ベトナムのチェー(Chè)とは?種類・地域の違い・食べ方をベトナム人が解説

2026.03.08

ベトナム人同士で「甘いものが食べたい」と言うと、多くの人が「チェー食べに行こう」と返す。

ベトナムのチェー(Chè)は、豆やフルーツ、ココナッツミルクなどを使った伝統的な甘味で、冷たいものも温かいものもある。日本語に訳そうとすると途端に困る食べ物だ。「ぜんざい」に近いけれど冷たいものもあるし、「かき氷」も一部は合っているが温かいチェーもある。

ベトナムのチェーとは?──日本人にどう説明するか

チェーはケーキやアイスクリームのように一つの決まったデザートの名前ではなく、さまざまな種類の甘いデザートをまとめて呼ぶ言葉だ。わかりやすく言うなら、こうなる。

チェーは、ベトナムの伝統的な甘いデザートで、スープのような形の甘味。小さな器に入れて食べることが多く、豆やフルーツ、ゼリー、タピオカ、ココナッツミルクなど、さまざまな材料が使われる。種類によって、温かいものも冷たいものもある。

色とりどりの具材がトッピングされたベトナムの伝統的なスイーツ「チェー(Chè)」。カラフルなゼリー、プリン、フルーツ、ココナッツミルクを使った、見た目も華やかなデザートの数々。

日本の甘味で近いものを挙げるなら、ぜんざいとあんみつだ。豆を煮た甘い料理という点でぜんざいに、一つの器にゼリー・豆・フルーツなどが入る点であんみつに似ている。

ただ、ベトナムのチェーには独自の特徴がある。まず材料のバリエーションがとにかく豊富で、豆のほかにバナナ、とうもろこし、さつまいも、タピオカ、各種ゼリーが使われる。なかでも最も特徴的なのがココナッツミルクで、これが独特の甘い香りとコクを生む。食べ方も自由で、暑い日は氷を入れて冷たく、涼しい季節は温かくして食べる。そしてチェーは食後のデザートに限らず、午後のおやつとして友達と食べに行ったり、学校や仕事帰りに立ち寄ったりする、日常に溶け込んだ甘味だ。

ベトナムのチェーの種類──伝統チェーから現代チェーまで

チェーは材料や作り方によって数十種類、場合によっては数百種類が存在する。大きく分けると、昔から家庭で作られてきた伝統的なチェーと、専門店やデザートショップで生まれた現代的なチェーの2つがある。

伝統的なチェー──素朴だけど奥が深い

黒豆、小豆、緑豆、とうもろこし、バナナ、さつまいも、もち米など身近な材料を砂糖水で煮て、ココナッツミルクやタピオカ、ピーナッツを加えてコクと香りを出す。地域や家庭ごとに作り方が微妙に違い、それぞれに個性がある。

緑豆チェー(Chè đậu xanh)

ベトナムの伝統的なデザート「チェー(Chè)」。ココナッツミルクをかけた、濃厚で優しい甘さの緑豆のお汁粉。

もっとも一般的なチェーの一つ。皮をむいた緑豆を砂糖と水で煮て作る。やさしい甘さとやわらかな香りが特徴で、温かくても冷たくても食べられる。緑豆は植物性タンパク質やビタミンが豊富で、ベトナムでは体を冷やす効果があるとも言われる。

黒豆チェー(Chè đậu đen)

黒豆を砂糖水で柔らかく煮て、ココナッツやタピオカを加える。ほくほくとした豆の食感とさっぱりした甘さが特徴で、暑い日には氷を入れて食べる夏の定番。学校帰りに市場の屋台へ買いに行くのは、ベトナムの学生ならほぼ全員が持っている記憶だ。

チェー・チョイ・ヌオック(Chè trôi nước)──温かいチェーの代表格

「温かいチェーもあるの?」という疑問にもっともわかりやすく答えてくれるチェーがこれ。もち米粉の生地で作った団子の中に緑豆や黒ごまのあんを入れ、しょうが入りの甘いシロップで煮る。

緑豆入りのベトナムデザート「チェー・チョイヌック」(生姜シロップとココナッツ添え)

外はもちもち、中はやさしい甘さ。しょうがの温かいシロップと合わさって、涼しい日や冬に食べると体の芯から温まる。日本の「もち」に近い食感が楽しめる。

ミックスチェー(Chè thập cẩm)

ベトナムのミックスデザート「チェー・タップカム」(豆・ゼリー・ココナッツミルク・フルーツ入り)

小豆、緑豆、黒豆、ゼリー、タピオカ、削ったココナッツなど、いろいろな材料を一つのカップに入れ、シロップとココナッツミルクをかける。「thập cẩm(ミックス)」の名の通り、一杯でさまざまな味と食感を楽しめる。氷をたっぷり入れたミックスチェーは、ベトナムの学校帰りの定番おやつだ。

このほかにも、バナナチェー(chè chuối)、キャッサバチェー(chè sắn)、グレープフルーツチェー(chè bưởi)、とうもろこしチェー(chè ngô)、蓮の実チェー(chè sen)など、伝統的なチェーだけでもまだまだ種類は多い。

現代的なチェー──ベトナム版パフェの世界

竹製の盆に盛られた色鮮やかなベトナムデザート「チェー(Chè)」。タピオカ、ゼリー、カスタードプリン(カラメル)、果物など、様々なトッピングが楽しめる盛り合わせ。

新鮮なフルーツ、ゼリー、ミルク、アイスクリームを組み合わせた、カラフルで華やかなデザート。伝統的なチェーが道ばたの屋台で売られるのに対し、現代のチェーはデザートカフェやおしゃれな専門店で提供される。写真映えも抜群で、多くの人にとってベトナム版のパフェのような存在だ。

代表的なものに、牛乳と生クリームで作る白いゼリー状のチェー・クックバック(Chè khúc bạch)、フレッシュフルーツにココナッツミルクやゼリーを合わせたチェー・タイ(Chè Thái)フルーツチェー(Chè trái cây)、アイスクリームをのせたチェー・ケム(Chè kem)、若いココナッツを使ったチェー・ズア・ザム(Chè dừa dầm)などがある。
Chè khúc bạch

チェーから広がった「甘味の世界」

ベトナムでは、チェーから派生した甘い食べ物も多い。やわらかい豆腐のようなタオフー(tào phớ)、おこわとチェーを一緒に食べるソイチェー(xôi chè)、もち米にアイスをのせたケムソイ(kem xôi)、ヨーグルトに果物やゼリーをのせたフルーツヨーグルト(sữa chua hoa quả)。厳密にはチェーと呼ばれないが、チェー屋のメニューに並ぶことが多い。

これらに共通するのは、「豆・もち米・フルーツ・ゼリー・ココナッツミルクを自由に組み合わせる」という発想。チェーは単独の料理ではなく、ベトナム独特の「甘味の組み立て方」そのものだと言える。

好みで選ぶなら

初めて食べるなら、好みに合わせて選ぶのがおすすめだ。さっぱり・やさしい甘さが好きなら蓮の実チェー・緑豆チェー・黒豆チェー。温かくてコクのあるものが好きならチェー・チョイ・ヌオックやキャッサバチェー。冷たくてカラフルなものが好きならチェー・クックバック・フルーツチェー・ミックスチェー。何種類か食べ比べると、ベトナムの食文化の奥深さが見えてくる。

チェーは地域で違う?──北部・中部・南部の個性

ベトナムは縦に細長い国で、北部・中部・南部で食文化が大きく異なる。チェーもその例外ではなく、同じ「チェー」でも地域によって甘さ・トッピング・食べ方がずいぶん違う。

北部(ハノイ中心)のチェーは、甘さ控えめで素朴。緑豆チェーや黒豆チェー、チェー・チョイ・ヌオックなど伝統的なチェーが今も愛され、ココナッツミルクも比較的薄めで素材そのものの味を大事にする。

中部(フエ・ダナンなど)は、甘さがはっきり強い。少量のトッピングで食感のコントラストをつけたり、塩をほんの少し加えて甘さを引き立てたりする。ダナン発祥の「チェー・サウ(chè sầu)」はドリアンの濃厚な甘さが印象的だ。同じ中部でもフエは「チェーの都」と呼ばれ、もちもちのタピオカ団子に焼き豚を包んだ「チェー・ボッロック(chè bột lọc heo quay)」など、塩気と甘さが同居する独特の名物がある。

南部(ホーチミンなど)のチェーは、見た目もカラフルでアレンジが自由。三色チェー(chè ba màu)やチェー・クックバックなど、ビジュアル重視の現代チェーは南部から広まったものが多い。氷をたっぷり入れて、暑い気候に合う冷たいデザートとしての性格が強い。

同じチェーでも、地域が変わると甘さも香りも別物になる。主要4都市で比べると違いがわかりやすい。

項目 ハノイ(北部) フエ(中部) ダナン(中部) ホーチミン(南部)
甘さ あっさり上品 濃厚だが繊細 ほどよくさっぱり 甘く濃厚
香り・特徴 文旦の花・ジャスミン 宮廷由来で種類が豊富 ドリアン・ジャックフルーツ ココナッツミルクのコク
代表的なチェー 蓮の実とリュウガン、コム(若米)のチェー 焼き豚入りタピオカ団子チェー ドリアンチェー 三色チェー、バナナチェー、サムボールオン
氷の使い方 少なめ/温かいものも 少量のかき氷 たっぷりの細かい氷 大量のクラッシュアイス

地域ごとの店やおすすめは、それぞれの街の記事で詳しく紹介している。

チェーの材料──ココナッツミルクは「チェーの魂」

チェーに使われる材料は幅広いが、一つだけ特別な存在がある。ココナッツミルクだ。

ベトナムでは「nước cốt dừa là linh hồn của chè(ココナッツミルクはチェーの魂)」という言い方がある。

ベトナムデザート用のココナッツミルク

新鮮なココナッツの果肉をすりつぶして絞り、軽く加熱すると独特の香りとコクが生まれる。ほんの少し加えるだけで味わいがぐっと豊かになる。伝統的なチェーではやや濃くとろみのある状態で、現代的なチェーでは少し薄めて軽い味わいにし、フルーツやトッピングの味を引き立てるように使われる。

そのほかの主な材料をまとめると:

  • 豆類: 緑豆、黒豆、小豆、白いんげん豆
  • 芋・穀物: キャッサバ、さつまいも、もち米、とうもろこし
  • フルーツ: バナナ、マンゴー、ジャックフルーツ、ドラゴンフルーツ、ライチ、ロンガン
  • 食感を加えるもの: タピオカ、各種ゼリー(仙草ゼリー、寒天など)、もち米粉の団子
  • 風味づけ: 砂糖、生姜、パンダンリーフ、バナナエッセンス
  • トッピング: 炒ったピーナッツ、ごま、削ったココナッツ、アイスクリーム

チェーはいつ食べる?──「いつでも」が正解

チェーは一日のほとんどどの時間でも食べられる。食後のデザートに限らず、軽食やおやつとして考えられているからだ。

もっとも一般的なのは午後で、学校や仕事のあとに小さなチェー屋へ立ち寄り、友人と話しながら休憩する。夜は、夕食後に街を散歩しながら道ばたのチェー屋で軽い甘さのチェーを楽しむのがハノイのよくある光景だ。季節でも変わり、夏は黒豆チェーやフルーツチェー、ミックスチェーなど冷たいものが、涼しい季節にはチェー・チョイ・ヌオックやキャッサバチェーなど温かいものが好まれる。

我が家では妹がチェー好きで、夕方になると近所の屋台まで一緒に買いに行った。小さなプラスチックの椅子に座って食べたあの時間も、チェーの記憶の一部になっている。こういう何気ない午後の風景は、多くのベトナム人が持っているものだと思う。

一杯のチェーが、何でもない一日を少しだけ良い一日に変えてくれる。チェーが長く愛されている理由は、味だけでなく、そうした日常との結びつきにあるのかもしれない。

FAQ

Q. ベトナムでチェーはいくらくらい?

屋台なら1杯15,000〜30,000ドン(約90〜180円)前後、カフェや専門店なら30,000〜70,000ドン(約180〜420円)前後が目安。老舗の有名店ではもう少し高くなることもあるが、全体としては手頃な値段で楽しめる。

Q. チェーのベトナム語での発音は?

「Chè」は、日本語のカタカナで書くと「チェー」が近い。声調は下がるトーンで、「チェ↘」のように発音する。「è」の上のアクセント記号(グレーブアクセント)が、その下がるトーンを表している。

Q. チェーのカロリーはどのくらい?

種類や量によって大きく異なるが、一般的なチェー一杯でおおよそ150〜350kcal程度。氷入りのさっぱりしたチェーは比較的低カロリー、ココナッツミルクたっぷりの温かいチェーはやや高めになる。

Q. チェーでお腹を壊すことはある?

屋台のチェーに使われる氷や水が原因でお腹を壊す可能性はゼロではない。心配な人は、チェー専門店やカフェのような衛生管理がしっかりした場所で食べるのがおすすめ。

Q. チェーは英語でなんと言う?

一般的には「Vietnamese sweet soup」や「Vietnamese dessert soup」と訳されることが多い。ただし冷たいチェーや固形のチェーもあるので、「sweet soup」だけでは全体像は伝わりにくい。

Q. ハノイでチェーを食べるなら、どの店?

旧市街の老舗から地元の路地裏の店まで、ハノイはチェーの名店が集まる街だ。店選びは専用記事で地区別に詳しく紹介している。

Q. ダナンのチェーは?

中部のダナンは甘さがはっきり強く、ドリアンを使ったチェー・サウが名物。ダナンで食べるチェーやおすすめ店は、ダナングルメの記事で紹介している。

Q. ホーチミンのチェーは?

南部のホーチミンは、カラフルで具沢山、ココナッツミルク多めの冷たいチェーが主流。ホーチミンで食べるチェーやおすすめ店は、ホーチミングルメの記事で紹介している。

Q. 地域によってチェーの味は違う?

はい、大きく違う。北部は甘さ控えめで素朴、中部は甘さがはっきり強い、南部はカラフルでアレンジが自由。同じ「チェー」でも、土地が変わればまったく別の食体験になる。

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ライター

日本での生活経験あり。リンランを生活圏に、文化背景の翻訳と取材サポートを担当。

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