ベトナムの運転免許|日本の免許は使える?切り替え方法・費用・注意点

暮らし

ベトナムに住んで最初にぶつかる壁が、移動手段だ。

Grabだけで生活するのは正直キツい。目的地が幹線道路沿いならいいけれど、ちょっと路地に入った食堂とか、市場の裏手のカフェとか、Grabでは行きにくい場所がベトナムには山ほどある。バイクに乗れたら生活の自由度が一気に上がる — というのは、住んだ人間なら全員わかっている。

でもバイクに乗ろうとした瞬間、「免許どうするの問題」が立ちはだかる。

結論から言う。日本の国際免許はベトナムでは使えない。

これ、意外と知らない人が多い。日本はジュネーブ条約(1949年)、ベトナムはウィーン条約(1968年)。加盟している条約が違うから、JAFで取った国際免許を持っていっても法的に無効。在ベトナム日本大使館もはっきりそう案内している。

じゃあどうするか。選択肢は主に2つ。日本の免許をベトナム免許に切り替えるか、ベトナムで試験を受けて新規に取得するか。この記事では、切替の手順・必要書類・費用・落とし穴を、在ベトナム日本大使館の公式情報をベースにまとめた。

日本の免許・国際免許はベトナムで使えるか?

そのまま運転には使えない。これが結論だ。

日本の免許証も、日本で発行された国際免許証(IDP)も、そのままベトナムで運転するためには使えない。ベトナムで運転するには、日本の免許をベトナム免許に切り替えるか、ベトナムで新規に取得する必要がある。

ただし、日本の免許が完全に無価値かというと、そうではない。ベトナム免許への切替手続きでは、日本の免許証が「元資料」として必要になる。つまり、日本の免許は「ベトナムで直接使えないが、ベトナム免許を手に入れるための鍵」という位置づけだ。

なぜ使えないのか。国際運転免許証(IDP)の制度は、「道路交通に関する条約」に基づいている。問題は、この条約が2系統あることだ。1949年のジュネーブ条約と、1968年のウィーン条約。日本はジュネーブ条約のみに加盟、ベトナムはウィーン条約のみに加盟している。条約が違うため、日本で発行された国際免許はベトナムでは法的効力を持たない。

在ベトナム日本大使館の公式案内にも、こう書かれている。「ベトナムが加盟する道路交通に関する国際条約(ウィーン条約)は、日本が加盟する条約(ジュネーブ条約)と異なるため、ベトナムでは日本で発行された国際運転免許証も有効ではありません」。

つまり、日本の免許そのものも、日本の国際免許も、どちらもベトナムでは運転するための法的根拠にならない。

よくある誤解

「国際免許があればどの国でも運転できるんでしょ?」 — いいえ。国際免許は加盟している条約が同じ国の間でしか有効ではない。日本のIDPで運転できるのはジュネーブ条約加盟国だけであり、ベトナムは含まれない。

「短期旅行なら大丈夫でしょ?」 — 法的には短期でも無効。実態として、観光地で外国人がレンタルバイクに乗っている光景は珍しくないし、すべてが取り締まられているわけではない。ただし法的根拠がない以上、事故を起こしたときに保険が下りない。これが最大のリスクだ。楽しい旅行が一瞬で修羅場になる。

「IDPを見せれば警察は通してくれるって聞いたけど?」 — 通してくれることはあるかもしれない。でもそれは「見逃してもらっただけ」であり、合法ではない。次に止められたときに同じ対応をしてもらえる保証はないし、事故の当事者になったときに「前は大丈夫だったのに」は通用しない。

ベトナムで合法的に運転するには、ベトナムの運転免許が必要だ。

日本の免許をベトナム免許に切り替える方法

日本の運転免許を持っている人は、ベトナムの免許に「切り替え」ができる。試験は不要で、書類を揃えて窓口に出せば5営業日で発行される。費用は135,000ドン(約800円)。手続き自体はシンプルだが、落とし穴がいくつかある。

切り替えの条件

切り替えに必要な前提条件は3つ。有効な日本の運転免許証を持っていること。ベトナムの滞在許可(ビザ・一時在留カードなど)があること。ベトナムの医療機関が発行する健康診断書を取得すること。この3つが揃っていれば、切り替え手続きに進める。

日本人が見落としがちな落とし穴

ここが一番大事な部分。読み飛ばさないでほしい。

落とし穴①:普通車免許だけではバイクに乗れない。日本の「普通免許」からベトナム免許に切り替えた場合、発行されるのは普通車の免許だけだ。バイクの運転はできない。ベトナムに来る日本人の多くは「バイクに乗りたい」と思っているのに、普通車免許しか持っていなかったというケースが非常に多い。バイクに乗るには、日本の自動二輪免許から切り替えるか、ベトナムで二輪の実技試験に合格する必要がある。

落とし穴②:AT限定免許は切り替えできない。ベトナムの普通車免許にはAT限定という区分がない。そのため、日本のAT限定普通免許からの切り替えは不可。これも住んでから知る人が多い。

つまり、日本でAT限定の普通免許しか持っていない人は、ベトナムでは免許の切り替え自体ができない。選択肢はベトナムの教習所に通って試験を受けるか、日本に帰国したときにAT限定を解除してから再度切り替えるか、のどちらかになる。

必要書類

在ベトナム日本大使館の案内(2025年1月現在)に基づく書類一覧はこの通り。免許切替申請書(所定様式)、日本の運転免許証の原本(提示)とコピー(提出)、免許証のベトナム語翻訳文(ベトナムの公証役場での公証が必要)、パスポートの原本(提示)とコピー(提出)、ベトナム滞在許可書または政府発行の身分証明書の原本(提示)とコピー(提出)、健康診断書の原本とコピー。

ポイントは「ベトナム語翻訳文の公証」。日本語の免許証をそのまま持っていっても受け付けてもらえない。ベトナム国内の公証役場(Văn phòng công chứng)で、翻訳と公証をセットでやってもらう必要がある。ハノイやホーチミンには外国語対応の公証役場があるので、「đổi bằng lái xe(免許切替)」と言えば手続きの流れを教えてもらえる。

費用と所要期間

切り替えの手数料は135,000ドン(約800円)。2025年1月時点の大使館案内に基づく金額だ。別途、翻訳・公証の費用と健康診断書の取得費用がかかるが、いずれも数十万ドン程度で、全部合わせても100万ドン弱(数千円)に収まることが多い。

所要期間は、申請が受理されてから5営業日(土日・祝日を除く)。書類に不備がなければ、翌週には新しい免許を受け取れる計算だ。

発行されるベトナム免許の有効期間は、ベトナムの滞在許可期間と日本の免許の有効期間のうち、短い方に合わせて設定される。1年の在留カードを持っていれば、最長1年のベトナム免許が出る。

申請窓口について

現時点の在ベトナム日本大使館の案内では、ハノイの申請窓口として公安省交通警察部(フンフン通り、ハドン区ほか)の住所が掲載されている。ただし、ベトナムでは2025年に交通関連の制度が公安省(Bộ Công an)のもとに再編されつつあり、窓口の運用が変わる可能性がある。

申請前に、在ベトナム日本大使館の免許切替ページか、ベトナム国家公共サービスサイト(Dichvucong.gov.vn)で最新の窓口情報を確認してから出向くのが確実だ。

参考:在ベトナム日本国大使館 — ベトナム運転免許への切替手続

ベトナムで新規に免許を取得する方法(試験)

切り替えではなく、ベトナムで一から免許を取りたい人もいる。日本で免許を持っていない人、AT限定で切り替えができなかった人、バイク免許を新規に取りたい人が対象だ。

取得の流れ

まず、ベトナムの教習所(trung tâm đào tạo lái xe)に入学する。学科と実技のコースを受講した後、試験に臨む。学科試験はベトナム交通法規の択一式テスト。実技試験は教習コースでの走行と路上試験。合格すれば、正式なベトナム免許が発行される。

外国人向けに英語で対応してくれる教習所もある。日本語対応はまだほとんどないが、学科の問題自体はパターンが決まっているので、事前にベトナムの交通法規を勉強しておけば対応は可能だ。

費用と期間の目安

教習所の費用は免許の種類と地域によるが、バイクのA1免許で数百万ドン(数万円)程度。期間は数週間から1ヶ月ほど。普通車のB2免許はもう少し時間も費用もかかる。

正直なところ、日本で二輪免許を持っていなくて、ベトナムでバイクに乗りたいなら、この方法が現実的な選択肢になる。切り替えでは対応できないケースが多いからだ。

50cc未満のバイク・電動バイクは免許なしで乗れる?

原則として乗れる。ただし「免許不要=何もいらない」ではない。

ベトナムの交通法では、50cc未満の原付バイクや小型電動バイク(出力4kW以下・最高速度50km/h以下)は原則として運転免許が不要とされている。16歳以上であれば運転できる。

ただし、免許が不要なだけであって、それ以外のルールはきっちり適用される。車両の登録とナンバープレートの取得は原則必要。強制対人賠償保険(bảo hiểm TNDS)への加入も必須。ヘルメットの着用も当然義務。車両登録証(cavet)と保険証書は運転中に携帯しなければならない。

2025年施行の道路交通安全法でこれらのルールが整理されているが、地域や車両の種類によって運用に差が出ることもある。購入時に販売店や所轄の窓口で、登録手続きの要否を確認するのが確実だ。

免許のハードルが低い分、50cc未満の電動バイクは在住外国人の「最初の足」としてかなり人気がある。価格も手頃で、ハノイ市内の移動なら十分。免許取得までの「つなぎ」としても、長期的な生活の足としても、選択肢に入れておく価値はある。

よくある質問(FAQ)

Q. 日本の国際免許はベトナムで使えますか?
A. 使えません。日本はジュネーブ条約(1949年)、ベトナムはウィーン条約(1968年)に加盟しており、条約が異なるため日本で発行された国際免許はベトナムでは無効です。ベトナムで運転するには、日本の免許をベトナム免許に切り替えるか、ベトナムで新規に免許を取得する必要があります。

Q. 免許の切り替えにかかる費用と期間は?
A. 手数料は135,000ドン(約800円)、所要期間は申請受理後5営業日です(2025年1月現在、在ベトナム日本大使館の案内に基づく)。別途、翻訳・公証費用と健康診断書の費用がかかりますが、全部合わせても数千円で収まります。

Q. 日本の普通免許でベトナムのバイクに乗れますか?
A. 乗れません。日本の普通車免許からの切り替えでは、ベトナムの普通車免許のみが発行されます。バイクに乗るには、日本の自動二輪免許から切り替えるか、ベトナムで二輪の実技試験に合格する必要があります。

Q. AT限定免許でも切り替えられますか?
A. 切り替えられません。ベトナムにはAT限定の普通車免許区分がないため、日本のAT限定免許からの切り替えは不可です。

Q. 50cc未満のバイクは免許なしで乗れますか?
A. 原則として免許は不要ですが、車両登録(ナンバープレート取得)、強制保険加入、ヘルメット着用は必須です。16歳以上であることも条件です。地域や車両による運用差もあるため、購入時に販売店で確認してください。

Q. 友人やパートナー名義のバイクに乗っても大丈夫ですか?
A. 走行自体が即違反ではありませんが、事故時に保険が適用されない可能性や、書類確認時にトラブルになるリスクがあります。所有者からの委任状(giấy ủy quyền)を携帯するか、自分の名義に変更するのが安全です。

おわりに

免許の切り替え自体は、意外とシンプルだ。書類を揃えて窓口に出して5営業日。費用も約800円。日本で免許の更新に行くのとそう変わらない手軽さではある。

ただ、「普通免許だけじゃバイクに乗れない」とか、「AT限定は切り替え不可」とか、住んでから初めて知る落とし穴がある。渡航前にこの記事を読んでいる人は、日本にいるうちにAT限定解除や二輪免許の取得を検討しておくと、ベトナムでの選択肢がぐっと広がる。

ベトナムの移動手段を自分の手で確保できると、生活がまったく変わる。Grabに頼り切りの日々から、路地裏のローカル食堂にふらっと寄れる日々へ。その第一歩が、この免許の話だ。

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編集者

ベトナムに魅せられた東京出身の経営者。数字よりも人の営みに惹かれ、現地のリアルを言葉で伝えている。

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