ベトナムの平均年収は約60万円。でも、その数字だけ見ても何もわからない

2026.02.24
暮らし

住んでいると、よくこう聞かれる。

「ベトナムって年収いくらなの?」

答えは簡単だ。全国平均で月収およそ830万ドン(約49,000円)、年収に換算すると約1億ドン弱、日本円で約60万円。2025年のベトナム統計総局(GSO)のデータに基づく数字である。

日本の平均年収が約460万円だから、ざっくり7〜8倍の差。「やっぱりベトナムは安いんだね」で話が終わる。

——終わらない。

住んでいると、この数字がいかに「見えている世界の一部」でしかないかが、じわじわとわかってくる。月収5万円のはずの同僚が新車のバイクを現金で買い、年収60万円の国でiPhone 16が街中にあふれ(0%分割払いや並行輸入品・中古の活用が主流とはいえ、それでも多い)、カフェの店員が2軒目のアパートの家賃収入について話している。

この記事では、統計上の数字を押さえたうえで、在住者が肌で感じる「数字の裏側」を掘り下げていく。旅行者が物価感覚をつかむためにも、移住を考える人が生活設計するためにも、「平均年収」の正しい読み方を知っておいて損はない。


ベトナムの平均年収・月収【2026年最新データ】

まず、公式統計を整理しておこう。

全国平均

ベトナム統計総局(GSO)によると、2025年の給与所得者(就業者)の平均月収約830万〜870万ドン(約49,000〜52,000円)まで上昇している。年収に換算すると約1億〜1億400万ドン(約60万〜62万円)になる。

注意してほしいのは、これが「国民全体の平均所得」ではなく、あくまで給与をもらっている労働者の平均だということ。自営業者や農家、後述するインフォーマル経済(非公式経済)で生計を立てている人の収入は含まれていない。「ベトナム人はみんな月830万ドン稼いでいる」わけではない。

※ベトナムでは給与の話は「月収」が基本。年収を聞かれてもピンとこないベトナム人は多い。ボーナスは年1回(テト前)に1ヶ月分が一般的なので、実質的な年収は「月収×13ヶ月」で計算するのが現地の感覚だ。

※本記事の日本円換算は2026年2月時点のレート、1円≒168VNDで計算している。

都市部と農村部の差

ベトナムの給与格差を語るとき、「都市か地方か」は最大の変数になる。

エリア 平均月収(目安) 日本円換算
ホーチミン市 1,000万〜1,100万ドン 約60,000〜65,000円
ハノイ市 950万〜1,050万ドン 約57,000〜63,000円
ダナン・ビンズオン等 800万〜900万ドン 約48,000〜54,000円
地方農村部 500万〜650万ドン 約30,000〜39,000円

都市部と農村部で約1.5〜2倍の開きがある。ただし、都市部は家賃や生活費も高いので、手元に残るお金は思ったほど差がつかない——というのが在住者の実感だ。

過去10年の推移

ベトナムの平均月収は、過去10年で約3倍に跳ね上がった。

平均月収(概算) 日本円換算
2014年 約280万ドン 約17,000円
2018年 約510万ドン 約30,000円
2022年 約660万ドン 約39,000円
2024年 約770万ドン 約46,000円
2025年 約830〜870万ドン 約49,000〜52,000円

2024年のGDP成長率は7.09%。政府は2025年の目標を当初6.5〜7.0%としていたが、途中で8%に上方修正するほどの好調ぶりだ。給与の上昇は、この経済成長と最低賃金の段階的引き上げ(2022年と2024年にそれぞれ約6%ずつ)が直接の原動力になっている。


業種・職種で「別の国」になる

「平均」という言葉にだまされてはいけない。ベトナムでは業種と職種によって、同じ国の同じ街に住んでいても、見えている景色がまったく違う。

業種別の月収目安

業種 月収レンジ 日本円換算
IT・ソフトウェア開発 1,500万〜4,000万ドン 約89,000〜238,000円
金融・銀行 1,200万〜3,000万ドン 約71,000〜179,000円
不動産 1,000万〜3,500万ドン(歩合含む) 約60,000〜208,000円
製造業(工場ワーカー) 600万〜900万ドン 約36,000〜54,000円
飲食・サービス業 500万〜800万ドン 約30,000〜48,000円
農業 350万〜550万ドン 約21,000〜33,000円

特にIT分野の給与上昇は凄まじい。ハノイやホーチミンで3〜5年の経験があるエンジニアなら月収2,000万ドン(約12万円)は珍しくない。シニアレベルやマネージャーになると月収5,000万ドン(約30万円)を超える人もいて、これは東京のエンジニアと比べても見劣りしない水準だ。

外資系・日系企業に勤めると「別世界」

ベトナム国内の平均年収の話をしているとき、忘れてはいけないのが外資系企業で働くベトナム人の存在だ。

日系企業の管理職クラスで月収2,000〜4,000ドル(約29万〜58万円)、欧米系のマネージャー職なら月収5,000ドル(約72万円)を超えるケースもある。年収にすれば700万〜1,000万円相当。日本の平均年収を軽く超えてくる。

住んでいると、ホーチミン7区のフーミンフン地区で運転手付きの車に乗り、子どもをインターナショナルスクールに通わせているベトナム人家族を普通に見かける。「ベトナム人=年収50万円」という数字のイメージとの落差に、最初は少し驚く。


統計に出てこない「本当の収入」の話

ここからが、在住者だから書ける話になる。

ベトナムで「月収いくら?」と聞いて返ってくる答えは、ほぼ確実にその人の収入の一部でしかない。これは隠しているわけではなく(隠している場合もあるが)、ベトナム社会の収入構造が日本とは根本的に違うからだ。

副業・ダブルワークが「普通」

ベトナムでは、本業ひとつだけで生活している人のほうが珍しいくらいだ。会社員をしながら週末にGrabのドライバーをやる。本業の経理をこなしつつ、夜はオンラインで英語を教える。工場勤務の傍ら、自宅でバインミーを作って売る。こういったダブルワーク、トリプルワークは日常の風景であり、本業の月収にプラスで200万〜500万ドン(約12,000〜30,000円)ほど上乗せしている人はざらにいる。

さらに、FacebookやZaloを使った個人売買、未登録のオンラインショップ、現金払いの個人サービスなど、インフォーマル経済(非公式経済)がベトナムでは非常に大きい。こうした収入は税務申告にも統計にも反映されない。GSOの平均月収が「ベトナム社会の全体像」を映していない最大の理由がここにある。

家族ぐるみの「見えない経済圏」

ベトナム社会は家族単位で経済を回している。実家が地方で田んぼを持っていれば、コメの収穫分は食費から消える。親がハノイで小さな雑貨店をやっていれば、子どもの生活費の一部はそこから出る。兄弟が海外(日本や韓国)で働いていて、毎月仕送りを入れていることも多い。

特に海外からの送金(ベトナム語で「キエウホイ」)の影響は大きい。ベトナムは世界有数の海外送金受取国で、日本・韓国・アメリカ・オーストラリアなどから毎年数十億ドル規模の資金が家族のもとに届いている。この送金は統計上の「平均月収」にはほぼ反映されないが、受け取る家庭の購買力を大きく押し上げている。

統計上の「個人の月収」には、こうした家族の互助ネットワークも海外送金もカウントされない。でも、この仕組みがなければ月収500万ドン(約3万円)で都市部に住むのは相当きつい。逆に言えば、この仕組みがあるから「年収60万円の国」が回っている。

不動産と金(ゴールド)という「もうひとつの財布」

ベトナム人の資産形成で見逃せないのが、不動産と金だ。

ベトナムでは銀行預金への信頼がまだ絶対的ではなく、「お金が貯まったらまず土地を買う」という発想が根強い。地方出身の友人で月収700万ドン(約42,000円)のオフィスワーカーが、故郷に2区画の土地を持っていたりする。ただしこれは、10〜15年前の地価が安い時期に親と一緒に買ったか、親から相続したケースがほとんどだ。今の給与水準でゼロから土地を買うのは、同じ世代でもかなり難しくなっている。

実際、2025〜2026年現在、ハノイやホーチミンの住宅価格は年収の25〜30倍に達しており、1980〜90年代生まれが早期に手に入れた不動産と、2000年代以降の世代が直面している現実には大きな断絶がある。「土地を持っている=今の給料で買えた」わけではない、という点は重要だ。

金(ゴールド)も同じだ。テトのお年玉や臨時収入は金に替えて保管する文化があり、特に年配の世代は自宅に金を持っている。これらは「年収」には入らないが、彼らの経済力の重要な一部を構成している。ただし、不動産も金も「持っているが簡単には現金化できない」ケースも多く、流動性の低い資産であることは知っておいたほうがいい。


「年収60万円」で暮らせる理由を分解する

ハノイの家賃の詳細はハノイの家賃相場ガイドで解説しています。

日本人が「年収60万円」と聞くと、生活が成り立つのか不安になる。でも実際に住んでいると、この金額でも質素ながらちゃんと暮らしている人は多い。そのカラクリを、具体的な日常コストで分解してみよう。

ハノイ在住・単身ベトナム人の月間支出モデル(ローカル水準)

項目 月額(VND) 日本円換算
家賃(1Kアパート、市中心から少し離れたエリア) 300万〜400万ドン 約18,000〜24,000円
食費(ローカル食堂中心・自炊併用) 300万〜450万ドン 約18,000〜27,000円
交通費(バイクのガソリン代) 30万〜50万ドン 約1,800〜3,000円
通信費(スマホ+WiFi) 20万〜30万ドン 約1,200〜1,800円
日用品・衣服 30万〜50万ドン 約1,800〜3,000円
交際費・娯楽 50万〜100万ドン 約3,000〜6,000円
合計 730万〜1,080万ドン 約43,000〜64,000円

合計を見てほしい。支出の下限730万ドンでも平均月収830万ドンの大半が消え、上限1,080万ドンなら完全に赤字だ。しかもこの表には仕送りも冠婚葬祭も入っていない。平均月収=「ギリギリ」であって「余裕」ではない。前のセクションで書いた副業やインフォーマル経済、家族の支え合いが「あったらいいね」ではなく「なければ回らない」理由が、この数字に集約されている。この表は「最低限の生活費」だ。

実際にはこの上に、実家への仕送り(100万〜200万ドン/月)、冠婚葬祭の祝儀・香典(結婚式なら1回30万〜100万ドン、月に2〜3件重なることもある)、医療費(公的保険でカバーしきれない分)がのしかかる。子どもがいる家庭なら、都市部の英語塾や習い事で月100万〜300万ドン(約6,000〜18,000円)がさらに加わる。「月収830万ドンで余裕がある」とは、なかなか言いにくい。

2026年現在、ハノイの朝のフォーは60,000〜70,000ドン(約360〜420円)が主流になってきた。数年前は35,000ドンで食べられた店も値上がりしている。昼のコムビンザン(おかず乗せご飯)も中心部なら60,000〜80,000ドン(約360〜480円)。ローカル食堂中心の生活でも、1日の食費は12万〜17万ドン(約700〜1,000円)を見ておくのが現実的だ。

交通費は、バイク社会のベトナムでは笑うほど安い。ガソリン満タンで10万ドン(約600円)、これで1週間以上走れる。東京の1日分の交通費で、ハノイなら1ヶ月の移動が賄える計算だ。

逆にきついのは家賃だ。ハノイやホーチミンの都市部では家賃が年々上昇しており、月収の40〜50%を家賃に持っていかれるケースも珍しくない。この比率は東京と大差ない。「ベトナムは安い」という印象は、家賃に関してはそろそろ修正が必要かもしれない。

ベトナムの物価について、もっと細かく知りたい人はベトナムの物価は日本の何分の1?住んでみたら「安い」の正体が見えてきたを読んでみてほしい。


最低賃金の仕組み —— 4つの「地域区分」

ベトナムの最低賃金は全国一律ではなく、4つの地域区分に分かれている。2024年7月の改定後の数値は以下の通りだ。

地域 月額最低賃金 日本円換算 主な対象エリア
第1地域 496万ドン 約29,500円 ハノイ、ホーチミン中心部
第2地域 441万ドン 約26,300円 ダナン、ハイフォン等
第3地域 386万ドン 約23,000円 地方都市
第4地域 345万ドン 約20,500円 農村部

第1地域の496万ドン(約29,500円)は、東京の最低賃金から考えると信じられない低さだ。しかし前述の通り、ローカル水準の食事や交通費は日本よりはるかに安いため、この金額にも一定の合理性がある。ただし、スーパーの輸入食品や清潔なチェーン店を利用すると価格差は縮まり、「何でも安い」わけではない。

ただし、最低賃金で「楽に暮らせる」とは口が裂けても言えない。家賃を払って食べて、少し残ればいいほうだ。だからこそ副業をし、家族で支え合い、少しでもいい仕事を求めて都市部に出る。ベトナムの労働市場のダイナミズムの根っこには、この「最低賃金では足りない」という現実がある。


日本人がベトナムで暮らす場合の年収感覚

生活費の全体像はベトナムの生活費ガイドもあわせてどうぞ

旅行者や移住検討者にとって気になるのは、「自分がベトナムで暮らすならいくら必要か」だろう。

ベトナムで現地採用として働く日本人の月給は、営業・事務の未経験〜3年目で1,500〜2,500ドル(約22万〜36万円)、マネージャー・専門職で2,500〜4,000ドル(約36万〜58万円)、部長クラス以上で4,000〜6,000ドル+(約58万〜87万円+)が大まかな相場だ。

日本と比べると額面は低く感じるかもしれないが、月給2,000ドル(約29万円)あれば都市部でそこそこ快適に暮らせる。ローカル食堂中心なら毎日外食しても月4万円程度、ローカルのマッサージは1時間20万ドン(約1,200円)、Grabのバイクは通常20,000〜35,000ドン(約120〜210円)。日常のコストパフォーマンスは高い。

ハノイでのGrabの使い方や料金感覚は、ハノイのグラブ(Grab)料金相場・使い方・空港移動・トラブル対策にまとめている。

ただし「日本の年収の半分で、日本以上の暮らし」というよく聞くフレーズは、半分本当で半分嘘だ。日本食レストランは東京と同じか少し安い程度、インターナショナルスクールの学費は年間200万〜400万円、日本レベルの医療も保険なしでは高い。「ベトナム水準の暮らし」と「日本水準の暮らし」では、必要な年収がまったく違う。


よくある質問(FAQ)

ベトナムの平均月収は日本円でいくら?

2026年時点で約740万ドン(約44,000円)。ただしIT・外資系では月2,000万ドン以上も珍しくなく、業種による格差が非常に大きいです。

ベトナムで日本人が働くと月収いくら?

現地採用の場合、月2,000〜4,000USD(約30〜60万円)が相場。駐在員は日本の給与+海外手当で倍近くになることも。

ベトナムの最低賃金は?

地域によって4段階に分かれており、最も高いハノイ・ホーチミン(第1地域)で月496万ドン(約30,000円)です。


給与だけでは見えない「豊かさ」の話

最後に、在住者として一番伝えたいことを書く。

ベトナムの平均年収は日本の7〜8分の1。数字だけ見れば「貧しい国」に映るかもしれない。でも住んでいると、そんな単純な話ではないことが骨身にしみる。

朝6時、道端に小さなプラスチック椅子を並べてフォーを食べている人たちには、東京の通勤電車にはない空気がある。月収500万ドンの友人が、テトに家族全員でホイアンに旅行に行く。給料日前にお金が足りなければ、友人同士で自然に貸し借りする文化がある。「足りない分は、人間関係で埋める」という発想が、この社会には根づいている。

ただし、そのベトナムも変わりつつある。特に若い世代は、急上昇する住宅価格(年収の25〜30倍)、激しい就職競争、家族からの期待と将来不安の間で、強いプレッシャーを感じている。初任給600万〜800万ドンで都市部に出てきたGen Z世代が、家族の支援なしにマイホームを持つのはほぼ不可能だ。「穏やかな国」というイメージだけでは捉えきれない緊張感が、今のベトナムにはある。

もちろん、貧困は現実に存在するし、都市と地方の格差は深刻だ。農村部で月収300万ドン台(約2万円)の世帯が、子どもの教育費に苦しんでいるのも事実。経済成長の恩恵が全員に均等に届いているわけではない。

それでも、数字の裏にある生活の仕組み、家族のネットワーク、副業文化、資産の持ち方——そこまで見て初めて、「ベトナムの年収」の話は完結する。

10年前に月収280万ドンだった平均が、今は830万ドンを超えた。10年後にはいくらになっているのか。住んでいると、その変化のスピードを自分の生活の中で肌で感じられる。それが、この国にいて一番おもしろいところだと思う。

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編集者

ベトナムに魅せられた東京出身の経営者。数字よりも人の営みに惹かれ、現地のリアルを言葉で伝えている。

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