ベトナム米はまずい?くさい?在住ベトナム人が理由と炊き方を解説

2026.03.13

「ベトナム米って、まずいんでしょ?」「炊いたら、なんだか臭かった」──日本のスーパーでベトナム産のお米を見かけるようになってから、こんな声をよく目にするようになりました。

こんにちは、ハノイ在住ライターのMoonです。ベトナムで生まれ育ち、毎日ベトナムのお米を食べてきた私にとって、この評判は正直すこし悔しいものです。だって、私たちのお米には「世界一おいしいお米」に3度も選ばれた品種があるのですから。

実は「ベトナム米はまずい」という評判の多くは、品種の取り違え炊き方のちょっとしたズレから生まれた誤解です。逆に言えば、この2つさえ分かれば、ベトナム米はちゃんとおいしく食べられます。この記事では、在住ベトナム人の私が「まずい・くさいの正体」と「おいしく炊くコツ」を、本音で解説します。

「ベトナム米はまずい」は本当?まず世界一の称号から

世界一美味しいお米に選ばれたST25

結論から言うと、「ベトナム米=まずい」は半分本当で、半分は誤解です。

まずは誤解の部分から。ベトナムのお米「ST25(エスティー・トゥエンティーファイブ)」という品種は、アメリカの専門機関が毎年開く「World’s Best Rice(世界一のお米コンテスト)」で、2019年・2023年・2025年と3度も世界一に輝いています。開発したのは、南部メコンデルタのソクチャン省にいるホー・クアン・クア氏という農業技師。30年かけて品種改良を重ねた、ベトナムの誇りのお米です。

このST25、炊くと香り米(こうりまい=炊いたときにほのかな香りが立つお米)特有のパンダンリーフのような香りがして、粒は細長いのにふっくら。冷めても固くなりにくいのが特徴です。「パサパサで臭い」という”まずいベトナム米”のイメージとは、むしろ正反対なんです。

では、なぜ「まずい・くさい」と言われてしまうのか。ここに、誤解のもう半分のタネがあります。

「まずい」の正体①|そもそも食べている品種が違う

日本米とベトナム産ST25米の比較。丸みのある日本米と、細長く香り高いベトナム最高級米ST25。それぞれの特徴が一目でわかる対比画像です。

ポイントは、ひとくちに「ベトナム米」と言っても、中身がまったく別物だということです。お米は大きく2つの系統に分かれます。

ひとつがジャポニカ米──日本でおなじみの、丸くて粘りがあり、冷めても甘みが残る短粒種(たんりゅうしゅ=粒が短く丸いお米)。もうひとつがインディカ米──細長くて、炊くとパラパラ、粘りが少ない長粒種(ちょうりゅうしゅ=粒が細長いお米)。日本では「タイ米」と言えばピンとくる方も多いはずです。

ベトナムで昔から主食として食べられてきたのは、後者のインディカ米のほうです。チャーハンやヌクマム(魚醤)をかけたごはんには最高に合うのですが、これを日本のコシヒカリと同じ感覚で、白いごはん単体で食べると「甘くない」「パサつく」と感じてしまいます。これが「まずい」の正体の半分。料理が下手なわけでも品質が悪いわけでもなく、そもそも”用途が違うお米”を日本式に食べているだけなんですね。

そしてもう一点、見落とされがちな事実があります。いま日本のスーパーや業務スーパーに並んでいる「ベトナムのお米」の多くは、実はジャポニカ米だということです。米不足をきっかけに、ベトナムから日本向けに輸出されるようになった、日本人の口に合う品種です。「ベトナム米=細長いパサパサのタイ米みたいなもの」という思い込みで判断すると、ここでもイメージとのズレが生まれてしまいます。

「くさい」の正体②|炊き方のミスマッチ

「ベトナム米はくさい」という声についても、現地から正直にお話しします。

確かに、慣れない方が「ぬか臭い」「独特のにおいがする」と感じることはあります。ただ、その多くはお米そのものの欠陥ではなく、炊き方のミスマッチ(合っていないこと)から来ています。

長粒のインディカ米を、日本のお米と同じ感覚で力を入れて何度も研ぎ、たっぷりの水に長時間つけてから炊くと、お米が水を吸いすぎてベチャッと仕上がります。水分過多で煮崩れたインディカ米は、本来は気にならない程度のぬかの香りが強調されてしまい、これが「くさい」と感じる大きな原因になります。

もうひとつは、お米の鮮度です。海外から輸入されて時間が経ったお米(古米)は、どの国のお米であってもにおいが出やすくなります。これはベトナム米に限った話ではありません。

正直に言うと、日本の方が最初に「におう」と感じるのは自然なことだと思います。私のまわりでも、来たばかりの頃はそう言っていた人が、しばらくすると「これはこれで良い香りだよね」と言っているのをよく聞いてきました。

逆に言えば、研ぎすぎず、水加減を調整して炊けば、「くさい」と感じる場面はぐっと減ります。次の章で、その具体的なコツをお伝えします。

在住者が教える、ベトナム米をうまく炊くコツ

ベトナム産ST25米の炊きたてご飯 もちもちで香り高い高級米

ベトナムのお米(長粒米)を日本の炊飯器でおいしく炊くには、いくつかコツがあります。私たちが普段やっている方法を紹介します。

① 研ぎは”やさしく”が基本: ベトナムでは、お米を研ぐことを「お米を丸める(vo cơm、ヴォーコム)」と言います。強くこすらず、水の中で軽く混ぜるように2〜3回さっと洗うだけで十分です。日本米のようにギュッギュッと研ぐと、かえって割れて食感が悪くなります。

② 水は少し多め: 目安は米1に対して水1.1〜1.2程度。お米によってはもう少し多めでも大丈夫です。

③ 浸水は短めに: 日本米のように30分以上つけ込む必要はありません。インディカ米なら浸水なし〜15分ほどで十分。長くつけすぎるとベチャッとした仕上がりになります。

④ 炊き上がったら蒸気を飛ばす: 炊き上がったら一度ふたを開けて軽くほぐし、余分な蒸気を飛ばすと、ぱらっと軽い食感に仕上がります。

ちなみに、世界一に選ばれたST25のようなジャポニカ寄りの香り米は、ほぼ日本米と同じ感覚(米1:水1.1)で炊けます。「ベトナム米は炊くのが難しそう」と身構えなくて大丈夫です。

ベトナム米と日本米の味・食感の違い|”欠点”は活かせる

ベトナム米の特徴を「日本米と違う=欠点」と捉えると、もったいないです。私たちベトナム人は、その特徴をちゃんと活かして食べています。

甘みは控えめ、後味はあっさり。 だから白いごはん単体ではなく、味の濃いおかずと合わせるのがベトナム流です。魚の煮付け、豚の角煮、ヌクマム(魚醤)を少したらしたごはん──ごはんがあっさりしているぶん、おかずの味が引き立ちます。

冷めるとぱらっとする。 これはチャーハンにすると最高の長所になります。ベトナムでは冷めたごはんをチャーハン(cơm rang)にするのが定番で、ベチャつかずパラパラに仕上がるのは、むしろ日本米にはない強みです。カレーやガパオのような、汁気のある料理ともよく合います。

「日本のお米と同じように食べよう」とするとギャップを感じますが、“ベトナム米に合った食べ方”に切り替えるだけで、評価はがらりと変わります。

ベトナム米は安全?農薬や品質が心配な人へ

「安いけれど、農薬や品質は大丈夫?」という不安もよく聞きます。

まず、日本のスーパーで正規に販売されているお米は、ベトナム産であっても日本の食品衛生基準(残留農薬などの検査)をクリアしたものだけが輸入・流通しています。「外国産だから検査されていない」ということはありません。

また、世界一に選ばれたST25のような高級品種は、エビの養殖池で育てる無農薬栽培など、品質管理にこだわって作られているものもあります。「ベトナム米=安かろう悪かろう」というイメージは、現地の実情とは少し違います。

もちろん、価格帯によって品質に幅があるのはどの国のお米でも同じです。気になる場合は、品種名(ST25など)や原産地表示がはっきり書かれた商品を選ぶと安心です。

まとめ|結局、ベトナム米は「買い」?在住者の結論

最後に、在住ベトナム人としての結論をお伝えします。

ベトナム米は、特徴さえ分かればちゃんとおいしい──これが正直な答えです。「まずい・くさい」と言われる多くは、①インディカ米とジャポニカ米の取り違え、②日本式の炊き方とのミスマッチ、この2つから来る誤解でした。

研ぎすぎず、水加減を少し調整して炊く。白ごはん単体ではなく、味の濃いおかずやチャーハンで楽しむ。たったこれだけで、ベトナム米はぐっとおいしくなります。米価が気になるいま、選択肢のひとつとして十分「買い」だと、私は思います。

そして、もし興味がわいたら、ぜひ一度世界一に輝いたST25を試してみてください。「ベトナム米まずい」のイメージが、きっと気持ちよく裏切られるはずです。

もっと知りたい人へ|ベトナムの「お米の世界」

ベトナムのお米は、白いごはんになるだけではありません。暮らしの中で、いろんな形に姿を変えています。

世界一の品種ST25と、地方の名米。 北部のディエンビエン米やハイハウ米など、地域ごとに自慢のお米があります。香り米(gạo thơm)と普通米(gạo tẻ)を使い分けるのも、ベトナムらしい文化です。

もち米(gạo nếp)の文化。 ベトナムではもち米を使った「ソイ(xôi=おこわのような料理)」が朝ごはんの定番。緑豆やココナッツ、鮮やかな赤色のソイ・ガックなど、種類も豊富です。

お米から生まれる麺。 ベトナムを代表するフォーやブンは、どちらもお米を原料にした米粉麺です。お米の国だからこその食文化です。

お米のお菓子・伝統料理。 旧正月テトに欠かせないバインチュン(ちまき)や、ベトナムのお菓子・チェーにも、お米やもち米が活躍しています。

ベトナム料理をもっと深く知りたいときは、まず「お米」に注目してみると、その国らしさがぐっと見えてきます。

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ライター

日本での生活経験あり。リンランを生活圏に、文化背景の翻訳と取材サポートを担当。

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