ハノイのアイスクリームといえば「ケムチャンティエン」|値段・味・行き方

ケムチャンティエン(Kem Tràng Tiền)とは、1958年創業、ハノイ・ホアンキエム湖のほとりで70年近く愛され続けている、ベトナムで最も有名なアイスクリーム店。フォーやブンチャーがハノイの「食事」の顔なら、ケムチャンティエンはハノイの「おやつ」の顔だ。

地元では「ケムチャンティエンを食べずしてハノイっ子とは言えない(Phi thực Kem Tràng Tiền bất thành người Hà Nội)」という言葉があるほど。観光客向けの名物というより、何十年も前から地元の人がごく普通に食べてきた、日常の一本である。棒アイス1本が15,000ドン(約90円)と安く、旧市街やホアンキエム湖の散歩ついでに立ち寄れるのも人気の理由だ。

ケムチャンティエンとは?──1958年創業、ハノイの「時を超える味」

ケムチャンティエンの店内に掲げられた歴史パネル。創業の由来や『Phi thực Kem Tràng Tiền bất thành người Hà Nội』の一文が並ぶ

ケムチャンティエンは、フランスの影響でアイスクリームがベトナムに広まった時期に、国営の飲食店として1958年に誕生した。以来ずっと、店名の由来にもなったチャンティエン通り35番地(35 Tràng Tiền)で営業を続けている。看板とパッケージに刻まれた「since 1958」と、スローガン「Hương vị vượt thời gian(時を超える味)」が、この店の歴史そのものだ。

名前の由来──売っていた通りがそのまま店名に

「チャンティエン(Tràng Tiền)」とは、店の名前であると同時に、通りの名前。アイスを最初に作って売った場所がこの通りの35番地だったため、そのまま店名になった。この番地は今もハノイの一等地で、すぐ西にはホアンキエム湖(ホアンキエム湖=ハノイ中心の湖)、少し歩けばオペラハウス(ハノイ大劇場)がある、まさに街の中心だ。

「路上で立ち食い」から近代的な店内へ──2020年の大改装

改装後のケムチャンティエンの店内。緑のブランド折り畳み椅子が並び、壁には創業当時の歴史写真が飾られている

昔のケムチャンティエンは、歩道に面した小さな売り場に行列ができ、買った人はその場の路上で立ったまま食べるのが名物だった。この「立ち食い」の風景こそがハノイらしさとして長く親しまれてきた。

2020年前後の大改装で、店内は大きく生まれ変わった。今は吹き抜け(天井から自然光を取り込む大きな窓)と緑を配した広い空間になり、ブランドカラーの緑の折り畳み椅子が並ぶ。壁には創業当時からの古い写真が飾られ、歴史を感じながらアイスを味わえる。「路上で立ち食い」の時代を知る人には少し寂しいかもしれないが、暑い日に涼みながら食べられるのは正直ありがたい。

メニューと値段【2026年最新】──棒アイス15,000ドンから

ケムチャンティエンの2026年最新メニュー表。棒アイス15,000ドン、コーン17,000ドンなどの価格と味一覧

現地の店頭メニュー(2026年7月時点)を実際に確認してきた。ネット上には「棒アイス8,000〜12,000ドン」といった古い価格情報も残っているが、最新の実売価格は下の表の通り。値段は種類ごとにシンプルで、味は同じ値段の中から自由に選べる。

種類 値段(1個) おおよその日本円 主な味
棒アイス(kem que) 15,000ドン 約90円 コム(緑もち米)/緑豆/ココナッツ/チョコ/カカオ/黒ごま海苔/抹茶/抹茶チョコ/ピンクグアバ/ソーソップ/メロン/杏/ドリアン
棒アイス・特別(チョコ&ピーナッツ) 17,000ドン 約100円 ソコラ・ダウフォン(Sôcôla đậu phộng)
コーン(kem ốc quế) 17,000ドン 約100円 バニラ/カカオ/コム/ココナッツ/タロイモ/緑豆/いちご/抹茶/ドリアン
モチアイス(kem mochi) 30,000ドン 約180円 バニラ/いちご/抹茶/杏/コーヒー/ブルーベリー
箱アイス(kem hộp・95〜450g) 18,000〜50,000ドン 約110〜300円 バニラ/カカオ/コム/ココナッツ/タロイモ/緑豆/いちご/抹茶/ドリアン
ケムソイ(kem xôi・もち米アイス) 35,000ドン 約210円 アイス2種を選択(ココナッツ/コム/タロイモ/バニラ/ドリアン)

※日本円はおおよその目安(1,000ドン=約6円で換算)。為替で変動するので、両替や支払いの前に最新レートを確認してほしい。ドンの桁に慣れると旅がぐっとラクになる。

定番は棒アイス(kem que)──「コム」と「緑豆」が二枚看板

ケムチャンティエンのコム(緑もち米)の棒アイス。淡い黄緑色で、パッケージに『rice flakes ice cream』の文字

一番人気は、なんといっても棒アイス。メニュー上でも「ベストセラー」マークが付いているのがコム(cốm=緑色の若いもち米)緑豆(đậu xanh)の2つだ。どちらもベトナムらしい、素朴で甘さ控えめの味。コムはほんのり草っぽい穀物の香りがして、日本人にはずんだ(枝豆あん)に近い印象がある。迷ったらまずこの2つから始めるのがおすすめだ。

チョコやカカオ、ココナッツといった王道もあれば、ドリアン・ソーソップ・ピンクグアバなど南国フルーツ系も揃う。1本90円ほどなので、何本か買って食べ比べても財布は痛まない。

コーン(kem ốc quế)とソフトクリーム

ケムチャンティエンのバニラのコーン。コーンに『KEM TRÀNG TIỀN』の型押し文字。背景は改装後の店内カウンター
ケムチャンティエンのソフトクリーム状のコーン。白くなめらかに巻かれたアイスを店内で手に持つ

すくうタイプのアイスをのせたコーンも定番で、こちらは17,000ドン。ベストセラーはシンプルなバニラだ。コーンには「KEM TRÀNG TIỀN」の文字が型押しされていて、写真映えもする。あっさりした乳味で、甘すぎず、暑い日にちょうどいい。ソフトクリーム状のタイプもあり、どちらも食べ歩きにぴったりだ。

モチアイス・箱アイス・カラフルなギフト

ケムチャンティエン店内の商品棚。バインチュンの箱、ギフトボックス、カラフルな棒アイスの詰め合わせ箱が並ぶ

日本の「雪見だいふく」に似たモチアイス(kem mochi)は30,000ドンで、バニラ・いちご・抹茶・杏・コーヒー・ブルーベリーの6色。箱アイス(kem hộp)は95g〜450gで18,000〜50,000ドンと、家族や職場へのちょっとした手土産にも向く。棒アイスは箱入りの詰め合わせもあり、カラフルに並んだ見た目がかわいい。

実食──コムの棒アイスとバニラコーンの味

実際に食べてみた。まずコムの棒アイス。緑もち米のやさしい香りと、しつこくない甘さ。氷菓というより、素材の風味を楽しむアイスだ。安いから侮っていると、意外なほど「ちゃんとした味」で驚く。

バニラのコーンは、乳の風味は控えめで、後味がすっきり。ハノイの蒸し暑さの中で食べると、この軽さがちょうどいいと実感する。高級ジェラートのような濃厚さを期待すると違うが、これは「ハノイの日常のアイス」として食べるのが正解だ。値段と気軽さ、そして70年変わらない味という物語込みで、満足度は高い。

アイスだけじゃない──バインチュン・ギフト菓子・ドリンクも

ケムチャンティエンのギフトボックス売り場。紅と緑のフートゥエ・コムズアの箱が緑タイルの棚に並ぶ

改装後のケムチャンティエンは、アイス専門店から一歩広がって、ハノイ土産のセレクトショップのような品揃えになっている。店内の棚には、ブランドの緑と紅で統一されたギフトボックスがずらり。バインチュン(bánh chưng=もち米を葉で包んだ伝統菓子)や、フートゥエ(phu thê)・コムズア(cốm dừa)といった伝統菓子の詰め合わせ、季節の贈答品まで並ぶ。

さらに、コム・バニラ・ココナッツ・カカオといったおなじみの味を、ドリンク(thức uống di sản=ヘリテージドリンク)として楽しめるメニューも登場している。アイスを食べたあと、店内でひと休みしながら味わうのもいい。

行き方・営業時間・注意点

場所とアクセス──ホアンキエム湖のすぐ東

住所は35 Tràng Tiền通り(ホアンキエム区。行政区分の再編で住所表記が変わりつつあるが、場所は不変)。ホアンキエム湖の南東の角から、オペラハウス方面へ伸びるチャンティエン通り沿いにある。旧市街の散策やホアンキエム湖の週末歩行者天国とセットで立ち寄るのが定番のルートだ。徒歩でアクセスしやすく、Grab(配車アプリ)でも「Kem Tràng Tiền 35」で一発で出る。

営業時間・支払い

営業時間はおおむね8:00〜22:00(夏場や週末は延長されることもある)。基本は現金で、少額なので大きな紙幣より小銭・小額紙幣があるとスムーズだ。注文は先に会計してアイスを受け取る、屋台に近いスタイル。行列していても回転は速い。

「本物」の見分け方──偽ブランドに注意

人気ゆえに、「Tràng Tiền số 1」「Tràng Tiền số 10」など、紛らわしい名前の別ブランドが街中にたくさんある。本物は名前が「Kem Tràng Tiền」だけで、前後に数字や余計な文字が付かない。パッケージや看板に「since 1958」とブランドロゴがあるかが目印だ。確実なのは、この35番地の本店で買うこと。ここで食べれば偽物を心配する必要はない。

ハノイの他のアイスも──アボカドアイス(kem bơ)

ハノイのアイスはケムチャンティエンだけではない。地元で根強い人気なのがアボカドアイス(kem bơ)。濃厚なアボカドのスムージーの上にココナッツアイスをのせ、削ったココナッツをトッピングした、デザートというより「食べる飲み物」に近い一品だ。西湖(タイ湖)周辺の店などで味わえる。ケムチャンティエンが「軽くて素朴な氷菓」なら、こちらは「こってり濃厚系」。街歩きの気分に合わせて選び分けるのがおすすめだ。

よくある質問(FAQ)

ケムチャンティエンの値段は?

棒アイスが1本15,000ドン(約90円)、コーンが17,000ドン、モチアイスが30,000ドン、もち米アイス(ケムソイ)が35,000ドンです(2026年7月・本店の店頭メニュー確認)。全体で1万〜5万ドンの範囲に収まります。

一番人気の味は?

棒アイスならコム(緑もち米)と緑豆、コーンならバニラが店の「ベストセラー」表示です。ベトナムらしい素朴な味を試すなら、まずコムがおすすめです。

場所はどこ?行き方は?

ハノイ中心部、ホアンキエム湖の南東からオペラハウス方面へ伸びる35 Tràng Tiền通り沿いです。旧市街から徒歩圏で、Grabなら「Kem Tràng Tiền 35」で指定できます。

偽物があるって本当?

はい。名前に数字が付いた類似ブランドが多数あります。本物は「Kem Tràng Tiền(+since 1958)」のみ。35番地の本店で買うのが最も確実です。

お土産に持ち帰れる?

棒アイスや箱アイスは冷凍のアイスなので、日本への持ち帰りは現実的ではありません。ただし常温で持ち運べるギフト菓子(伝統菓子の詰め合わせなど)もあり、こちらはお土産に向きます。

おわりに──ハノイに来たら、まず一本

ケムチャンティエンは、豪華でも高級でもない。けれど、1958年から変わらずハノイっ子の記憶に残り続けてきた「時を超える味」だ。1本90円で、この街の日常に少しだけ入り込める。旧市街やホアンキエム湖を歩いたら、ぜひ立ち寄って、コムの棒アイスを一本。ハノイの暑さと、その素朴な甘さは、驚くほどよく合う。

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ライター

日本での生活経験あり。リンランを生活圏に、文化背景の翻訳と取材サポートを担当。

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