ベトナムのお菓子は、緑豆・ココナッツ・もち米といった身近な食材から作られる素朴な甘味です。日本の和菓子やケーキとはまた違った世界が広がっていて、初めて食べる人には「不思議だけど面白い」と感じてもらえるものが多くあります。
先にまとめると、ベトナムのお菓子は「緑豆・ココナッツ・もち米」を使った素朴な甘味が中心です。伝統菓子はテトや中秋節といった行事と深く結びついており、スーパーではTipoやチョコパイのような現代的なお菓子も広く親しまれています。
この記事では、ベトナム人ライターの視点から、ベトナムのお菓子の特徴、代表的なお菓子10選、よく使われる材料、行事との結びつき、そして現地での買い方までを紹介します。
ベトナムのお菓子とは?日本のお菓子との違い
ベトナムのお菓子は、大きく分けて2つのタイプがあります。
ひとつは、スーパーやコンビニで買えるスナック系。ココナッツキャンディーやビスケット、ウエハースなど、パッケージに入った現代的なお菓子です。
もうひとつは、もち米・緑豆・ココナッツなどを使って作る伝統的なお菓子。こちらは単なるおやつではなく、テト(旧正月)や結婚式など特別な場面と結びついているものが多くあります。
日本のお菓子との違いを整理すると、こんな感じです。
材料の違い。 ベトナムでは緑豆・ココナッツ・ピーナッツ・もち米が中心。日本の和菓子はあんこ(小豆)・もち粉・砂糖、洋菓子はバター・クリーム・チョコレートが基本です。
食感の違い。 ベトナムのお菓子はもち米ベースのものが多く、やわらかくて粘りのある食感が特徴。日本の和菓子は繊細さと見た目の美しさが重視されます。
甘さの違い。 ベトナムのお菓子は素材そのものの風味がしっかり感じられる、わりとはっきりした甘さ。日本のお菓子は甘さ控えめで繊細なバランスが好まれます。
楽しみ方の違い。 日本では和菓子を抹茶と一緒に、落ち着いた雰囲気でいただくことが多い。ベトナムでは市場で買ってきて友人とおしゃべりしながら食べたり、お茶のお供にしたり、もっと気軽な場面で楽しまれています。
ベトナムの「バイン(bánh)」の世界が広すぎる
ベトナムのお菓子を知るうえで欠かせないのが「バイン(bánh)」という言葉です。
日本語の「お菓子」は甘いものを指すことがほとんどですが、ベトナム語の「バイン」はもっと広い意味を持っています。粉や米、すりつぶした材料から作られ、一定の形に整えた食べ物はだいたい「バイン」と呼ばれます。
つまり、甘いデザートの**バイン・ダウサイン(緑豆菓子)も、食事系のバイン・クオン(蒸し米粉クレープ)**も、どちらも「バイン」。この幅広さに、多くの日本人は最初驚きます。
お菓子に限って分類すると、大きく3つに分けられます。
伝統的な甘いお菓子。 バイン・ダウサイン、バイン・コム、バイン・デオ、バイン・インなど。緑豆・砂糖・もち粉・ココナッツが基本材料で、やさしい甘さが特徴です。
もち米・米粉のお菓子。 バイン・ザイ、バイン・ネップ、バイン・チュンなど。行事や祝祭のときに登場するものが多く、食べ物としてだけでなく文化的な意味も持っています。
ふわふわ・もちもち系。 バイン・ボー(蜂の巣のような断面が特徴の蒸し菓子)など。米粉・砂糖・ココナッツミルクで作られ、軽い食感と独特の見た目が面白いお菓子です。
ベトナムで有名なお菓子10選
伝統的なお菓子
1. バイン・ダウサイン(bánh đậu xanh)── 緑豆のお菓子 ★ 初心者向け。和菓子が好きな人に特におすすめ
おそらくベトナムで最も有名な伝統菓子。緑豆をすりつぶし、砂糖と植物油を混ぜて固めた小さな四角いお菓子です。口に入れるとほろっと溶けて、緑豆のやさしい香りが広がります。温かいお茶と一緒に食べるのが定番で、日本の和菓子をお茶と楽しむ感覚に近いかもしれません。スーパーで箱入りのものが簡単に手に入り、お土産としても人気です。
2. バイン・コム(bánh cốm)── ハノイの伝統菓子 ★ 甘さ控えめで日本人に合いやすい
ハノイを代表するお菓子。外側は「コム」と呼ばれる若いもち米から作られ、中には甘い緑豆あんが入っています。淡い緑色とコム特有のやさしい香りが特徴。結婚の儀式や伝統的な婚約の場でも使われる、文化的にも大切なお菓子です。
3. 月餅(bánh trung thu) ★ 中秋節の時期にベトナムに行くなら必食
中秋節に欠かせないお菓子。中身は緑豆・蓮の実・ミックスナッツ・塩漬け卵黄など種類が豊富です。食べるだけでなく、家族や友人・職場の同僚への贈り物としても使われるため、中秋節の時期にはお店の前に美しい箱入りの月餅がずらりと並びます。
4. バイン・ピア(bánh pía) ★ 上級者向け。ドリアン好きならぜひ挑戦を
南部ベトナム、特にソクチャンの名物。薄い層が何重にも重なった生地の中に、緑豆あん・ドリアン・塩漬け卵が入っています。甘さと塩味とドリアンの香りが組み合わさった味は、日本人にとってはかなりの「未知の体験」。好き嫌いが分かれますが、ハマる人は深くハマるお菓子です。
5. バイン・ダーロン(bánh da lợn) ★ 見た目のインパクト重視ならこれ
緑色と黄色の層が交互に重なった蒸し菓子。タピオカ粉・緑豆・ココナッツミルクから作られ、もちっとした食感とココナッツの風味が特徴です。見た目のインパクトがあるので、写真映えするお菓子としても人気。
現代の定番お菓子
6. ココナッツキャンディー(kẹo dừa) ★ お土産の定番。ばらまき用にも便利
ココナッツの産地として有名なベンチェ省の名物。ココナッツミルク・砂糖・麦芽糖から作られる濃厚な甘さのキャンディーです。薄い紙で包まれていて、開けるとココナッツの香りがふわっと広がります。
7. チョコパイ(Choco Pie) ★ ベトナム人の子ども時代の味を追体験できる
柔らかいスポンジの間にマシュマロが挟まれ、外側をチョコレートでコーティングしたお菓子。韓国のOrionブランドがベトナムで展開しており、多くのベトナム人にとって子ども時代の定番おやつです。
8. ティポ(Tipo) ★ スーパーで一番見つけやすい。迷ったらまずこれ
サクサクしたビスケットの中に甘いクリームが入ったお菓子。学校の近くのお店で友達と分けて食べた、という思い出を持つベトナム人は多く、今でもスーパーのどこでも見かけます。
9. ピーナッツキャンディー(kẹo lạc) ★ シンプルだけど一番驚かれることが多いお菓子
ローストしたピーナッツを砂糖と麦芽糖で固めたシンプルなお菓子。素朴だけど、砂糖の甘さとピーナッツの香ばしさのバランスが絶妙で、食べだすと止まらなくなります。
10. ライスクラッカー(bánh gạo) ★ 日本のおせんべいとの食べ比べが面白い
軽くてサクサクした食感のお米を使ったお菓子。日本のおせんべいに似ていますが、味はやや濃いめで、ベトナム人の好みに合わせた味付けになっています。
ベトナムのお菓子によく使われる4つの材料
ベトナムのお菓子を食べ比べると、ある共通点に気づきます。同じ材料が何度も登場するのです。
緑豆(đậu xanh)
ベトナムのお菓子で最もよく使われる材料。バイン・ダウサイン、バイン・ピア、バイン・コム、月餅など、代表的なお菓子のほとんどに入っています。ほのかに甘く、やさしい風味。すりつぶして砂糖やココナッツミルクと合わせると、なめらかな餡になります。チェーにもよく使われる万能食材です。
ココナッツ(dừa)
特に南部で多用される材料。ベンチェ省はココナッツの産地として有名で、ココナッツミルク・果肉・削りココナッツなど、さまざまな形でお菓子に使われます。ココナッツキャンディーやバイン・ダーロンなど、香りがはっきり感じられるお菓子が多く、日本の伝統的なお菓子にはあまりない風味なので印象に残りやすいです。
もち米(gạo nếp)
ベトナム食文化を象徴する材料。おこわ(xôi)だけでなく、バイン・コム、バイン・デオ、バイン・ダーロンなど多くのお菓子に使われます。調理するとやわらかくもちもちした食感になり、日本人には「日本の餅に似ているけど、味の組み合わせが違って面白い」と感じてもらえることが多いです。
ピーナッツ(đậu phộng)
ピーナッツキャンディーをはじめ、さまざまなお菓子に香ばしさとカリッとした食感を加える材料。ベトナムの農村で古くから栽培されてきた作物で、お菓子だけでなくサラダ(gỏi)や麺料理にも使われる身近な食材です。
これらの材料に共通しているのは、どれもベトナムの農業や日常生活と深く結びついていること。熱帯気候のベトナムで比較的育てやすく、何世代にもわたって栽培されてきた作物がそのままお菓子の材料になっています。
ベトナムの行事とお菓子の深い関係
ベトナムでは、お菓子は単なるおやつではなく、大切な行事と結びついた存在です。
テト(旧正月)
お菓子が最も多く登場する時期。テトの期間には、多くの家庭でバイン・チュン(北部)やバイン・テット(南部)が用意されます。もち米・緑豆・豚肉を葉で包んで長時間煮て作る伝統料理で、家族の団らんを象徴する特別な存在です。
来客をもてなすために、テーブルの上にはお菓子・スイカの種・砂糖菓子・ドライフルーツなどが並べられ、訪ねてきた友人や親戚とゆっくり会話を楽しみながら食べます。
中秋節
月餅が主役の行事。丸形や四角形の月餅の中には、緑豆・蓮の実・ミックスナッツ・塩漬け卵などさまざまな餡が入っています。食べるだけでなく、家族・友人・職場の同僚に贈る贈り物としても使われるため、お菓子売り場は華やかな箱入り月餅で一気に賑やかになります。
結婚式・結納
バイン・コムやバイン・フーテー(夫婦餅)などが、花婿の家族が花嫁の家族を訪れるときの贈り物として準備されます。二つの家族の結びつきや幸せな結婚生活への願いを象徴する役割を持っており、お菓子が人と人とのつながりを表す文化がここにあります。
日本人がベトナムのお菓子で驚くポイント
「甘い!」── 甘さの基準が違う
ベトナムのお菓子の中には、日本人にとって「少し甘すぎる」と感じるものがあります。ココナッツキャンディーは代表例で、ココナッツミルクの甘さがかなりしっかりしています。ただし、温かいお茶と一緒に食べるとちょうどよいバランスになるという声も多いです。
「ドリアン!?」── バイン・ピアの衝撃
バイン・ピアの中身にドリアンが入っていることに驚く日本人は多いです。甘さ・塩味・ドリアンの強い香りが一体になった味は、日本のお菓子にはまずない組み合わせ。好き嫌いが大きく分かれますが、「この独特さが好き」という人も確実にいます。
「思ったより美味しい!」── バイン・コム、バイン・ダウサイン
逆に、「思っていたより美味しい」と驚かれるお菓子も。バイン・コムは甘さが控えめでやさしい味なので「和菓子に似ている」と言う人もいます。バイン・ダウサインは見た目から「硬そう」と思われがちですが、口に入れるとほろっと溶ける食感に驚く人が多いです。
ベトナムのお菓子はどこで買える?主要ブランドも紹介
買える場所
スーパー、コンビニ、伝統的な市場、家の近くの小さな雑貨店など、さまざまな場所で買えます。ハノイやホーチミンの大都市では、ベトナム国内のお菓子だけでなく世界各国のお菓子も棚に並んでいるので、旅行者でも気軽に試せます。
伝統的な市場では、時々手作りのお菓子や昔ながらのお菓子が売られていて、パッケージ品とは少し違った味わいが楽しめます。
知っておきたいブランド
Kinh Đô(キンドー) ── ベトナムで最も有名なお菓子ブランド。月餅・ビスケット・スナック菓子など幅広く展開。
Bibica(ビビカ) ── 歴史あるお菓子メーカー。キャンディー・チョコレート・ケーキなど種類豊富。
Orion ── チョコパイで有名。多くのベトナム人にとって子ども時代の味。
Tipo ── クリーム入りサクサクビスケット。スーパーでも雑貨店でもどこにでもある。
Hoa An(ホアアン) ── 緑豆菓子で知られるブランド。お土産にもよく選ばれます。
よくある質問(FAQ)
Q. ベトナムのお菓子は日本のカルディで買える? 一部のベトナム菓子はカルディや輸入食品店で取り扱いがあります。ココナッツキャンディーやライスペーパー系のお菓子は比較的見つけやすいです。
Q. ベトナムのお菓子を日本に持ち込めない場合はある? 基本的にパッケージされたお菓子は持ち込み可能ですが、肉入りのもの(バイン・チュンなど)は検疫の対象になる場合があります。果物を使ったお菓子も種類によっては制限があるので、最新ルールは日本到着時の検疫案内を確認してください。
Q. 緑豆のお菓子のカロリーはどのくらい? バイン・ダウサインは商品によって異なりますが、1個(約30〜40g)あたり100〜150kcal前後になることが多いです。緑豆・砂糖・植物油が主原料なので、見た目の素朴さに比べてカロリーはそこそこあります。
Q. ベトナムのお菓子の賞味期限は? パッケージ品は数ヶ月〜1年程度のものが多いですが、伝統的な手作りのお菓子は数日〜1週間程度と短めです。お土産用に買う場合は、パッケージに記載の賞味期限を確認してください。
Q. お土産にはどのお菓子がおすすめ? 万人受けするのはバイン・ダウサイン(緑豆菓子)とココナッツキャンディー。個包装のものを選べばばらまき土産にも使えます。詳しくはベトナムのお土産ガイドもどうぞ。
Q. ベトナムのお菓子は通販で買える? Amazon や楽天など日本のECサイトでも一部のベトナム菓子が購入できます。Tipo、ココナッツキャンディー、ライスペーパーチップスなどが比較的流通しています。