちょっとした意識で防げるもの。現地生活者が口にする「細かいお金を持つ」「警察を過信しない」という心構えは、まさに実践的な知恵です。

自分の身を守る準備を整えたうえで、ぜひハノイの街を思う存分楽しんでください。朝のコーヒーの香り、夕暮れのバイクの群れ、夜風に揺れる屋台の提灯——。

そのどれもが、あなたの旅を忘れられないものにしてくれるはずです。

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エンジニア

幼少期をアメリカで過ごし、現在は世界を転々としながらコードを書くノマドエンジニア。

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