ベトナム雨季の必需品。スコールで出会う、ローカル御用達の「It」レインコート

2025.11.03
暮らし

旅先でのファッションは、その土地の空気にいかに溶け込むかが鍵。特に、急なスコール(土砂降り)が日常のベトナムでは、雨具さえもファッションの一部だ。

ストリートでハッと目を引くのは、現地ファッショニスタたちがこぞって身に纏う、チープシックなレインコート。これは単なる雨具ではない。その日のムードを決定づける、エッセンシャルなファッションピースだ。これを纏うだけで、ローカルたちとの不思議な連帯感さえ感じられる。


センシュアルな「透け感」を操る

最大の特徴は、そのセンシュアルな「半透明ビニール」の素材感。

あえてインナーを透けさせることで、レイヤリングの妙を存分に楽しめる。グリーン、水色、ピンクといったヴィヴィッドなカラーパレットから、クリアな白、プレイフルな細かな柄物まで。どの色を選ぶかで、その日の個性を表現できる。

シルエットは、潔いワンサイズのプルオーバータイプ(M〜L相当)。頭からガバッとかぶる、そのラフさが今の気分にぴったりだ。


秀逸なディテールが、チープシックを格上げする

一見シンプルだが、計算されたディテールが光る。

フーディのドローストリング(絞り)には、あえて存在感を消した「極細の糸」を採用。これにより、素材のビニール感が際立ち、ミニマルな印象を加速させる。

秀逸なのは袖口だ。キュッと絞られたゴム素材が雨の侵入を完璧にガードしつつ、クシュっとした「ギャザー」がフェミニンなアクセントとして機能している。軽量素材で動きやすく、アクティブな旅の動きを一切妨げない。


スタイリング提案:モデルが着こなす「アーバン・ベトナム」

今回、現地で出会ったベテランスタイリストにチョイスしてもらったのは、鮮やかなグリーン。

このコートのポテンシャルを最大限に引き出すのは、インナーに忍ばせた「白T」。半透明の素材が白Tのクリーンさを拾い、驚くほど発色を良く見せてくれる。

そして、最強の相棒はベトナムの象徴「ノンラー(円錐形の笠)」。これぞ究極のローカルスタイル。

<サイズ感レポート>

身長180cmの筆者には、袖が10cmほど短く、ややコンパクトな着こなしに。だが、その「アンバランスさ」が、逆にモードな“抜け感”を演出する。

着丈は太ももまでをカバー。ロングパンツを合わせると裾が濡れてしまうため、ショートパンツとサンダルで軽快にまとめるのが正解だ。


エディターズ・ノート:旅先で手に入れる「儚い」トレンド

このコートは、雑貨店や、雨が降り出せばどこからともなく現れる物売りの人々から、5,000〜10,000ドン(約30〜60円)という驚きの価格で手に入る。

購入時はコンパクトに畳まれているが、一度広げると元通りに畳むのは至難の業。そして、耐久性は(個体差もあるが)約3回程度。

だが、それでいい。

濡れたまま放置せずしっかり乾かすか、あるいは、旅先で出会う「儚(はかな)い」トレンドピースとしてその一瞬を楽しみ、潔く手放す。それこそが、このアイテムを最も粋に着こなすTIPSだ。

TRAVELER’S NOTE:スコールと出会う「雨季」こそ、この一着の出番

ベトナムの旅で多くの旅行者が体験するのが、突然空が暗くなり、バケツをひっくり返したような激しい雨が叩きつける「スコール」。
このスコールが頻繁に訪れるのが「雨季」です。ベトナムは南北に長いため、地域によって雨季の時期が異なる点に注意しましょう。

・北部(ハノイなど): 5月〜9月頃
・中部(ダナン、ホイアンなど): 9月〜1月頃
・南部(ホーチミンなど): 5月〜10月頃

とはいえ、日本の梅雨のように一日中降り続くことは稀(台風シーズンを除く)。“ザッと降って、スカッと止む”のがスコールの特徴です。ほんの30分〜1時間ほどカフェで雨宿りすれば、また太陽が顔を出すことも。
だからこそ、現地の人々はこの手軽なレインコートを愛用しています。大げさな傘や重い雨具ではなく、必要な時だけサッと被り、止んだらすぐに脱げる。
このファッションピースが最も輝くのは、まさにベトナムの「雨季」。スコールさえも旅のアクセントとして楽しむための、最高のお守りになるはずです。

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エンジニア

幼少期をアメリカで過ごし、現在は世界を転々としながらコードを書くノマドエンジニア。

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