ハノイ旧市街の歩き方|36通りの正体と、昼夜で変わるこの街のリアル

2026.02.23
街・スポット

ガイドブックを開けば、「ハノイ観光といえば旧市街散策」とだいたい書いてある。歴史ある建物を眺めて、雑貨を見て、屋台で何か食べて――それも間違っていない。

でも、ハノイに住んでいると平日の昼の旧市街には正直そんなに惹かれない。バイクが歩道を占拠し、クラクションが鳴り止まず、排気ガスの匂いが鼻をつく。観光客向けのお土産屋を覗いても、「まあ、こんなもんか」という感想になりがちだ。

ただし、金曜の夕方を過ぎると空気が変わる。 バイクが追い出され、歩行者天国になり、人で埋め尽くされる。同じ道なのに、昼と夜でまるで別の街になる。

この記事では、在住者の目線から「昼の旧市街の歩き方」と「夜の旧市街の楽しみ方」を分けて書いていきます。


そもそも「旧市街」とは何か|1000年の城下町を3分で

ハノイ旧市街は、ホアンキエム湖の北側に広がる一帯。11世紀のタンロン王朝時代から城下町として栄えた場所で、36の同業組合がそれぞれの通りを形成したことから「ハノイ36通り」とも呼ばれています。

通り名の多くは「Hàng(ハン)=お店」+商品名。たとえばHàng Bạc(銀の通り)Hàng Gai(麻の通り)Hàng Mã(紙の通り)。つまり「何を売っている通りか」がそのまま住所になっている。日本でいえば、鍛冶町や紺屋町と同じ発想です。

ただし、いま銀の通りに銀屋があるかというと、半分はアクセサリー店、半分はカフェとお土産屋に変わっている。名前だけが昔のまま残っていて、中身は静かに入れ替わっている。この「名前と現実のズレ」を知っておくと、旧市街を歩くのがちょっと面白くなります。

ちなみに「36通り」は外国人が好んで使う呼称で、ベトナム人は普通に「フォーコー(Phố cổ=旧市街)」と呼んでいます。現在の旧市街の通りは実際には36本どころか76本以上。「36」は当時の同業組合(坊)の数に由来していて、厳密に通り36本という意味ではありません。


アクセスと所要時間の目安

場所: ホアンキエム湖の北側。ノイバイ国際空港からタクシーまたはGrabで約40分。

旧市街の入口: ホアンキエム湖北端の噴水広場を北に抜けると、もうハンダオ通り=旧市街の始まりです。

所要時間の目安:

過ごし方 目安
ナイトマーケットだけ 1〜2時間
昼の散策(主要スポットのみ) 2〜3時間
昼+夜(グルメ・カフェ込み) 半日〜1日
じっくり路地裏まで 丸1日

旧市街のホテルに泊まっていれば、朝・昼・夜と時間帯を変えて何度も歩けるので、2〜3日に分けて楽しむのが一番贅沢な過ごし方です。

離れた場所から行くならGrabが一番ラクです(使い方や料金の目安は「Grabの使い方」記事にまとめました)。


旧市街の昼の歩き方|通りごとに「人格」が違う

昼の旧市街は「散策して気持ちいい街並み」ではない。生活と商売が優先の場所で、歩く側が合わせる必要がある。ただ、通りごとに売っているものも雰囲気もまるで違うので、「今どの通りにいるか」を意識するだけで面白さが変わります。

旅行者が押さえておきたい主要な通り・スポット

マーマイ通り(Mã Mây) ──旧市街の中心

旅行者にとっての旧市街の拠点。ツアーデスク、ホテル、レストラン、スパ、コンビニがこの通りとその周辺に集中しています。迷ったらまずここに戻ると復帰しやすい。87番地には修復された「マーマイの家」(入場料20,000ドン)があり、伝統的なチューブハウスの構造を見学できます。

ハンガイ通り(Hàng Gai) ──シルクと土産の通り

かつて麻(のちに絹)の取引が行われていた通り。現在はシルク製品、刺繍、お土産の店が並び、旧市街の中では比較的歩きやすい。質の良いベトナム雑貨を探しているなら、まずこの通りをチェック。

ターヒエン通り(Tạ Hiện) ──夜の主役、昼は静か

通称「ビアストリート」。夜になるとプラスチック椅子とテーブルが通りを埋め尽くし、ローカルビールで乾杯する人で溢れかえる。でも昼間は驚くほど静かな住宅街で、ほとんど人がいない。この昼夜の落差を見るだけでも旧市街の面白さが分かります。

チャーカー通り(Chả Cá) ──料理の名前がついた唯一の通り

ハノイ名物「チャーカーラーヴォン」(川魚のターメリック揚げ焼き)の名店があることから、料理の名前がそのまま通り名になった珍しい道。この通りに来たら食べない手はありません。

ハンダオ通り(Hàng Đào) ──ナイトマーケットのメインストリート

昼は衣料品の店が並ぶ普通の商店街。しかし金・土・日の夜になると歩行者天国になり、ナイトマーケットの舞台に変わります。

観光スポット

ドンスアン市場(Chợ Đồng Xuân) ──旧市街北端の巨大市場

3階建ての屋内市場。1階は靴・雑貨、2階は衣類、3階は子供服。外周にはドライフルーツやかご製品など土産物の店が並んでいます。建物内にエアコンはなく、昼間はサウナ状態。長居は厳しいので、サッと見てジューススタンドで水分補給、が現実的な回り方。

ハノイ大聖堂(聖ヨセフ大聖堂) ──旧市街のランドマーク

1886年建設のネオゴシック様式の教会。旧市街の南西端に位置し、周辺にはおしゃれなカフェが集まっています。入場無料(ミサ中は制限あり)。この辺りでエッグコーヒーを飲みながら休憩するのが在住者の定番コース。

バックマー祠(Đền Bạch Mã) ──1000年の守り神

ハンブオム通りにある、ハノイ最古級の祠。ハノイの守り神「白馬神」を祀っています。観光客は少なく、地元の人がお参りに来る静かな空間。旧市街に1000年の歴史があることを最も実感できる場所です。

タンロン水上人形劇場 ──ホアンキエム湖畔

旧市街のすぐ南、ホアンキエム湖の北東角にある劇場。ベトナム北部の伝統芸能「水上人形劇」を鑑賞できます。公演は1日数回、チケットは100,000ドン前後。旧市街散策の前後に組み込みやすい立地。


旧市街で食べるべきハノイグルメ

旧市街はハノイ北部グルメの宝庫。ここで食べられる代表的な料理を紹介します。

フォー(Phở) ──ハノイが本場

ハノイのフォーは透き通ったあっさりスープが特徴。ホーチミンのフォーとは別物と言っていい。旧市街にはフォーの専門店が点在しており、朝や昼にバイクで駆けつけるハノイ市民の行列ができる店もあります。一杯40,000〜60,000ドン(約240〜360円)。

ブンチャー(Bún chả) ──炭火焼き肉のつけ麺

米粉麺を甘酸っぱいタレにつけて食べる、ハノイ発祥の定食。オバマ元大統領がハノイで食べたことでも有名になりました。旧市街周辺に専門店が多数。昼の定番。一食50,000〜70,000ドン(約300〜420円)。

チャーカーラーヴォン(Chả cá Lã Vọng) ──魚のターメリック焼き

先述のチャーカー通りにある名物料理。白身魚をターメリックとディルで炒め焼きにし、米粉麺と一緒に食べる。ハノイでしか食べられない味。150,000〜200,000ドン(約900〜1,200円)。

エッグコーヒー(Cà phê trứng) ──ハノイ発祥の甘い一杯

卵黄とコンデンスミルクを泡立てたクリームをコーヒーの上に乗せた、ハノイ生まれの飲み物。旧市街には発祥の店「カフェ・ザン(Café Giang)」をはじめ、エッグコーヒーを出すカフェが多数。35,000〜55,000ドン(約210〜330円)。

旧市街は現金払いがまだ多いので、到着後に少額紙幣を作っておくと楽です(両替のコツは「ハノイの両替」記事にまとめました)。


旧市街を歩くコツ|在住者の4つのルール

  1. 歩道はバイクのもの 歩道を人が歩くものだと思っていると面食らう。バイクが平気で歩道を走り、駐車する。道路の横断は「立ち止まらず一定の速度で渡る」が鉄則。
  2. 迷うのが正解 旧市街は路地が入り組んでいて、Googleマップでも迷う。でも迷った先にいいカフェや食堂がある。目的地を決めすぎず、「あの角を曲がってみよう」が正解。
  3. 疲れたら上に逃げる 旧市街には屋上カフェやテラスカフェが無数にある。地上のカオスに疲れたら、3階や4階に上がって、上からバイクの海を眺めながらコーヒーを飲む。路地奥の狭い階段を上った先に開放的なテラスが広がっていたりする。この「上下の切り替え」が旧市街の構造的な強み。
  4. ドンスアン市場は朝イチか夕方 昼間はエアコンなしの室内が灼熱。朝の涼しい時間か、日が傾いた夕方に行くと体力を温存できる。

旧市街で一番ハードルが高いのは道路横断なので、初めてなら先にコツだけ掴んでおくと安心です(詳しくは「ハノイの道路横断」記事へ)


夜の旧市街|週末ナイトマーケットとターヒエン通り

金曜の夕方、18時半を過ぎるとハンダオ通りにバリケードが立ち、バイクが追い出される。19時には歩行者天国になり、20時にはピーク。ハノイ旧市街のナイトマーケットは、毎週金・土・日だけ出現する「別の街」です。

ナイトマーケットの特徴

ハンダオ通りからドンスアン市場まで約650mの一本道に、数百の屋台が並びます。ただし客の半分以上はベトナム人の家族連れやカップル。観光客専用のマーケットではなく、地元の人の「週末の夜の散歩道」に観光客が混ざる構図です。

メインストリート自体はアルコール色が薄く、酔っ払いが少ない。子連れでも安心して歩ける雰囲気は、どちらかというと日本の夏祭りの縁日に近い。

食べ歩きの目安

焼きトウモロコシ(10,000〜15,000ドン)、フルーツシェイク(20,000〜35,000ドン)、ベトナム風クレープ=バインチャンヌン(15,000〜25,000ドン)あたりが定番。食べ歩きの合計は100,000ドン(約600円)で十分に楽しめます。正直、味は「名店」ではないけれど、歩きながら食べる楽しさは味とは別の話。

買い物の注意

Tシャツや雑貨(50,000〜100,000ドン)はばらまき土産に向いている一方、「ブランド品」はコピー品、バッチャン焼きは本物の見分けがつかないので注意。値段交渉は2〜3割引きが落とし所。

ターヒエン通り(ビアストリート/ビアホイ通り)

ナイトマーケットのメイン通りから少し外れたターヒエン通りは、プラスチック椅子に座って、いわゆるビアホイ(Bia hơi)を飲みながら夜風に当たる場所。ビアハノイ(Bia Hà Nội)や333(バーバーバー)が1杯15,000〜30,000ドン。地元の若者と観光客が入り混じる、旧市街で最もカジュアルなナイトスポットです。

週末のホアンキエム湖も歩行者天国に

金〜日の夜はホアンキエム湖の周りも車両規制され、大きな歩行者天国になります。大道芸、音楽パフォーマンス、子ども向けの遊び場が出現。ナイトマーケットと合わせて回ると、ハノイの週末の空気を丸ごと体験できます。

夜も基本は明るい雰囲気ですが、旧市街は人が多い分スリ対策だけは必須です(詳しくは「ハノイの治安・スリ対策」記事へ)。


ナイトマーケット基本情報

項目 内容
開催日 毎週 金・土・日
時間 18:30頃〜23:00頃(ピークは20:00〜22:00)
場所 ハンダオ通り(Hàng Đào)〜ドンスアン市場(Chợ Đồng Xuân)、約650m
入場料 無料
支払い 現金メイン。小額紙幣を多めに
注意 スリ対策として貴重品は体の前側に

よくある質問(FAQ)

ハノイ旧市街は何時間あれば回れる?

主要な通りを歩くだけなら2〜3時間。カフェ休憩やナイトマーケットまで含めると半日〜1日が理想です。

旧市街のナイトマーケットはいつ?

毎週金・土・日曜の夜(18:30時〜23時頃)にハンダオ通り周辺で開催。雑貨・衣類・食べ物の屋台が並び、歩行者天国になります。

旧市街でスリに遭わないためのコツは?

スマホを路上で片手持ちしない、バッグは体の前に持つ、貴重品はホテルのセーフティボックスに。特にバイクからのひったくりに注意。


おわりに|旧市街は「買う場所」じゃなく「歩く場所」だ

旧市街の本当の面白さは、特定のお店や観光スポットにあるのではなく、通りごとに空気が変わることにある。銀の通りにカフェがあり、紙の通りに祭り用品が山積みになり、魚料理の名前がついた通りがある。1000年前の地図が、いまの街の骨格にそのまま残っている。

そして、昼はバイクの海だった道が、夜になると歩行者の川に変わる。

何か目的を持って行くよりも、「この通りは何を売っていた通りだろう」と考えながらぶらぶら歩く方が、旧市街は楽しめる。疲れたら屋上カフェに逃げて、エッグコーヒーを飲みながら下のカオスを眺めればいい。

旧市街は「買う場所」じゃなく「歩く場所」だ。それだけ分かっていれば、ハノイの旧市街は十分に楽しい。

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エンジニア

幼少期をアメリカで過ごし、現在は世界を転々としながらコードを書くノマドエンジニア。

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