ベトナムコーヒーの飲み方・注文・お土産|在住者が教えるカフェの楽しみ方

2025.11.05

「コーヒーの生産量が世界2位の国は?」——正解はベトナム。しかも、ロブスタ種では世界最大の輸出国だ。

でも現地に住んでいると、生産量の話より先に実感するのは、コーヒーがこの国の「生活インフラ」だということ。朝の路上カフェ、昼休みのチェーン店、夜10時でも灯りが消えないカフェ。ベトナム人の一日はコーヒーで回っている。

この記事では、ベトナムコーヒーの特徴、カフェでの注文方法、お土産の選び方、そしてカフェ文化のリアルを在住者の目線で伝えたい。

ハノイの路上コーヒー屋台 プラスチックカップと青い椅子のある移動式カート

ベトナムコーヒーとは|3つの特徴で30秒で理解する

ベトナムコーヒーとは、苦味の強いロブスタ種の豆を深煎りにし、「カフェ・フィン(Cà phê phin)」と呼ばれる金属フィルターで濃く抽出して、練乳(コンデンスミルク)を加えて飲む、ベトナム独自のコーヒー文化のことだ。

この3つ——ロブスタ種、カフェ・フィン、練乳——が揃うことで、他の国にはない「濃くて甘い一杯」が生まれている。

ロブスタ種が主役という、世界でも珍しい国

日本のカフェで使われる豆は、ほぼすべてアラビカ種。フルーティな酸味と華やかな香り。それが「おいしいコーヒー」の基準になっている。

ベトナムはまったく違う。生産量の約90〜95%がロブスタ種で、アラビカ種に比べて苦味が強く、酸味が少なく、カフェイン含有量は約2倍。麦茶のような香ばしさと、ガツンとくるボディの強さが特徴だ。

日本のコーヒーに慣れた人がロブスタ100%をブラックで飲むと、正直けっこう衝撃を受ける。だからこそ練乳と合わせる飲み方が発達したわけで、これは「おいしさの工夫」なのだと、住んでいると理解できる。

「甘い」の正体は練乳

路上カフェでカフェスアダーを作る様子 練乳(Ngôi Sao)の上にコーヒーを注いでいる

ベトナムでコーヒーを注文すると、グラスの底に白い液体が沈んでいる。練乳だ。一口飲んで、多くの日本人が驚く。想像をはるかに超えて甘い。

フランス植民地時代、暑いベトナムでは牛乳の保存が難しく、代わりに長期保存できる練乳が使われた。ロブスタの強烈な苦味を練乳の甘さが中和してくれる。つまり、ベトナムのコーヒーが甘いのは「好み」ではなく「必然」だった。

ただし、「イッドゥオン(ít đường=砂糖少なめ)」「コン・ドゥオン(không đường=砂糖なし)」など、好みに合わせた注文は普通にできる。「ベトナムコーヒー=激甘」というイメージは、第一印象に引っ張られすぎだ。

カフェ・フィン|一滴ずつ落ちる時間を楽しむ

カフェフィンからベトナムコーヒーが一滴ずつ落ちる様子

もう一つの特徴が、抽出に使う小さな金属フィルター「カフェ・フィン」。カップの上に乗せてお湯を注ぐと、コーヒーが一滴ずつゆっくり落ちてくる。1杯に4〜5分。

この時間をベトナム人は「待つ」とは感じていない。フィンが落ちている間にスマホを触ったり、友人と話したりしている。コーヒーが「できるまでの時間」が、そのまま「過ごす時間」になっている。これがベトナムのコーヒー文化の核心だと、住んでいると実感する。

カフェで何を頼む?|旅行者のための注文ガイド

ベトナムのカフェに入ったら、まずこの3つから選べば間違いない。

まず飲むべき3杯

① カフェ・スア・ダー(Cà phê sữa đá)

ベトナムコーヒーの代名詞。練乳入りアイスコーヒー。迷ったらこれ。路上カフェで15,000〜25,000VND(約90〜150円)、チェーン店で35,000〜55,000VND(約210〜330円)。暑い日にはエネルギー補給そのものだ。

カフェスアダー ベトナム式練乳入りアイスコーヒー

② カフェ・チュン(Cà phê trứng)=エッグコーヒー

ハノイ名物。卵黄と練乳を泡立てたクリームをコーヒーの上に乗せたもの。見た目はティラミスに近く、スプーンですくって食べるように飲む。発祥の店「ザン・カフェ(Giảng Café)」はハノイ旧市街にあり、1杯35,000VND(約210円)。冬のハノイで飲むと格別。

ハノイ名物エッグコーヒー(カフェチュン)卵黄クリームとコーヒー

③ カフェ・コット・ズア(Cà phê cốt dừa)=ココナッツコーヒー

ココナッツミルクとコーヒーを合わせた南国らしい一杯。コンカフェ(Cộng Cà Phê)が火付け役。シャーベット状のココナッツミルクをコーヒーに入れた飲み物。コーヒーが苦手な方もデザート感覚で飲むことができるのでおすすめ。

ココナッツコーヒー(カフェコットズア)シャーベット状の食感

他に知っておくと楽しいメニュー

カフェ・デン・ダー(Cà phê đen đá)

ブラック。かなり苦いが、コーヒー好きにはこれが一番ベトナムらしい。住宅街の路上カフェで、おじさんたちが朝に飲んでいるのはだいたいこれ。

カフェデンダー ベトナム式アイスブラックコーヒー

バクシウ(Bạc xỉu)

南部ホーチミン発祥。カフェスアよりもさらにミルク多め、コーヒー少なめ。甘くてまろやか。苦味が苦手な人に人気。

バクシウ ホーチミン発祥のミルク多めベトナムコーヒー

カフェ・ムオイ(Cà phê muối)

塩コーヒー。フエ(中部)発祥で、全国に広がりつつある。塩気がコーヒーの甘さを引き立てる。個人的お勧めNo.1。

カフェムオイ フエ発祥の塩コーヒー

注文時のベトナム語チートシート

飲み方 ベトナム語 カタカナ読み
アイスミルクコーヒー Cà phê sữa đá カフェ・スア・ダー
アイスブラック Cà phê đen đá カフェ・デン・ダー
エッグコーヒー Cà phê trứng カフェ・チュン
ココナッツコーヒー Cà phê cốt dừa カフェ・コット・ズア
砂糖少なめ Ít đường イッドゥオン
砂糖なし Không đường コン・ドゥオン
氷多め Nhiều đá ニュウダー

ちなみに、ベトナムのカフェではコーヒーを注文すると、無料でジャスミン茶やハス茶がポットで出てくることが多い。口直し用だ。これも、ベトナムの「コーヒー体験」の一部。

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どのカフェチェーンに入ればいい?

ベトナムのカフェチェーンは日本のコンビニ並みにある。クレジットカードがほぼ確実に使えるのはハイランズコーヒー。

Highlands Coffee(ハイランズコーヒー)

ベトナム最大手。空港、モール、どこにでもある。「ベトナムコーヒーの標準の味」を知りたいならまずここ。カフェ・スア・ダーは39,000VND(約230円)。

ハイランズコーヒーの店舗外観 ベトナム最大手カフェチェーン

Cộng Cà Phê(コンカフェ)

レトロなベトナム社会主義風の内装。古き良き現地人の憩いの場で、子供も多い。ココナッツコーヒーの火付け役。観光地にほぼ必ずある。SNS映えする。

コンカフェ(Cộng Cà Phê)レトロな社会主義風の店内

The Coffee House(ザ・コーヒーハウス)

若者に人気。Wi-Fiが良く、ノマドワーカーや学生が長居する。暑い日の避暑にも。お値段少々お高め。

ザ・コーヒーハウスの店内 若者に人気のベトナムカフェチェーン

ただし、住んでいて一番通うのは路上の小さなコーヒー屋だ。歩道にプラスチックの椅子を並べただけの店。15,000〜25,000VND(約90〜150円)。バイクが行き交う通りを眺めながら飲む一杯は、チェーン店では味わえない。

路上のコーヒー販売

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お土産に買うべきベトナムコーヒー|3択で迷わない

お土産選びで一番大事なのは「相手に合わせること」。3パターンで考えれば外さない。

ばらまき土産 → G7 3in1

G7 3in1インスタントコーヒー ベトナム土産の定番

チュングエン社の「G7」は、ベトナムインスタントコーヒーの代名詞。コーヒー+砂糖+ミルクが一袋になった「3in1」タイプが定番で、お湯を注ぐだけで甘くて濃厚なベトナムコーヒーが飲める。スーパーで21袋入り50,000〜70,000VND(約300〜420円)。軽くて個包装で、配りやすい。日本でもカルディやAmazonで買えるが、現地の方がはるかに安い。

コーヒー好きへ → Trung Nguyên Legend

Trung Nguyên Legendのコーヒーパッケージ ベトナムの老舗ブランド

ベトナムコーヒー業界の老舗。高品質ロブスタのブレンドで、パッケージも高級感がある。スーパーで500g入り80,000〜150,000VND(約480〜900円)。

注意:日本でコーヒーを日常的に飲む人にロブスタ100%を渡すと、苦味が強すぎて合わない可能性がある。パッケージ裏で「Arabica」と書かれたブレンドを選ぶと無難。

体験型ギフト → 豆+カフェ・フィンのセット

お土産用のカフェフィン ステンレス製の金属コーヒーフィルターと青い箱のパッケージ

豆だけ渡しても、普通のドリッパーだとベトナム式の味にはならない。カフェ・フィンは軽くてかさばらず、ステンレス製で20,000〜50,000VND(約120〜300円)と安い。豆と一緒に贈ると「体験ごとプレゼント」になって喜ばれる。

ジャコウネココーヒーは買わなくていい。観光地で安く売られているものの多くは、飼育型生産品か香料添加品。天然の野生型は1kgあたり数万円はする。信頼できるブランドの直営店以外はおすすめしない。

どこで買う?

スーパーが一番コスパがいい。ロッテマート、ウィンマートなどの大型スーパーでは主要ブランドがほぼすべて揃っていて、空港やお土産店より2〜3割安い。市場での量り売りは鮮度が落ちていることが多いので避ける。

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ベトナムのカフェ文化|150円で2時間の「居場所」を買う

ベトナムのカフェ文化で、日本との最大の違いを一つ挙げるとしたらこれだ。25,000VND(約150円)の一杯で2〜3時間座っていても、誰にも何も言われない。

日本のカフェにある暗黙の時間制限が、ここにはない。だから、ベトナムではカフェが「第二のオフィス」になる。学生はテスト勉強をし、フリーランスは一日中仕事をし、営業マンは商談をする。土地売買の交渉、採用面接、家族の相談——多くの重要な話がカフェで行われている。

「コーヒーに行こう」と誘われたら、それは「大事な話をしよう」という意味かもしれない。初デートもほぼカフェ。別れ話も、またカフェだ。

朝の路上カフェには面白い光景がある。中年の男性たちが毎朝6時半〜8時頃、決まったカフェの決まった席に集まる。10年、20年と同じメンバーが同じテーブルを囲み、コーヒーを飲みながら今日の予定や昨日のニュースを話す。もし誰かが一日来なければ、「今日はどうした?」と仲間が心配する。

旅行者として感じてほしいのは、あの「急かされない空気」だ。チェーン店でも路上でも、一杯のコーヒーで座っていい時間は、あなたが決める。

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おわりに|ベトナムコーヒーは「飲み物」ではなく「時間」だった

ベトナムに住んで気づいたのは、コーヒーが「飲み物」を超えた存在だということだ。

ベトナム人にとって「コーヒーを飲む」は「誰かと過ごす」とほぼ同義。そして同時に、一人で座って何もしない時間を持つための口実でもある。一杯25,000VND(約150円)で、誰でも1〜2時間の「居場所」を手に入れられる。高級店でも路上でも、そこに優劣はない。

ベトナムに来たら、まずは一杯のカフェ・スア・ダーを注文して、低い椅子に座って、通りを眺めてみてほしい。氷が溶けて甘さが変わっていく時間を味わえたら、ベトナムのコーヒー文化を体験したと言えると思う。

コーヒー文化だけでなく、テト(旧正月)などの伝統行事を知ると、ベトナムの生活がより深く見えてきます。

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エンジニア

幼少期をアメリカで過ごし、現在は世界を転々としながらコードを書くノマドエンジニア。

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