ハノイに来て最初の週、昼に50,000ドン(約300円)のフォーを食べて「安い国だなあ」と思った。その夜、日本食レストランで350,000ドン(約2,100円)のとんかつ定食を頼んで「あれ?」となった。
翌日、ローカル食堂で55,000ドン(約330円)の定食を食べて「やっぱり安い」と安心した矢先、スーパーで買った輸入チーズが180,000ドン(約1,080円)で、日本より高かった。
ベトナムの物価は、「安い」のひと言では片づかない。同じ街の中に、日本の5分の1の世界と、日本と変わらない世界が隣り合っている。この記事では、その「振れ幅」を数字と体感の両面から整理します。
この記事の為替レート: 1円 ≒ 168ドン(2026年2月時点)
ドン→円のざっくり計算法: 金額の末尾3ケタを取って「×6」。例:50,000ドン → 50×6=約300円
※レートは日々変動します。現地ではGrabアプリやGoogle検索の換算も併用すると安心。
通貨の詳しい仕組みや両替のコツは、ベトナムの通貨「ドン」完全ガイドも参考にしてください。
ベトナムの物価まとめ(先に結論)
- 屋台・ローカル中心なら: 日本の約1/4〜1/5体感
- 普通の旅行者(食堂+3つ星+Grab中心)なら: 日本の約1/2〜2/3体感
- 日本食・高級ホテル利用が増えると: 日本とほぼ同じこともある
- 旅行の1日予算目安: 約5,000〜8,000円(普通の旅行者)
- 生活は「何を・どこで・誰向けの店を使うか」で、同じ街でも2〜10倍変わる
つまり、ベトナムの物価は「日本の何分の1」とひと言では答えられない。体感は”1/5〜ほぼ同水準”まで振れる。 その振れ幅を決めるのは、あなた自身の選び方です。
1. 食事──「どこで食べるか」が物価感のすべてを決める
ベトナムで「物価が安い」と感じるかどうかは、ほぼ食事で決まります。同じフォーでも、路上の屋台と観光客向けレストランでは3〜4倍違う。これは「ぼったくり」ではなく、エアコン・内装・サービス・立地の違いがそのまま価格に乗っている結果です。
食事の相場(目安)
フォー(屋台・食堂):50,000〜70,000ドン(約300〜420円) 体感:朝ごはんの定番。2026年現在、ハノイ中心部では60,000〜70,000ドンが主流。郊外やローカルエリアなら50,000ドン前後で見つかる。
バインミー(屋台):15,000〜30,000ドン(約90〜180円) 体感:路上の移動カートなら20,000ドン前後。最安級のランチ。
ローカル定食(コムビンザン):40,000〜80,000ドン(約240〜480円) 体感:おかず2〜3品+ご飯+スープ。働く人の昼食。ハノイ中心部では60,000〜80,000ドンが多い。
カフェのコーヒー:35,000〜65,000ドン(約210〜390円) 体感:ベトナムのカフェ文化は本格的。練乳コーヒー(カフェスア)が定番。詳しくはベトナムコーヒー完全ガイドで紹介しています。
観光客向けレストラン:100,000〜200,000ドン(約600〜1,200円) 体感:英語メニューあり・エアコンあり・立地込みの価格。
日本食レストラン:150,000〜400,000ドン(約900〜2,400円) 体感:駐在員が通う店は日本とほぼ同じ。下手すると高い。
ビール(一般店・瓶/缶):15,000〜30,000ドン(約90〜180円) 体感:333やサイゴンビールなどローカルブランドが中心。コンビニ買いもこの価格帯。
ビアホイ(生ビール):10,000〜20,000ドン(約60〜120円) 体感:ハノイ名物の路上生ビール。ローカルエリアなら10,000ドン台、旧市街の観光客が多いエリアでは15,000〜25,000ドンに上がる。
在住者の感覚: 屋台やローカル食堂だけで暮らしても、2026年の相場では1日の食費は700〜1,000円程度を見ておくのが現実的です。数年前は500円台で収まることもあったけれど、物価上昇の波は確実にローカル食堂にも来ている。そして「毎日フォーとバインミーでいいか」という問題もある。日本食や洋食が恋しくなると、途端に「安い国」の幻想が崩れます。在住者が「ベトナムの物価は思ったより高い」と言い始めるのは、だいたいこのタイミングです。
2. 交通──日本と比べたら圧倒的に安い。ただし”見えないコスト”がある
移動コストは、ベトナムの物価が「安い」と最も実感しやすいカテゴリです。特に配車アプリのGrabを使えば、料金が事前確定するので安心(ハノイでのGrabの使い方)。
交通の相場(目安)
Grabバイク(市内3km):20,000〜35,000ドン(約120〜210円) 備考:雨天やラッシュ時は1.5〜2倍になることも。プロモーション時はもっと安い場合もあるが、通常はこの範囲。
Grab車(市内3km):45,000〜80,000ドン(約270〜480円) 備考:雨の日・ラッシュ時は割増。快適さを考えると十分安い。
路線バス(1回):7,000〜8,000ドン(約40〜50円) 備考:激安だが路線の理解が難しい。
タクシー初乗り(メーター):12,000〜15,000ドン(約70〜90円) 備考:Vinasun・Mai Linhが安心。迷ったらGrabでOK。
国内線(ハノイ→ホーチミン):600,000〜1,800,000ドン(約3,600〜10,800円) 備考:VietJetのセールなら片道4,000〜5,000円台もあるが、受託手荷物なし・時間帯が不便な便など条件付き。通常期は6,000〜10,000円程度が目安。LCCの使い方はベトジェット搭乗記も参考にどうぞ。
知っておくべきこと: Grabは料金が事前確定するので安心ですが、流しのタクシーや空港の客引きは別世界。Grabで50,000ドンの距離を、客引きタクシーに500,000ドン請求されたという話もあります。基本は「Grabを開く」。それだけで交通費のブレが大きく減ります。
3. 宿泊──「コスパの天国」は本当。ただしエリアで差が激しい
ベトナムのホテルは、同じグレードなら日本の3分の1〜半額程度。特に中級ホテル(3つ星クラス)のコスパが高く、1泊5,000〜8,000円で「日本の1万5千円級」の広さと設備が手に入ることもあります。
宿泊の相場(目安)
ゲストハウス・ドミトリー: 120,000〜250,000ドン(約720〜1,500円)
ビジネスホテル(3つ星): 500,000〜1,000,000ドン(約3,000〜6,000円)
中級ホテル(4つ星): 1,000,000〜2,500,000ドン(約6,000〜15,000円)
5つ星ホテル: 2,500,000ドン〜(約15,000円〜)
月極アパート(ローカル向け・ハノイ): 5,000,000〜10,000,000ドン/月(約30,000〜60,000円/月)
月極アパート(外国人向け・ハノイ): 12,000,000〜25,000,000ドン/月(約72,000〜150,000円/月)
在住者のリアル: 外国人向けのサービスアパートは「快適だけどベトナムの物価感ではない」という水準。家具付き・清掃込み・水道光熱費込みで月8〜15万円。東京のワンルームと変わらないことも。一方、ローカルアパートなら月3〜5万円で十分な部屋が見つかる。ただし、ローカル物件は契約書がベトナム語のみだったり、修理対応も大家さんとベトナム語でやりとりが前提だったりする。英語で完結したいなら、それなりの上乗せは覚悟が必要です。家賃事情の詳細はベトナムの住居事情でまとめています。
4. 日用品・サービス──「安い」と「意外に高い」が混在する
日用品・サービスの相場(目安)
水(500ml・コンビニ): 8,000〜12,000ドン(約50〜70円)
コンビニ弁当(Circle K等): 30,000〜55,000ドン(約180〜330円)
SIMカード(月30GB): 100,000〜200,000ドン(約600〜1,200円) → 通信手段の選び方はベトナムの通信ガイドで詳しく解説しています。
マッサージ(60分・ローカル店): 150,000〜300,000ドン(約900〜1,800円)
散髪(メンズ・ローカル): 40,000〜80,000ドン(約240〜480円)
映画館(1回): 60,000〜120,000ドン(約360〜720円)
輸入ワイン(1本・スーパー): 300,000ドン〜(約1,800円〜)
輸入チーズ(200g): 120,000〜200,000ドン(約720〜1,200円)
子どもの英語塾・習い事(都市部): 1,000,000〜3,000,000ドン/月(約6,000〜18,000円/月)
見落としがちなポイント: 人件費ベースのサービス(マッサージ、散髪、ネイルなど)は驚くほど安い。一方、輸入品(チーズ、ワイン、欧米ブランドの化粧品)は関税などの影響で、日本より高いことも珍しくありません。「ベトナム産なら安い、輸入品なら高い」──これが物価の基本法則です。
また、高額な買い物(スマートフォンやバイクなど)は0%分割払いで購入する人が多く、見た目の消費力と収入が直結しないことも覚えておくと、この国の「お金の動き」がもう少し見えてきます。
5. 1日の予算シミュレーション
旅行スタイル別に、現実的な1日の過ごし方と予算をまとめました。
バックパッカー:約2,000〜3,500円 屋台食×3+ドミトリー+Grabバイク数回
普通の旅行者:約5,000〜8,000円 食堂+カフェ+3つ星ホテル+Grab車移動
快適志向:約10,000〜18,000円 レストラン+4つ星ホテル+観光+マッサージ
ラグジュアリー:約20,000円〜 日本食ディナー+5つ星+スパ+専用車
「ベトナムは安い」は、主にバックパッカー〜普通の旅行者の価格帯の話です。快適志向以上になると、東京との差は思ったほどありません。逆に言えば、ローカルに近い過ごし方をすればするほど、ベトナムの物価の恩恵をフルに受けられます。
住む場合の生活費ざっくり(月いくら?)
旅行ではなく「住む」場合の月額も、参考までに。
※上の家賃・食費相場をもとにしたざっくりの目安です(生活スタイルで上下します)。
ローカル寄りの暮らし:月60,000〜100,000円 ローカルアパート(3〜5万円)+食堂中心の食費(2〜3万円)+通信・交通・日用品(1〜2万円)
外国人寄りの暮らし:月150,000〜250,000円 サービスアパート(8〜15万円)+外食・日本食あり(4〜6万円)+通信・交通・娯楽(2〜4万円)
ローカル寄りなら東京の半分以下で暮らせるけれど、外国人コミュニティの中で快適に暮らそうとすると、東京とそこまで変わらないこともあります。「ベトナムに住めば生活費が安くなる」は、どんな暮らしを選ぶか次第です。
持ち物の準備はベトナム旅行の持ち物チェックリストをどうぞ。
6. 物価に影響する3つの変数
① 都市とエリア
都市全体で見るとホーチミンがやや高い傾向がありますが、単純に「ホーチミン>ハノイ>ダナン」とは言い切れません。ハノイのタイホー区やバーディン区(外国人が多く住むエリア)は家賃がホーチミン並みかそれ以上。ダナンもビーチ沿いやリゾートエリアでは決して安くない。同じ都市内でも、観光エリアとローカルエリアでは1.5〜2倍の差が出ます。
② ローカル vs 外国人向け
同じ料理でも、入る店で3〜5倍違うのがベトナム。見分けるコツは「メニューがベトナム語だけの店は安い」「英語メニュー+写真付きの店は高い」。不安なら、Googleマップの口コミで価格帯を事前に確認するのが確実です。
③ 円安の影響
2021年頃は1円=約200ドンだったのが、2026年2月現在は約168ドン。つまり同じ50,000ドンのフォーが、5年前は250円だったのに今は300円。ベトナム自体の物価上昇と円安が重なり、「前に来たとき安かったのに…」と感じる旅行者が増えています。
7. 数字だけでは見えない「ベトナムのお金事情」
物価を語るとき、つい値段表だけで判断しがちですが、ベトナムには統計だけでは捉えきれないお金の流れがあります。
統計に出にくい経済活動が多い。 FacebookやZaloを使った個人売買、未登録の小規模ビジネス、現金取引──ベトナムでは公式統計に反映されにくい経済活動が日常に溶け込んでいる。だから平均給与の数字だけで「ベトナム人の暮らし」を想像すると、実態とズレることがあります。
海外送金(キエウホイ)が家計を支えている家庭も多い。 日本・韓国・アメリカ・オーストラリアなどで働く家族から送金を受け取っている世帯は少なくなく、この資金は給与統計には表れにくいけれど、実際の消費力を底上げしている。ハノイやホーチミンの高級カフェが若者で溢れている光景を見て「給料に対して消費が多すぎないか?」と感じたことがある人は、この仕組みを知ると腑に落ちるかもしれません。
結婚式・冠婚葬祭の出費。 ベトナムにはご祝儀・香典文化があり、結婚式では300,000〜1,000,000ドン(約1,800〜6,000円)を包むのが一般的。社会人になると月に数回招待されることもあり、これが家計に結構響く。実家への仕送りも含め、「自分のために使えるお金」は額面よりかなり少ないのが現実です。
住宅価格の高騰。 ハノイやホーチミンの不動産価格はここ数年で急上昇しており、若い世代にとって住宅購入のハードルはかなり高い。この話は物価記事の範囲を超えるので深掘りはしませんが、「物価が安い=暮らしが楽」とは限らないという点は、知っておいて損はないはずです。
ベトナムの給与事情について詳しくはベトナムの平均年収の記事をどうぞ。
おわりに──「安い」を期待するより「使い分け」を楽しむ
ベトナムの物価は「安い国」ではなく、「安い選択肢と高い選択肢が、同じ通りに並んでいる国」 です。
朝はローカル食堂で50,000ドンのフォーを食べて、昼はおしゃれなカフェで55,000ドンのベトナムコーヒーを飲んで、夜は奮発して200,000ドンのレストランに行く。この1日の食費は合計305,000ドン、約1,830円。東京では考えられない贅沢と節約の切り替えが、この国では普通にできます。
予算を「いくらに抑えるか」ではなく、「どこに使って、どこで節約するか」。その配分を自分で決められるのが、ベトナムの物価の一番の面白さだと思います。
よくある質問(FAQ)
ベトナムの物価は日本の何分の1?
ざっくり3分の1〜5分の1。ローカルフードなら5分の1以下(フォー1杯60円〜)。ただし輸入品やホテルは日本と変わらないことも。
ベトナム旅行の1日の予算は?
バックパッカーなら3,000〜5,000円、中級ホテル+レストランなら8,000〜15,000円、高級リゾートなら3万円〜が目安です。
ベトナムで値切るのは失礼?
市場や路上では値切りが文化。観光客向けの初値は2〜3倍が普通なので、交渉は失礼ではなくコミュニケーションの一部です。スーパーやコンビニは定価販売。