ベトナムのお年玉(リーシー)相場|恋人・相手別の金額と渡し方マナー

2026.02.07
文化・歴史

テト(旧正月)の時期、街にあふれる赤い封筒「Lì xì(リーシー)」。

ベトナムのお年玉は、日本と似ているようで、実はルールも距離感もまったく違います。

この記事では、「いつまで貰う?いつから渡す?」「恋人にも渡す?」「金額の目安は?」など、日本人が迷いやすいポイントを、文化の背景とあわせて整理します。

ベトナム語で「お年玉」は何という?(リーシー/ムントゥオイ)

ベトナムにも、日本と同じようにお年玉の習慣があります。ただ、ベトナム語での呼び方は地域によって違います。

  • 南部:Lì xì(リーシー)
  • 北部:Mừng tuổi(ムントゥオイ)

日本で見聞きするのはたいてい南部の「リーシー」のほうですが、ハノイなど北部では「ムントゥオイ」が一般的です。北部でも「リーシー」は通じますが、より自然でよく使われるのは「ムントゥオイ」のほうです。

「Lì xì(リーシー)」は、古い中国語の「利市(縁起・利益を意味する言葉)」に由来するといわれています。一方の「Mừng tuổi(ムントゥオイ)」は、mừng=祝う・喜ぶ、tuổi=歳。新しい年に歳をひとつ重ねることを祝う、という意味合いの言葉です。

【2027年版】相手別・お年玉(リーシー)相場早見表

ベトナムのテト(旧正月)の祝い用品店。店先に赤い飾りや贈り物用の箱が所狭しと並び、新年の買い物でにぎわっている。

※通貨単位:ベトナムドン(VND)。できるだけ新札(ピン札)を用意するのがマナーです。

相手 目安(VND) 補足
恋人・パートナー 500,000 以上 50万ドン(約3,000円)以上を包む人が多め。現金をそのまま入れるのが一般的です
友人の子ども 50,000 〜 100,000 年齢によりますが高額でなくて大丈夫です
職場のスタッフ 100,000 〜 200,000 全員一律にすると無難です
アパートの警備員・清掃員 20,000 〜 50,000 日頃の感謝として渡すと喜ばれます
タクシー・Grab運転手 10,000 〜 20,000 お釣りをチップとして渡す程度でOKです

渡す時のポイント(これだけ押さえればOK)

  • 金額よりも、「赤い袋(ポチ袋)」に入れて渡すのが大事です(スーパーやコンビニで買えます)
  • 渡す時は「Chúc Mừng Năm Mới(チュック・ムン・ナム・モイ/明けましておめでとう)」と一言添えると喜ばれます
  • ボロボロのお札は避けるのが無難です
  • 渡す時期は旧正月の1〜3日目が中心。基本は新年の挨拶をしたタイミングで手渡しますが、年が変わる0時(年越しの瞬間)に、その場ですぐ渡す家庭もあります

縁起のいい数字・避けられやすい数字

ベトナムでも、お祝いの場では6・8・9が縁起の良い数字として好まれることがあります。
なお、中国文化圏では「4」を避ける習慣が広く知られていますが、ベトナムではそこまで強く気にしない人が多いです。

迷ったら、以下のような「キリの良い金額」が一番安心です。

  • 50,000ドン
  • 100,000ドン
  • 200,000ドン

※ただし、厳格なルールではないので、あまり神経質になりすぎなくても大丈夫です。

ベトナムのお年玉袋「Bao lì xì(バオリーシー)」

ベトナムの市場の露店に並ぶテト用のお年玉袋(バオリーシー)。赤や金箔模様の縁起のよいデザインがずらりと陳列されている。

お年玉は、専用の袋に入れて渡すのが基本です。この袋をベトナム語で「Bao lì xì(バオリーシー)」と呼びます。日本のポチ袋によく似ていますが、お札を折らずにそのまま入れられる大きめサイズのものも多く出回っています。

  • 呼び方:Bao lì xì(バオリーシー)=お年玉袋
  • 色・柄:赤が定番(黄色や金など縁起のいい色も人気)。その年の干支をあしらったデザインも人気
  • サイズ:ポチ袋サイズ〜お札を曲げずに入る大きめサイズまで
  • 買える場所:テト前になると、スーパー・コンビニ・市場・文具店・ネットなどで広く売られます

新札(ピン札)を、折らずにこの袋へ。中身の金額そのものより、「きちんと袋に入れて手渡す」という形が大切にされます。

ベトナムのお年玉文化―「あげる人」と「もらう人」の境界が曖昧な世界

テトそのものについて知りたい方は、ベトナムのテト(旧正月)完全ガイドをどうぞ。

もし「外国人がベトナムで最も戸惑うテト(旧正月)の習慣」を一つ挙げるとしたら、私は迷わず「お年玉(リーシー)」だと思います。

複雑だからではありません。むしろその逆で、あまりにも柔軟だからです。

「正解のルール」を探そうとすると、かえって答えが見つからない――それがベトナムのお年玉です。

ベトナムでは、お年玉は単に「大人が子どもにお金を渡す行為」ではありません。

それは新年の幸運や健康を願う祝福の気持ちを手渡す行為であり、そのため、渡す相手・受け取る相手の範囲も、他のアジア諸国に比べて広いのです。

いつまで「もらう側」で、いつから「渡す側」になるのか?

「何歳までお年玉をもらえるのですか?」とベトナム人に聞いても、明確な答えは返ってきません。

一般的に、子どもや学生は当然のように「もらう側」です。

しかし成長するにつれ、その境界は少しずつ曖昧になります。決め手になるのは年齢ではなく、家庭や社会の中での立場です。

  • 働いて収入が安定してくると、独身でも家族の小さい子や甥・姪にお年玉を渡し始める人が多いです。「渡す側」になるのに結婚は必須ではありません。
  • 結婚すると、その意識はよりはっきりし、親戚の子どもにお年玉を渡す立場になる人が増えます。
  • ただし、30~40代で未婚の場合でも、祖父母や両親、年上の親戚からお年玉をもらうことは珍しくありません。それは「自立していない」という意味ではなく、新年の幸運を願う気持ちなのです。特に30歳を過ぎても独身の女性には、「早くいい人が見つかりますように(=早く結婚してね)」という願いを込めて渡されることもあります。

ここに「正しい・間違い」はありません。
あるのはただ、「今の自分はどの立場にいるか」という感覚だけです。

恋人同士のお年玉―ベトナムならではの文化

ベトナムでは、お年玉は家族や大人と子どもの関係だけに限られたものではありません。実は、恋人同士でもテトの時期にお年玉を渡すことがあります。この話を聞くと、日本人や外国人は驚くことが少なくありません。

「恋人同士でもお年玉を渡すの?」とよく聞かれますが、答えは「はい」。しかも、とても自然なことです。

恋人へのお年玉には、「生活を支える」といった意味も、「多い・少ない」を比べるような意味もありません。それは、お年玉という形を借りた新年の挨拶のようなもの。大切な人に「今年も無事で、元気に、幸せでありますように」と願う気持ちを伝えるためのものです。

金額は気持ち次第ですが、恋人やパートナーには50万ドン(約3,000円)以上を包む人が多めです。子どもへのお年玉のように「ほんの気持ち」で済ませるより、少しまとまった額を渡すのが自然とされています。それでも大切なのは金額そのものではなく、そこに込められた気持ち。「新しい一年も、最初にあなたの幸せを願いたい」——そんな思いが、そっと込められています。

お年玉は本来、顔を合わせて手渡しするもの。テトに会えるなら、振込より直接渡すのが基本です。日本とベトナムで離れて過ごす遠距離カップルなど、どうしても会えないときは、銀行振込で気持ちを届けるのも自然になってきています。

渡す側は少し照れながら、受け取る側は驚きつつ、思わず笑顔になる。その一瞬が、新しい年の始まりを、やさしく温かいものにしてくれます。

もちろん、すべてのカップルがそうするわけではありませんし、しなくても問題はありません。それでも、恋人にお年玉を渡すという人にとっては、とてもベトナムらしい伝え方なのだと思います。どんなに忙しい一年でも、どんな変化があっても、それでも相手に良いことが訪れてほしい——その気持ちを静かに伝えるための、小さな赤い封筒です。

結婚したら、もうお年玉はもらえない?

結婚は「渡す側」へ移る一つの節目とされますが、結婚したからといって「もう一切もらえなくなる」わけではありません。

むしろ見落とされがちなのが、「逆方向」の流れです。

  • 成人して働くようになった子どもが、親や祖父母に「今年も健康でいてね」と願ってお年玉(ムントゥオイ)を渡す
  • 新婚夫婦に、年長者が「新しい人生への祝福」としてお年玉を渡す

お年玉は「年上から年下へ」と一方向に流れるものではありません。健康や幸運を願って、子から親・祖父母へと渡されることも、ごく自然な光景です。

厳格なルールはなく、誰もそれを奇妙だとは思いません。

子どもへのお年玉、金額の目安は?

紙幣の種類や見分け方はベトナム通貨「ドン」完全ガイドを参照。新札の準備にも役立ちます。

外国人が最も悩むポイントですが、ベトナムでは金額より気持ちが重視されます。

お年玉を渡す相手は、基本的に何らかの関係がある子どもです。

  • 親戚の子ども:やや多め
  • 友人の子ども:象徴的な金額で十分
  • 同じ家や親しい家庭の子ども:気持ち程度で大丈夫

なお、道で偶然会った知らない子どもにお年玉を渡す習慣はほとんどありません。お年玉は親戚・家族・友人など、関係のある相手に渡すのが一般的です。

最近よく見られる金額は、50,000〜100,000ドン程度。
少し余裕があれば、200,000〜500,000ドンも決して大げさではありません。

この小さな金額で、子どもはおやつを買い、ちょっとした喜びを得て、そして満面の笑顔になります。それで十分なのです。

子どもはまず新年の挨拶をしてから受け取る

ベトナムでは、子どもがお年玉をもらう前に、大人へ新年の挨拶をすることが多いです。たとえば祖父母の前に立って「Chúc mừng năm mới(明けましておめでとう)」や「Chúc ông bà sức khỏe(おじいちゃんおばあちゃん、健康でいてね)」などの言葉を言ってから、お年玉を受け取る。

子どもたちが少し緊張しながらも一生懸命に挨拶をして、大人がにこにこしながら赤い封筒を手渡す――この光景は、テトの家庭で繰り返される、とても温かい場面です。外国人としてこの場に居合わせると、お年玉が単なるお金のやりとりではなく、世代を超えた敬意と祝福の交換であることが自然と伝わってきます。

大人やお年寄りにもお年玉を渡す―とても「ベトナムらしい」風景

ベトナムの特徴的な点は、大人が大人にお年玉を渡すことがあるという点です。ただし、これは「知らない人に配る」習慣ではありません。

まず分けて考えたいのが、困っている人への思いやりです。路上で働く人や行商人、一人で新年を迎える高齢者などに対しては、お年玉というより、テトの贈り物やお金を渡して支える――どちらかというと寄付・助け合いに近い行為として行われます。

一方で、いわゆる「お年玉(リーシー)」を渡すのは、日頃から自分と関わりのある人・お世話になっている人が中心です。

  • 新年に最初に乗ったタクシーの運転手に、「今年もよろしく」と幸運を願って
  • 顔なじみのお店のスタッフ
  • アパートの警備員・清掃員・お手伝いさん
  • いつも来てくれる配達員

これらはあくまで、自分と接点のある人・サービスしてくれる人への新年の挨拶です。義務ではなく、自発的な思いやりです。

逆に、まったく見ず知らずの人にお年玉を配るという一般的な習慣はありません。渡すのは、家族・親戚・友人や、日頃お世話になっている関係のある相手が基本です。

私にとって、こうした瞬間こそがベトナムのテトの最も美しい場面です。

小さな赤い封筒が、渡す人と受け取る人の心を同時に温めるのです。

日本人・外国人はどうすれば「好印象」なのか?

答えはとてもシンプルです。気負わないこと

可能であれば、新札(またはなるべくきれいなお札)を用意すると、より気持ちが伝わりやすくなります。

外国人であるあなたは以下の通りです。

  • お年玉を渡す義務はありません
  • 渡さなくても失礼にはなりません

それでも「やってみたい」と思ったなら、赤い封筒、小さな金額(20,000~50,000ドン)、そして笑顔だけで十分です。

実際には、子どもたちがもらった袋をその場で開けて「いくらだった?」と見せ合うことはありますし、大人もなんとなく家ごとの金額を気にすることはあります。それでも文化として大切にされているのは、金額そのものよりも「新年の幸運を願う気持ち」と「渡す人の心」のほうです。

「気持ち」が伝わった時点で、それはもう成功です。

お年玉と並んで、テトの食卓を彩るのが伝統料理です。何を食べるのか気になる人はこちらもどうぞ。

よくある質問(FAQ)

ベトナムのお年玉の相場はいくら?

相手との関係で大きく変わります。子ども(甥姪)には2〜10万ドン(約120〜600円)、恋人・パートナーには50万ドン(約3,000円)以上、職場の後輩には5〜10万ドンが一般的な目安です。

お年玉は新札じゃないとダメ?

日本ほど厳格ではありませんが、新札のほうが喜ばれます。テト前は銀行やATMに新札を求める人が増えるので、早めに準備しておくと安心です。

日本人がベトナムのテトでお年玉を渡すべき?

恋人の家族に招かれた場合は、子どもたちに渡すのがマナーです。金額より「気持ちを形にした」こと自体が好印象になります。赤い封筒を事前に用意しておきましょう。

知らない子どもにもお年玉を渡すの?

基本的には渡しません。ベトナムのお年玉は、親戚・家族・友人の子どもなど、関係のある相手に渡すのが一般的です。道で偶然会った知らない子どもに渡す習慣はほとんどありません。

日本の「分かりやすさ」と、ベトナムの「やさしさ」

日本のお年玉には、年齢や学年ごとの目安があり、比べる必要が生まれにくい仕組みがあります。一方、ベトナムのお年玉は、決まったルールがないからこそ、その人との関係や気持ちがそのまま形になります。

どちらが正しい、という話ではありません。

ただ、同じ「お年玉」でも、そこに映っているのは、その国の「人との距離感」なのだと思います。ベトナムのお年玉には、はっきりとした正解があるわけではありません。だからこそ、人によって形も距離感も、少しずつ違います。赤い封筒に何を入れるかよりも、「誰に、どんな気持ちで渡すのか」。そのほうが大切なのかもしれません。

もしテトの時期に、ベトナムでお年玉を渡す場面に出会ったら、少し立ち止まって、その場に流れている空気や、人の表情を見てみてください。

きっとそこに、ベトナムらしいやさしさが、静かに息づいているはずです。

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ライター

日本での生活経験あり。リンランを生活圏に、文化背景の翻訳と取材サポートを担当。

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