ベトナムに住んでいると、支払いの場面で小さな「賭け」が日常になる。
レストランで食事を終えて、財布からカードを出す。店員がちらっとカードを見て、申し訳なさそうに首を振る。「Cash only」。──この瞬間を、住み始めて最初の1ヶ月で何度経験したかわからない。
ベトナムは2026年現在、キャッシュレス化が猛スピードで進んでいる国だ。QRコード決済は爆発的に普及し、若いベトナム人はスマホひとつで生活を完結させている。でも、その波に「外国人旅行者のクレジットカード」がちゃんと乗れているかというと、話はそう単純じゃない。
この記事では、ベトナムに住んでいるからこそわかる「クレジットカードのリアルな使い勝手」を、使える場所・使えない場所・手数料の落とし穴・ブランド別の強さまで、全部まとめた。
- ベトナムでクレジットカードは使える?【結論まとめ】
- ベトナムのキャッシュレス事情──「現金の国」はもう過去の話、でも…
- クレジットカードが使える場所・使えない場所
- ブランド別の使い勝手:Visa / Mastercard(鉄板)→ JCB / Amex(限定的)
- タッチ決済(コンタクトレス)は使える?
- 手数料の話──「カードで払えてよかった」の裏側にあるコスト
- ATMでの現金引き出し──クレカキャッシングとデビットカードの違い
- 都市別のカード事情──ハノイ・ホーチミン・ダナン・フーコック
- 在住者が教える「損しない」カードの使い分け
- クレジットカードの安全対策
- ベトナム旅行におすすめのクレジットカードの選び方
- よくある質問(FAQ)
- おわりに
ベトナムでクレジットカードは使える?【結論まとめ】
✔ 旅行者向け超要約(30秒でわかる)
- VisaかMastercardを1枚は必ず持っていく(鉄板)
- 現金は滞在日数に合わせて現地で両替(3〜5日なら2万〜5万円分、1週間超なら5万〜10万円分が目安)
- JCB・Amexだけでは厳しい(Grabは全ブランド対応、それ以外はムラあり)
- DCC(日本円建て決済)は絶対にNO(3〜8%損する)
- ATMで現金を引き出すならデビットカード推奨(クレカキャッシングは利息が即発生)
先に結論だけ知りたい人のために、ざっくりまとめておく。
| 場所 | Visa/Master | JCB | Amex | VietQR(国内振込) | 現金必要? |
|---|---|---|---|---|---|
| ホテル(3つ星以上) | ◎ | △ | △ | ○ | 不要 |
| ショッピングモール | ◎ | △ | △ | ◎ | 不要 |
| コンビニ | ◎ | △ | × | ◎ | 不要 |
| Grab | ◎ | ◎ | ◎ | × | 不要 |
| チェーン系カフェ・レストラン | ◎ | △ | × | ◎ | 不要 |
| 中価格帯レストラン | ○〜× | × | × | ◎ | あると安心 |
| ローカルカフェ | × | × | × | ◎ | あると安心 |
| ローカル食堂 | × | × | × | ○ | 必須 |
| 屋台・市場 | × | × | × | △ | 必須 |
◎=ほぼ確実に使える ○=使えることが多い △=使えるがムラあり ×=ほぼ使えない
ポイントは3つ。Visa/Mastercardが鉄板なこと、Amexは高級ホテルとGrabでは使えるが一般店舗では厳しいこと、そして手数料(海外事務手数料+店舗上乗せ)で最大5%超かかる場合があること。
「カード+ポケットに入る程度の現金」が、この国のちょうどいいバランスだ。
以下、それぞれ詳しく解説していく。
ベトナムのキャッシュレス事情──「現金の国」はもう過去の話、でも…
ベトナムのキャッシュレス事情は、ここ数年で激変した。
ベトナム国家銀行(SBV)の発表によると、ハノイやホーチミン市などの都市部ではキャッシュレス決済が急速に拡大しており、2024年末時点で非現金決済の取引件数は過去最多を更新した。特にQRコード決済の伸びがすさまじく、取引件数は前年比で大幅な成長を記録している。MoMo、ZaloPay、ViettelMoneyといったアプリは、もはやベトナム人の生活インフラだ。
ただし、ここが重要なのだが、ベトナムで急速に普及しているのは「国内銀行口座を使ったQR決済(VietQR)」であって、外国人のクレジットカードが使いやすくなっているわけではない。
カフェでコーヒーを頼んで「QRで払える?」と聞けば、ローカルな個人店でも「できるよ」と返ってくることが増えた。でもそれは、ベトナム国内の銀行口座同士の振込(VietQR)のこと。外国人旅行者のクレジットカードとは別の話だ。
つまり、ベトナム人がスマホで「ピッ」と払っている横で、旅行者は依然として「現金かクレジットカード」の組み合わせに頼ることになる。
ベトナムのクレジットカード普及率は?
ベトナムのキャッシュレス化は進んでいるが、「クレジットカードの普及率」に限ると、日本とはかなり事情が違う。
銀行カード全体の発行枚数は増え続けているものの、その多くはデビットカード。ベトナム人にとってのカード決済は「口座から即時引き落とし」のデビットか、VietQRによる銀行振込が主流で、後払い型のクレジットカードを日常的に使う層はまだ多くない。
都市部と地方の差も大きい。ハノイやホーチミンではカード端末のある店が増えているが、地方に行くほど現金オンリーの世界に近づく。
旅行者にとって大事なのは、「ベトナム人のカード普及率が低い=旅行者もカードが使えない」ではないということ。観光客が行くホテル、レストラン、モールはカード対応が進んでいる。ベトナム全体の普及率の低さに引っ張られて「現金だけ持っていけばいい」と判断すると、逆に不便になる。
つまり、こういうことだ。
ベトナムのキャッシュレス化は進んでいる。でもそれは「ベトナム人のためのキャッシュレス(VietQR・国内銀行振込)」であって、旅行者のクレジットカードが万能になったわけではない。
この前提を押さえたうえで、具体的にどこで使えて、どこで使えないのかを見ていこう。
クレジットカードが使える場所・使えない場所
使える場所
住んでいる実感として、以下の場所ではほぼ問題なくカードが通る。
ホテル(3つ星以上): チェーン系はもちろん、ブティックホテルでもVisa/Mastercardはほぼ確実に対応。チェックイン時のデポジット(保証金)もカードで処理できるので、大量の現金を持ち歩かなくて済む。ただし、格安ゲストハウスや小規模な宿はカード非対応のこともある。
ショッピングモール内の店舗: ビンコムセンター、イオンモール、ロッテマートなどのテナントは基本的にカード対応。
外資系・チェーンのカフェ・レストラン: スターバックス、ハイランズコーヒー、観光客が多いレストランはまず大丈夫。
コンビニ: ファミリーマート、セブン-イレブンなど都市部のコンビニはカード決済に対応している。少額でも問題ない。
スパ・マッサージ: 観光客向けの店舗はほとんど対応。ただし個人経営の小さなマッサージ店は現金のみのことが多い。
Grab: アプリにカードを登録すれば、乗車のたびに自動決済。Visa、Mastercard、JCB、そしてアメックスにも対応している。ベトナムでの移動はGrabが基本なので、アメックスユーザーでも移動の支払いは心配いらない(ハノイでのGrabの使い方)。
ベトナム到着後に登録しようとすると、カード会社の不正利用検知に引っかかったり、SMS認証(OTP)が海外で受け取れず登録できないトラブルがよく起きる。出発前にアプリをダウンロードし、カード登録まで完了させておくのが鉄則だ。
使えない場所
ローカル食堂・屋台: ブンチャーが40,000VND(約240円)、バインミーが25,000VND(約150円)。フォーやブンを出す食堂、路上の屋台はほぼ100%現金。レジすらない店がほとんどだ。
ローカルカフェ: チェーンではない個人経営のカフェ。おしゃれな内装でも、支払いは「現金 or VietQR(国内銀行振込)」のみということが珍しくない。POS端末(カード読み取り機)自体が置かれていない店が多い。
市場(チョー): ベンタイン市場やドンスアン市場での買い物は基本現金。値段交渉も現金前提で進む(ベトナムの買い物・値切り攻略ガイド)。
路上の個人商店: フルーツ屋、バイク修理、理髪店──ベトナムの路上経済はまだ完全に現金の世界。
一部の観光施設: 博物館や小規模な寺院、入場料が数万ドン程度の施設は現金のみのことが多い。
タクシー(流し): Grabではなく、道で拾うタイプのタクシーはカード決済に対応していないことがほとんど。
大衆居酒屋・ビアホイ: ベトナム式のビアホイ(路上ビール)や大衆居酒屋はPOS端末がないことが多い。支払いは現金か国内銀行振込のみ。
使えるけど「条件付き」の場所
中価格帯のレストラン: 観光エリアの中価格帯レストランはカード対応の場合もあるが、「国内銀行振込のみ対応で国際カードは不可」というケースも意外と多い。VietQR(ベトナム国内の銀行口座同士のQR振込)が普及したことで、POS端末を導入する必要がなくなった店も増えている。
日本人街(リンラン通り周辺): ハノイのリンラン通りは日本食レストランや居酒屋が集まる「日本人街」。カード自体はVisa/Mastercardなら使える店が多いが、アメックスは対応していない店もある。また「日本人が多いエリアだからJCBも大丈夫だろう」と思いきや、JCBが通らないケースもあるので過信は禁物だ。
手数料上乗せの店: 個人経営の雑貨店やレストランの中には、カード決済自体は可能だが「手数料3%を上乗せします」と言われるケースがある。これは加盟店手数料を客に転嫁しているもので、ベトナムでは店側が銀行の決済手数料を負担したくないために起きる、わりとよくある光景だ。
住んでいると「あ、ここは上乗せパターンだな」とわかるようになるが、旅行者は事前に聞いておいたほうがいい。
VietQR(国内銀行振込)って何?──旅行者が知っておくべきベトナムの「もう一つのキャッシュレス」
ベトナムのキャッシュレス事情を理解するうえで、避けて通れないのがVietQRの存在だ。
VietQRとは、ベトナム国内の銀行口座を使ったQRコード決済の仕組み。NAPAS(ベトナム国家決済公社)が運営する銀行間送金の標準規格で、店先に置かれたQRコードをスマホで読み取り、自分の銀行アプリから直接振り込む。手数料は基本無料で、即時反映。ベトナム人にとっては、もはや現金よりも手軽な支払い方法になっている。
問題は、この仕組みがベトナム国内の銀行口座を持っていないと使えないこと。短期の旅行者には基本的に縁のない決済手段だ。
つまり、ベトナムの店で「キャッシュレスOK」と書いてあっても、それが「国際クレジットカードOK」を意味するとは限らない。「VietQR(国内振込)ならOK、国際カードはNG」という店が、特にローカルエリアには非常に多い。
これが、ベトナムのキャッシュレス化が進んでいるのに旅行者のカードが使いにくい最大の理由だ。
ブランド別の使い勝手:Visa / Mastercard(鉄板)→ JCB / Amex(限定的)
Visa / Mastercard
ベトナムでのカード決済の「鉄板」。加盟店数が圧倒的に多く、ホテル・レストラン・ショッピングモール・コンビニ・Grabまで、カードが使える場所ならほぼ確実に対応している。
迷ったらVisa1枚、もしくはVisaとMastercardを1枚ずつというのが、もっとも安心な組み合わせだ。
JCB
日本人旅行者にとって気になるJCBだが、正直なところ「メインで使うにはつらい」というのが住んでいての実感。加盟店はVisa/Mastercardと比べるとかなり少なく、JCB1枚だけでベトナムを回るのは現実的ではない。
ただし、JCBには独自のメリットがある。ホーチミンには「JCBプラザ」があり、レストランやツアーの予約、カード紛失時の緊急サポートを日本語で受けられる。初めてのベトナム旅行で「何かあったときに日本語で相談できる場所がある」というのは、思った以上に安心感がある。
JCBは2枚目・3枚目のサブカードとして持っておくのがちょうどいい。
American Express(Amex)
アメックスは「ベトナムでもそこそこ使える」と思われがちだが、実際の加盟店はかなり限定的だ。
使えるのは主に国際チェーンの高級ホテルやその中のレストラン、そしてGrab程度。アメックスは加盟店側の決済手数料がVisa/Mastercardより高いため、ベトナムでは導入を見送っている店が多い。対象顧客層も限られることから、そもそも加盟店を広げるインセンティブが薄いのだ。ただし、GrabがAmex対応なのは救いで、少なくとも移動の支払いで困ることはない。
アメックス1枚だけでベトナムに来るのはおすすめしない。 VisaかMastercardを必ずメインで持ち、アメックスはあくまでサブとして使うのが現実的だ。
Diners Club
Diners Clubはアメックスよりさらに使える場所が限られるので、ベトナムでは実質的に出番がない。
タッチ決済(コンタクトレス)は使える?
都市部ではタッチ決済はかなり普及してきている。Visaの発表によると、2024年11月末時点でベトナムの対面Visa取引の75%以上がコンタクトレスだった。ショッピングモール、コンビニ、チェーン系カフェなどでは、カードをかざすだけでスムーズに支払えることが増えた。
ただし、ローカルの個人店では端末が古かったり、そもそもカード自体に対応していなかったりで、ムラはある。「都市部の観光客向けの店ならタッチ決済でいける。でもローカルに踏み込むなら現金」──このくらいの感覚でいるとちょうどいい。
なお、2026年現在、ハノイの一部路線バスやメトロ(都市鉄道)では、Visaなどのタッチ決済で乗車できる改札の導入が進んでいる。交通系ICカードを持っていない旅行者でも、手持ちのクレカで乗れる場面が増えてきた。
手数料の話──「カードで払えてよかった」の裏側にあるコスト
ベトナムでクレジットカードを使うとき、意外と見落とされるのが手数料だ。
海外事務手数料
日本のクレジットカードをベトナムで使うと、カード会社から2.2%〜3.85%の海外事務手数料がかかる。これはカードの利用明細に「為替手数料」として表示されるか、レートに上乗せされる形で反映される。
たとえば、50万VND(約3,000円)の食事をカードで払ったとすると、手数料だけで65〜115円ほど上乗せされる計算だ。1回ならたいした金額ではないが、旅行中にカード決済を繰り返すと、じわじわ効いてくる。
店舗側の上乗せ手数料
前述のとおり、一部の店舗ではカード決済に対して独自の手数料(多くは3%程度)を上乗せしてくる。これはベトナム特有の事情で、店側が銀行に支払うカード決済手数料を自分で負担したくないから発生する。VietQR(国内銀行振込)なら手数料ゼロなので、「VietQRなら手数料なし、クレジットカードなら3%上乗せ」というダブルスタンダードが生まれている。
カード会社の手数料と合わせると、現金との差が5%以上になることもある。
10万円分の買い物をカードで払ったら、5,000円以上が手数料──こう考えると、「大きな買い物こそ支払い方法を考えたほうがいい」ということがわかる。
為替レートの罠:DCC(自国通貨建て決済)に注意
ベトナムのカード端末で支払うとき、たまに「日本円で支払いますか?」と画面に表示されることがある。これがDCC(Dynamic Currency Conversion)と呼ばれる仕組みで、選んではいけない。
DCCで日本円建てを選ぶと、店舗側が独自に設定した不利なレートが適用され、通常のカード会社レートより3〜8%も余計にかかることがある。必ず「ベトナムドン(VND)建て」を選ぼう。
ATMでの現金引き出し──クレカキャッシングとデビットカードの違い
「現金も必要だけど、大量に両替するのも不安」──そんなときに便利なのが、ATMでの現金引き出しだ。
ベトナムの都市部にはATMが至るところにあり、VisaやMastercardなら国際ATMで現地通貨を引き出せる。ただし、クレジットカードとデビットカードでは仕組みが大きく異なるので、ここは明確に区別しておきたい。
クレジットカードのキャッシング
クレジットカードでATMから現金を引き出す場合、これは「キャッシング(借入)」扱いになる。利用日から日割りで利息が発生する(年率15〜18%程度)。つまり、引き出した瞬間から利息のカウントが始まる。
繰上返済をすれば利息は圧縮できるが、帰国後にカード会社に電話して手続きする必要があるなど、手間がかかる。「ちょっとだけ足りないから引き出す」という使い方ならいいが、まとまった金額を引き出す手段としてはあまり効率的ではない。
国際デビットカードでの引き出し
一方、ソニー銀行やWise(旧TransferWise)などの国際デビットカードなら、自分の口座から直接引き落としになるため利息はかからない。為替レートもカード会社のキャッシングレートより有利なことが多い。
ベトナムでATMから現金を引き出すなら、クレジットカードのキャッシングよりも国際デビットカードの方がおすすめだ。
ATM利用時の共通ポイント
- 引き出し上限: ベトナムの銀行ATMでは、1回あたり200万〜300万VND(約12,000〜18,000円)が上限のことが多い。国際銀行系のATMなら500万〜1,000万VND程度まで対応している場合もある
- ATM手数料: ベトナム側の銀行が1回33,000〜55,000VND(約200〜330円)程度を徴収する
- 両替との比較: 空港の両替所の手数料(3〜10%程度)に比べれば、ATM引き出しのほうが有利なことが多い。ただし、ハノイやホーチミンの市街地にあるジュエリーショップ系の両替所は手数料が非常に低い(0.6%程度)ので、そちらと比べると割高になる場合もある(ハノイの両替ガイド)
- 使い方のコツ: 必要なぶんだけ、こまめに引き出すのがベスト。ベトナムドンは日本では両替レートが極端に悪いので、余らせると損をする
都市別のカード事情──ハノイ・ホーチミン・ダナン・フーコック
ハノイ
旧市街やホアンキエム湖周辺の観光エリアではカードが比較的使いやすい。ただし、旧市街を一歩出るとローカル色が強まり、現金 or VietQRのみの店が増える。リンラン通りの日本人街も、前述のとおりJCBやアメックスは過信禁物。
ホーチミン
ベトナム最大の商業都市だけあって、カード対応はハノイよりやや進んでいる印象。1区(ドンコイ通り周辺)やビンタイン区のカフェ街は比較的カードが通る。ただし、やはりローカルの食堂や市場は現金の世界だ。
ダナン
意外にもカード利用可能な店舗がハノイより多い印象がある。リゾート寄りの街なので、観光客向けのインフラが整っている。ミーケビーチ沿いのレストランやホテルはほぼカード対応。
フーコック島
リゾートホテルではカード利用可能。ただし、ナイトマーケット(ディンカウ・ナイトマーケット)は基本的に現金のみ。島の中のローカル食堂も現金前提で考えておいたほうがいい。
在住者が教える「損しない」カードの使い分け
ベトナムでの支払い手段をどう組み合わせるかは、滞在スタイルによって変わる。住んでいる身としてのベストプラクティスをまとめておく。
旅行者向け:カード+少額の現金
ホテル、レストラン、ショッピングモール、Grab──旅行者が行くメインの場所はカード対応していることが多い。メインの支払いはVisa/Mastercardで済ませつつ、ローカル食堂・屋台・市場用に現金を用意しておくのが、もっともバランスがいい。
目安としては、3〜5日の短期旅行なら2万〜5万円分、1週間以上なら5万〜10万円分を現地で両替するイメージだ(屋台・市場・入場料など現金が必要な場面の頻度による)。
ひとつ注意しておきたいのが、ベトナムのお札(ポリマー紙幣)は、少しでも破れや欠けがあると次の店で受け取りを拒否されることがあるという点。お釣りをもらったときにサッと状態を確認するクセをつけておこう。破損した紙幣を掴まされると、自分が使うときに困ることになる。
為替レートは2026年2月時点で1円≒168VND前後(渡航時に最新レートを確認しよう)。100万VND(約6,000円)の束が財布のメイン通貨になる生活は、最初は面食らうが3日もすれば慣れる(ベトナムの通貨ガイド)。
出張・短期滞在者向け:カード中心+デビットカードで現金補完
ビジネスホテル、タクシー(Grab)、外食がメインなら、カード中心で問題ない。足りない現金は国際デビットカードでATMから都度補充すれば、クレジットカードのキャッシング利息を避けつつ、大金を持ち歩くリスクも減らせる。
長期滞在・駐在者向け:現地銀行口座+VietQRが最強
長期滞在で現地の銀行口座を開設できるなら、VietQR(国内銀行振込)を使えるようにするのが圧倒的にラク。ローカル食堂からコンビニまで、ほぼすべての支払いがスマホで完結する。日本のクレジットカードは、海外旅行保険の付帯要件を満たすためにたまに使う程度になる。
クレジットカードの安全対策
ベトナムの治安は東南アジアの中では比較的良いが、スリや盗難のリスクはゼロではない(ハノイの治安ガイド)。カードを持ち歩くうえでの基本的な注意点を押さえておこう。
カードは2枚以上、分散して持つ。 1枚を財布に、もう1枚をホテルのセーフティボックスに。万が一盗まれても、予備があれば旅を続行できる。
暗証番号の入力時は手で隠す。 ベトナムのATMや店舗の端末で暗証番号を入力する際は、必ず手で覆って周囲から見えないようにする。
利用明細はこまめにチェック。 帰国後に身に覚えのない請求がないか確認する。ベトナムドンはゼロが多い通貨単位なので、ゼロがひとつ多い(=10倍の金額)請求ミスが起こりやすい。レシートはその場で必ず確認しよう。
不正利用時の連絡先を控えておく。 カード会社の海外デスクの電話番号をスマホに保存しておくと、いざというとき慌てない。
ベトナム旅行におすすめのクレジットカードの選び方
ベトナム旅行のためにカードを選ぶなら、以下の4つのポイントを押さえておけば大きく外さない。
① ブランドはVisa or Mastercard。 これは大前提。ベトナムで最も加盟店が多い2ブランドなので、どちらかは必ず1枚持っていこう。
② 海外事務手数料が低いカードを選ぶ。 カード会社によって手数料率は2.2%〜3.85%と幅がある。ベトナムでカード決済を多用するなら、この差はじわじわ効いてくる。
③ 海外旅行保険の付帯を確認。 ベトナムで万が一ケガや病気をしたとき、治療費は高額になりやすい。年会費無料でも海外旅行保険が自動付帯するカードはあるので、出発前に確認しておこう。
④ タッチ決済対応だとなお便利。 都市部ではコンタクトレス決済の普及が進んでいるので、タッチ決済対応カードならスムーズに支払える場面が増える。
この4つを満たしていれば、あとは自分のライフスタイル(ポイント重視・マイル重視・保険重視)で選べばいい。
よくある質問(FAQ)
Q. ベトナムでクレジットカードは使えますか? ホテル、ショッピングモール、チェーン系のカフェやレストラン、コンビニ、Grabなど旅行者がよく行く場所ではVisa/Mastercardがほぼ使える。ただし屋台、市場、ローカル食堂は現金のみが多い。
Q. ベトナムでJCBは使えますか? 使える店はあるが、Visa/Mastercardに比べると加盟店はかなり少ない。JCB1枚だけでベトナムを回るのは厳しいので、Visa/Mastercardと合わせて持っていくのがおすすめ。ホーチミンのJCBプラザで日本語サポートを受けられるのは独自の強み。
Q. ベトナムでアメックスは使えますか? 使える場所は限定的。国際チェーンの高級ホテルやその中のレストランが中心で、一般的な店舗では弾かれることが多い。Visa/Mastercardを必ずメインで持っていこう。
Q. 現金はいくら持っていけばいいですか? 滞在日数や旅のスタイルによるが、3〜5日なら2万〜5万円分、1週間以上なら5万〜10万円分が目安。カードが使える場所ではカードを使い、現金はローカル食堂や市場用に回すのがベストバランス(ベトナムの物価ガイド)。
Q. ベトナムでは現金は必要ですか? はい、必要だ。屋台、ローカル食堂、市場では現金しか使えない。また「VietQR(国内銀行振込)のみ対応」の店もあり、国際クレジットカードが使えない場所は思ったより多い。カードと現金の両方を必ず持っていこう。
Q. ATMでの現金引き出しは安全ですか? 都市部のATMなら基本的に問題ない。ただし暗証番号入力時に手で隠す、人通りのある場所のATMを選ぶ、利用後はカードをすぐしまうなど、基本的な注意は必要。なお、クレジットカードでの引き出しはキャッシング扱いで利息が発生するため、国際デビットカードの方がおすすめだ。
Q. 海外事務手数料はどのくらいかかりますか? カード会社によるが、一般的に2.2%〜3.85%。さらに一部の店舗では独自に3%程度の手数料を上乗せしてくることもあるので、合計で5%超になる場合もある。
Q. 渡航前に両替しておくべきですか? 日本国内でのベトナムドン両替はレートが非常に悪いため、おすすめしない。現地到着後に空港の両替所、市街地のジュエリーショップ系両替所、またはATMで引き出す方が有利だ(ハノイの両替ガイド)。
おわりに
ベトナムでクレジットカードが「使える」か「使えないか」と聞かれたら、答えは「場所による」としか言いようがない。でも、それはネガティブな意味ではなくて、「使い分けを知っていれば、かなり快適に過ごせる」ということでもある。
住んでいて思うのは、ベトナムの支払い事情は毎年確実に変わっているということ。2年前に現金しか受け付けなかったカフェが、今はVietQRのステッカーを貼っている。空港のコンビニでタッチ決済ができるようになっている。
「現金の国」というイメージは、もう半分くらい過去のものだ。でも、残りの半分──路上の屋台で食べるフォーの代金、市場で値切ったバッグの支払い、バイクタクシーに渡す小銭──は、まだしばらく現金の領域であり続けるだろう。
カード1枚と、ポケットに入る程度の現金。それがこの国の、ちょうどいい「お金の持ち方」だと思っている。