ベトナムに着いて最初に味わう混乱は、空港の両替カウンターで起きる。
1万円を出したら、返ってきたのは1,680,000ドン。
一瞬すごいお金持ちになった気分になる。物価の安い国に来た優越感も味わえる。…だが、円安に加え、ベトナムも近年の経済成長により以前と比べそこまで物価が安いとは言えなくなっている。
この記事では、ベトナム通貨に関して覚えておくべきことをまとめた。
🇻🇳 ベトナムドン まとめ
- 1,000VND ≒ 6円(ざっくり)
- 「K」=千(メニューの「45K」= 45,000VND = 約270円)
- 換算のコツ:ゼロ3つ取って×6(50,000₫ → 50×6 = 300円)
- よく使う紙幣: 20K / 50K / 100K / 200K / 500K
- 為替レート: 1円 = だいたい160〜180VND(最新は「JPY VND」でGoogle検索)
住んでみてわかったのは、このゼロの多さは「慣れ」の問題でしかないということ。そして慣れてしまえば、紙幣の色、数字の読み方、「K」という謎の記号、おつりの代わりに渡される飴玉——すべてがベトナムという国の面白さにつながっている。
この記事では、旅行者も在住者も使えるドンの基礎知識と、住んでいるからこそわかる「ドンとの付き合い方」をまとめた。
ベトナムの通貨はいくら? まずここだけ読めばOK
ベトナムの通貨単位はベトナムドン(VND)。日本円との換算は、レートにより変動するが目安はこうなる。
| ベトナムドン | 日本円の目安 | 感覚 |
|---|---|---|
| 1,000₫ | 約6円 | 飴玉1個 |
| 10,000₫ | 約60円 | ペットボトルの水 |
| 50,000₫ | 約300円 | フォー1杯(ローカル店) |
| 100,000₫ | 約600円 | カフェでコーヒー2杯分 |
| 200,000₫ | 約1,200円 | ちょっと良いレストラン1食 |
| 500,000₫ | 約3,000円 | 最高額紙幣。日本の1万円札的存在 |
※ 1円 = だいたい160〜180VND。最新は「JPY VND」でGoogle検索。
早わかり:
- ベトナムの通貨は紙幣9種類。硬貨はほぼ流通していない
- 日本での両替はおすすめしない(現地が圧倒的に有利)
- メニューの「K」はゼロ3つ省略(45K = 45,000₫ = 約270円)
ベトナムの通貨「ドン(VND)」とは?——「銅のお金」が名前の由来
ベトナムの通貨・公式通貨単位はベトナムドン(VND:Vietnamese Dong)。通貨記号は「₫」で、店のメニューや価格表では「50,000₫」「50K」のように書かれる。
「ドン」の語源はベトナム語で「銅(đồng)」。かつて銅銭が流通していた時代の名残で、銅貨一枚分=一ドンという意味だ。フランス植民地時代はピアストルが公式通貨だったが、ベトナム語では依然として「ドン」と呼び続けた。独立後、南北統一を経て現在のベトナムドンに至る。
通貨コードはISO 4217で「VND」。補助単位としてハオ(hào)とシュウ(xu)が制度上は存在するが、現在はどちらも使われておらず、目にする機会はない。
ベトナム通貨の種類|紙幣は9種類、硬貨は「制度上あるけど見ない」
ベトナムで実際に流通しているのは、以下の9種類の紙幣だ。
ポリマー紙幣(プラスチック素材)——10,000₫以上
- 500,000₫(約3,000円)—— 青色。最高額面。日本でいう一万円札の役割
- 200,000₫(約1,200円)—— 赤茶色
- 100,000₫(約600円)—— 緑色
- 50,000₫(約300円)—— 赤みのあるピンク
- 20,000₫(約120円)—— 青色
- 10,000₫(約60円)—— 茶色
紙(コットン)紙幣——5,000₫以下
- 5,000₫(約30円)—— 水色
- 2,000₫(約12円)—— 薄茶色
- 1,000₫(約6円)—— 茶色
ポリマー紙幣は水に濡れても破れにくく、偽造防止にも優れている。逆に5,000₫以下は紙製で、くたくたのボロ札が回ってくることも珍しくない(後述するが、基本的には受け取って大丈夫)。
硬貨について: 制度上は200₫〜5,000₫の硬貨が存在するが、現在はほぼ流通していない。重くて扱いにくく、自動販売機も普及していないため、実用性がなかったのが理由とされている。住んでいて硬貨を見かけたことは一度もない。
そして全紙幣に共通するのが、表面に描かれた人物。ホー・チ・ミン(Hồ Chí Minh)——建国の父であり、南部最大の都市の名前の由来にもなった人物が、額面に関係なくすべての紙幣からこちらを見ている。
在住者が語る「紙幣あるある」——色の罠、ボロ札、おつりの飴玉
住んでいて本当に困るのが、紙幣の色の類似だ。
- 青色系: 500,000₫(約2,980円)と 20,000₫(約119円)
- 赤色系: 200,000₫(約1,190円)と 50,000₫(約298円)
- 緑色系: 100,000₫(約595円)と 10,000₫(約60円)
同系色のペアはどれもゼロがひとつ違う。つまり金額差が約10倍。薄暗い屋台で50,000₫を出すつもりが200,000₫を渡してしまった——という話は在住者の間でも定番ネタだ。
対策はシンプル: 財布の中で大きい札と小さい札を分けて入れる。在住者の多くは札をクリップで束ねるか、ジップ付きポーチを使っている。両替直後は500,000₫札が数枚でコンパクトだが、数日過ごすとおつりで小額紙幣がどんどん溜まって財布が膨れ上がる。最高額面が約3,000円の国では、これは避けられない宿命だ。
ボロ札を渡されたら?
5,000₫以下の紙製紙幣は、かなりくたびれた状態で回ってくることがある。基本的にはそのまま受け取ってOK。 ただし大きく破れている札は、別の店で受け取りを断られることがあるので注意。もし手元に回ってきたら、コンビニやスーパーなど大きめの店で使うと通りやすい。
おつりが飴玉で返ってくる
少額のおつりが出せない場合、レジの店員がさらっと飴玉やガムを渡してくる——という話は、VIETJOベトナムニュースでも取り上げられたことがある有名な慣習だ。スーパーやコンビニで数千ドン以下のおつりの代わりに飴を渡すのは、ベトナムでは長年続いてきた光景。法律上は小額でも正規の通貨で返すべきだが、実態としてはレジ係の裁量で切り捨て・切り上げ、あるいは飴で補填されてきた。ただし近年はキャッシュレス化もあってこの慣習は減りつつあるし、そもそも端数が出る値付け自体が少なくなっている。
ベトナム通貨の計算方法|日本円への換算は2つの計算式で十分
ドンの桁の多さに圧倒されるのは最初だけ。以下の換算テクニックを覚えておけば、買い物中でも頭の中で日本円がパッと出るようになる。
レートの目安
1円 = だいたい160〜180VNDの幅で動いている。日々変動するので、旅行前にGoogleで「JPY VND」と検索して最新レートを確認するのが確実。以下の計算例では1円≒170VNDで計算している。
方法①:ゼロ3つ取って×6(メイン。これだけ覚えればOK)
一番シンプルで、旅行者にはこれが最強。
- 50,000₫ → 50 × 6 = 300円
- 200,000₫ → 200 × 6 = 1,200円
- 1,500,000₫ → 1,500 × 6 = 9,000円
本来は「×5.95」くらいが正確だが、暗算では×6で十分。多少多めに見積もることになるので、「思ったより安かった」という方向にズレる。買い物の判断としてはむしろ安全側だ。
方法②:200で割る(高額の正確計算向き)
家賃やホテル代など大きい金額を正確に知りたいとき用。
- 50,000₫ ÷ 200 = 250円
- 335,000₫ ÷ 200 = 1,675円
- 10,000,000₫ ÷ 200 = 50,000円
端数のある金額でも対応できるが、暗算は大変なのでスマホの電卓を使う場面向き。
在住者のリアルな使い分け: 普段は方法①(×6)で瞬時にざっくり把握して、家賃や高額な買い物のときだけ方法②で正確に計算する。旅行中なら方法①だけ覚えておけば困ることはない。
「K」「千」の省略表記に慣れる
カフェに入ってメニューを見ると、値段が「45K」と書いてある。これは**45,000₫(約270円)**のこと。
ベトナムではゼロが多すぎるため、日常的に下3桁を省略する文化がある。
- K(=1,000): 45K = 45,000₫
- triệu(=100万): 1.5 triệu = 1,500,000₫(約8,930円)
- tỷ(=10億): 不動産価格などで使う
カフェやレストランのメニュー、Grabの料金表示、市場の値札——あらゆる場所で「K」は登場する。最初は戸惑うが、「Kが付いたらゼロ3つ追加」と覚えれば問題ない。
ちなみにベトナムの数字表記は桁区切りと小数点が日本と逆になっている。日本では桁区切りにカンマ(,)、小数点にピリオド(.)を使うが、ベトナムはその逆で、桁区切りにピリオド、小数点にカンマを使う。つまり日本で「50,000」と書く金額が、ベトナムでは「50.000」と表記される。メニューで「50.5K」と書いてあったら「50,500₫」という意味だ。最初は混乱するが、「ベトナムではピリオドとカンマの役割が入れ替わっている」と覚えておけば大丈夫。
いくら両替すればいい? 日数別の目安
ベトナムの物価感覚を掴んでおくと、両替額の判断がしやすくなります。ベトナムの物価ガイドもあわせてどうぞ。
「ドンの換算方法はわかった。で、結局いくら両替すればいいの?」——旅行者が一番知りたいのはたぶんここだ。
以下はハノイ・ホーチミンでの中間的な過ごし方(屋台〜中級レストランで食事、カフェ1〜2回、お土産少し)を想定した目安。Grab移動やホテル代はクレジットカード払いを前提としている。
- 2泊3日: 3,000,000〜5,000,000₫(約18,000〜30,000円)
- 3泊4日: 4,000,000〜7,000,000₫(約24,000〜42,000円)
- 1日あたりの内訳目安: 食事3食 300K〜600K + カフェ 50K〜80K + Grab移動 100K〜200K + お土産・雑費 200K〜500K
高級レストランやスパを多用するなら上振れするし、ローカル食堂メインならもっと少なくて済む。クレジットカードが使える店も増えているので、全額を現金で持つ必要はない。現金は総予算の6〜7割を目安に両替し、残りはカードで対応するのがバランスが良い。
両替のタイミングと場所については、ハノイの両替おすすめガイドで詳しくまとめている。
ドンの歴史が映す、ベトナムの激動
ベトナムドンの歴史は、そのままこの国の近現代史でもある。
フランス植民地時代(1858〜1954): フランス領インドシナ・ピアストルが公式通貨。しかし人々はこれを「ドン」と呼び続けた。通貨の名前を守ること自体が、静かな抵抗だったのかもしれない。
南北分断時代(1954〜1975): 北ベトナムと南ベトナムでそれぞれ別のドンが流通。統一後、「統一ドン」が発行されて南北のドンが交換されたが、交換レートの差が南部の人々に大きな経済的打撃を与えた。
ドイモイ以降(1986〜): 経済開放政策によってインフレが進行し、ドンの額面はどんどん大きくなった。1990年代には100₫、200₫といった小額紙幣では何も買えなくなり、現在の「ゼロだらけ」の状態に至る。
ベトナム政府はかつて「デノミネーション(通貨の切り下げ)」を検討したこともあるとされるが、実施には至っていない。もしゼロが3つ減れば、コーヒー1杯が「35₫」になる。そうなったらメニューの風景もだいぶ変わるが、当面はこのゼロの多さと付き合うことになりそうだ。
ベトナム通貨のレート|ドンは「管理変動制」
ベトナムドンは完全な変動相場制ではなく、**ベトナム国家銀行(SBV)が中心レートを設定し、一定幅内での変動を許容する「管理変動制」**を採用している。基本的には米ドルに連動する形で運営されるため、円に対するレートは日米間の為替変動の影響も受ける。
2026年2月時点では1円=160〜170VND前後で推移している。2024年夏には1円=155VND前後まで円安が進んだ時期もあり、「ベトナムの物価が上がった」と感じた旅行者も多かった。ただしこれはベトナムのインフレというより、円安の影響が大きい。
最新レートは刻一刻と変わるので、旅行前や滞在中はGoogleで「JPY VND」と検索するのが一番手っ取り早い。
ベトナムドンの投資について: 「ドンは将来上がるのか?」という検索をよく見かける。ベトナムのGDP成長率は年6〜7%台と東南アジアでもトップクラスだが、ドンは管理相場のため急騰は考えにくい。為替差益よりもインフレによる実質的な通貨価値の変動のほうが大きく、投資対象としてはリスクが高い部類に入ることは認識しておくべきだろう。(投資判断は個人の責任で行ってください。)
旅行者が知っておくべき注意点
高額紙幣の崩し方——到着初日が勝負
500,000₫札はベトナムの最高額面だが、屋台やローカル食堂では嫌がられることが多い。おつりが出せないからだ。
到着初日にやるべきこと: コンビニ(Circle K、ファミリーマート等)で水やお菓子を買い、500,000₫を崩して20,000₫や50,000₫を厚めに確保する。屋台、ペットボトルの水、Grabの現金払いの端数——少額紙幣が活躍する場面は驚くほど多い。
余ったドンは日本で両替しにくい
ベトナムドンは国際的にはマイナー通貨。日本に帰国後、余ったドンを円に戻そうとすると、対応している両替所が少なく、レートもかなり悪い。「現地で使い切る」が基本戦略だ。空港の出国前エリアでお土産やコーヒーに使い切るか、次のベトナム旅行用にとっておくのが賢い。
キャッシュレスの急速な普及
ベトナムは驚くほどキャッシュレス化が進んでいる。MoMo、ZaloPay、銀行アプリのQRコード決済が普及しており、ローカルの屋台ですらQRコード対応している店がある。とはいえ旅行者がこれらを使うにはベトナムの銀行口座が必要なケースがほとんどなので、旅行者は現金+クレジットカードの併用が現実的。
ベトナム通貨の両替|ベストプラクティス
ドンの入手方法についてはハノイの両替おすすめガイドで詳しく書いているが、ここでは要点だけ。
結論:日本では両替しない。現地でする。
日本の空港で両替すると、1万円あたり2,000円近く損をすることがある。最もレートが良いのはハノイ・ホーチミンの市街地にある金行(ゴールドショップ)や街の両替所。空港では移動に必要な最低限(5,000〜10,000円)だけ両替し、市街に出てからまとめて両替するのが最適解だ。
おわりに——ゼロの多さは、この国の勢いの裏返し
ベトナムドンのゼロの多さは、この国が歩んできた経済史そのものだ。植民地支配、南北分断、統一後のインフレ——その全部がドンの額面に刻まれている。
住み始めた頃は毎日のように桁を間違えていた。100,000₫(約595円)を払うつもりで10,000₫(約60円)を出して、店のおばちゃんに苦笑されたことも一度や二度じゃない。
でも不思議なもので、3か月もすれば500,000₫札を見て自動的に「約3,000円」と変換できるようになるし、「35K」が目に入った瞬間に「210円くらいか」と思えるようになる。
ゼロの多さに慣れたとき、ベトナムの街の値札がぜんぶ読めるようになる。市場の交渉も、タクシーの料金確認も、屋台での注文も。通貨に慣れるということは、その国の生活に一歩入り込むということなのだと思う。
よくある質問(FAQ)
Q. ベトナムの通貨単位は? ベトナムの通貨単位はベトナムドン(VND)。通貨記号は「₫」。紙幣は9種類で、硬貨は制度上あるがほぼ流通していない。
Q. 10,000ドンは日本円でいくら?100,000ドンは? 10,000₫ ≒ 約60円、100,000₫ ≒ 約600円。ざっくり計算するなら「ゼロを3つ取って×6」が便利(50,000₫ → 50×6 = 300円)。レートは日々変動するので、最新は「JPY VND」でGoogle検索を。
Q. メニューに書いてある「K」って何?「50.000」の表記は? 「K」は1,000の省略。45K = 45,000₫ = 約270円。またベトナムでは桁区切りにピリオド、小数点にカンマを使う(日本と逆)。「50.000」は50,000₫のこと。
Q. 空港で両替すると損?いくらだけ替えるべき? 日本の空港での両替は1万円あたり2,000円近く損になることがある。おすすめは空港で5,000〜10,000円だけ替え、市街地の金行(ゴールドショップ)や両替所でまとめて両替する方法。詳しくはハノイの両替おすすめガイドにまとめている。
Q. 余ったドンは日本で両替できる? できるが、対応している両替所が少なくレートもかなり悪い。「現地で使い切る」が基本。空港の出国エリアでお土産やコーヒーに使い切るか、次の旅行用にとっておくのが賢い。