ベトナム語のあいさつ一覧|Xin chàoを使わない日常のことば

2026.08.16
旅・ガイド

先に要点だけ知りたい方へ。

  1. 「Xin chào」は、ハノイの日常ではほとんど使いません
  2. あいさつの中身は、あいさつのことばではなく「相手の呼び方」です
  3. 呼び方をまちがえても、たいていは問題になりません

教科書に出てくる言い方と、ハノイの日常で実際に使う言い方を並べてみますね。

場面 教科書の言い方 ハノイの日常
人に会ったとき Xin chào
(シン チャオ)
Anh ạ/Chị ạ
(アイン ア/チ ア)
Chào buổi sáng
(チャオ ブオイ サーン)
Anh ạ + Ăn sáng chưa?
(アイン ア+アン サーン チュア)
別れぎわ Tạm biệt
(タム ビエット)
Em về nhé/Mai gặp nhé
(エム ヴェー ニェー/マイ ガップ ニェー)
お店を出るとき Cảm ơn
(カム オン)
お客さんからは言わないことも多い

教科書の言い方が、まちがっているわけではありません。通じますし、失礼でもありません。ただ、ハノイで毎日交わされていることばは、右の列のほうなんです。

ここから先は、その右の列を、ひとつずつ書いていきますね。

目次

旅行なら、まず3語だけ持っていってください

人に会ったときのあいさつとは別に、旅行中にこちらから誰かに話しかけるときは、この3つだけ覚えておくと便利です。

ベトナム語の呼び方をぜんぶ覚えてから来る必要は、まったくありません。旅行のあいだは、この3つでほとんどの場面に対応できます。

ことば 読み方 使う相手
Anh ơi アイン オイ 自分より年上の男性を呼ぶとき
Chị ơi チ オイ 自分より年上の女性を呼ぶとき
Em ơi エム オイ 自分より年下の人を呼ぶとき

この3つは、人に話しかけるときの入口になることばです。道をたずねるとき、値段を聞くとき、お店で注文するとき——ぜんぶ、ここから始まります。

お店に入って店員さんを呼ぶときも「Em ơi!」。注文したいとき、何か頼みたいときも「Em ơi!」です。

日本から来られた方が、着いたその日から実際に使えるのはこの3つです。この先を読まなくても、ここだけ覚えていけば旅行は成り立ちます。

「Xin chào」は、実はあまり使いません

ベトナム語の教科書は、たいてい「Xin chào(シン チャオ)」から始まります。日本から来られた方も、これを覚えて来てくださることが多いです。

でも、ハノイの街で「Xin chào」と言い合っている場面は、あまり多くありません。

「Xin chào」は、少し本の中のことばか、あらたまった場面のことばに聞こえます。スピーチのはじめ、式典、テレビの中。そういう空気があります。

では、ふだん人と会ったとき、わたしたちは何と言っているのでしょうか。

いちばん多いのは「anh ạ」「chị ạ」

道で知っている人に会ったとき、わたしがいちばんよく言うのは、これです。

  • anh ạ(アイン ア)── 年上の男性へ
  • chị ạ(チ ア)── 年上の女性へ
  • bác ạ(バック ア)── かなり年上の方へ

これだけです。「こんにちは」にあたる部分が、ありません。相手の呼び方を、そのまま言っているだけなんです。

日本語でいうと、知っている人に会って「あ、部長」「あ、先輩」とだけ言うのに近いのかもしれません。それであいさつが成立してしまう。ベトナム語のあいさつは、そういう形をしています。

最後の「ạ(ア)」は、ていねいさを出す音です。目上の方に言うときは、これをつけると自然になります。

最初に覚えるなら、「Xin chào」より「anh ạ」「chị ạ」のほうが、使う場面はずっと多いです。

あいさつの中身は「相手の呼び方」です

ここが、ベトナム語のいちばん大事なところだと思っています。

ベトナム語は、相手との関係で呼び方が変わります。そしてその呼び方そのものが、あいさつの中身になっています。

呼び方 読み方 使う相手
anh アイン 自分より年上の男性
chị 自分より年上の女性
em エム 自分より年下(男女とも)
bác バック かなり年上の方(男女とも)

なので、ベトナム語であいさつをしようと思ったとき、覚えるべきなのは「こんにちは」ではないんです。目の前の人を、なんと呼ぶかのほうです。

中高年の方には「Cô ơi」「Chú ơi」

もう少し年上に見える方には、こちらを使うこともあります。

  • Cô ơi(コー オイ)── 中高年くらいの女性へ
  • Chú ơi(チュー オイ)── 中高年くらいの男性へ

ベトナム語には、このほかにも dì、cậu、mợ、ông、bà など、関係と年齢で変わる呼び方がたくさんあります。ただ、旅行のあいだに全部覚える必要はまったくありません。最初は anh / chị / em の3つ、それに cô / chú を足すくらいで十分です。

相手の年齢がわからないときは

旅行のあいだは、会う方全員の年齢を知る必要はありません。見た目でだいたい選べば十分ですし、ちがっていても、たいていは相手が直してくれます。

そのうえで、もう少し長くいらっしゃる方のために、わたしがやっている方法も書いておきますね。

相手が自分をどう呼んだか、を聞いてみてください。

相手がこちらを「anh」「chị」と呼んだなら、その方はこちらを年下だと思っています。だから、その呼び方に合わせて返す。相手の使ったことばが、そのまま答えになってくれます。

わからなければ、聞いてしまいます

ベトナムでは、年齢を聞くことは失礼ではありません。むしろ、呼び方を決めるために必要なので、ふつうに聞きます。

  • Bạn bao nhiêu tuổi?(バン バオ ニエウ トゥオイ)── 何歳ですか
  • Bạn sinh năm bao nhiêu?(バン シン ナム バオ ニエウ)── 何年生まれですか

下の「何年生まれですか」を使う方も多いです。年齢そのものより、生まれた年のほうが答えやすいからだと思います。

ただ、これも人によります。全員が聞くわけではなくて、聞かない方もいます。

呼び方をまちがえても、だいじょうぶです。大きな問題になることは、あまりありません。多くの場合、相手は笑って、呼び方を直してくれます。まちがえるのが心配で黙ってしまうより、まちがえて話しかけてくださるほうが、わたしたちはずっとうれしいです。

「ơi」と「ạ」は何がちがうの?

ここまでに「anh ạ」と「Anh ơi」の両方が出てきたので、混乱された方もいるかもしれません。この2つは、役割がまったくちがいます。

「ơi(オイ)」は、人を呼ぶ音

誰かに話しかけたいとき、名前や呼び方のうしろにつけます。

  • Anh ơi!(アイン オイ)
  • Chị ơi!(チ オイ)
  • Em ơi!(エム オイ)

日本語の「すみませーん」に近い働きです。相手のほうを向かせるための音、と考えていただくといいかもしれません。

「ạ(ア)」は、ことばをやわらかくする音

こちらは文の最後につけて、ていねいさを出します。

  • Bao nhiêu tiền ạ?(バオ ニエウ ティエン ア)── いくらですか
  • Ở đâu ạ?(オー ダウ ア)── どこですか
  • Cho em hỏi ạ.(チョー エム ホイ ア)── ちょっとうかがいます

2つは、いっしょに使います

実際の会話では、この2つが1つの文の中に両方入ります。

Chị ơi, cái này bao nhiêu tiền ạ?(チ オイ、カイ ナイ バオ ニエウ ティエン ア)── すみません、これはいくらですか

前の「Chị ơi」で相手を呼んで、うしろの「ạ」でていねいにする。ベトナム人が話しているのを聞いていると、この「オイ」と「ア」がずっと聞こえてくると思います。理由はこれなんです。

「Chào buổi sáng」も、ほとんど言いません

「おはよう」を調べると、たいてい「Chào buổi sáng(チャオ ブオイ サーン)」が出てきます。

これも、日常ではほとんど使いません。本の中のことば、または会社の中のことば、という感じがします。

朝、その日はじめて会った人には

やっぱり、「anh ạ」「chị ạ」です。呼びかけだけ。

そのあとに、こういうことばが続きます。

  • Ăn sáng chưa?(アン サーン チュア)── 朝ごはん、食べた?
  • Sáng nay đi làm sớm thế à?(サーン ナイ ディ ラム ソム テー アー)── 今日は早いね、お仕事?

または、ちょっとからかうようなひとこと。天気のことでも、服のことでも、なんでもいいんです。

日本語の「おはよう」は、それだけで完結しますよね。ベトナム語の朝のあいさつは、呼びかけたあと、すぐ会話が始まってしまう。そこがちがうところだと思います。

「Ăn sáng chưa?(朝ごはん食べた?)」は、本当に朝ごはんの話がしたいわけではありません。日本語の「おはよう」と同じ、あいさつのことばです。聞かれても、深く考えずに答えていただいて大丈夫です。

お店に入るとき、お客さんは何と言うのか

ここは、日本から来られた方に驚かれることが多いところです。

お客さんのほうからは、たいてい何も言いません。

お店に入ると、先に声をかけるのは、ほとんどの場合お店の人です。お客さんは、案内された席に座るか、自分で席を選んで、注文をします。無言で入っても、まったく失礼ではありません。

お店を出るときは

これは場合によります。

お店の人が声をかけてくれたら、それに「Cảm ơn(カム オン)」と返すことはあります。でも、買い物を終えてそのまま出ていくのも、ごくふつうのことです。

ベトナムには、お店を出るときにお客さんが必ず「Cảm ơn」と言わなければいけない、という決まりがありません。言うこともあれば、そのまま出ていくこともあります。

日本では、お店を出るときにお客さんが「ありがとうございました」と言う場面をよく見ました。ベトナムでは、先に声をかけるのはお店の人のほうです。何かしてもらったときに「Cảm ơn ạ」と言うのは、もちろんとても自然ですよ。

これは「ベトナム人が失礼」という話ではありません。感謝を伝える場面が、日本とちがうというだけです。もちろん「Cảm ơn」と言っていただいて、いやな気持ちになる人はひとりもいません。

旅行中に、そのまま使える言い方

ここまでの3語を、実際の場面にあてはめてみますね。どれも「呼びかけ+用件+ạ」の形になっています。

場面 ベトナム語 読み方
道をたずねる Anh ơi, cho em hỏi Văn Miếu ở đâu ạ? アイン オイ、チョー エム ホイ ヴァン ミエウ オー ダウ ア
値段を聞く Chị ơi, cái này bao nhiêu tiền ạ? チ オイ、カイ ナイ バオ ニエウ ティエン ア
お店で注文する Em ơi, cho anh gọi món. エム オイ、チョー アイン ゴイ モン
トイレの場所を聞く Chị ơi, nhà vệ sinh ở đâu ạ? チ オイ、ニャー ヴェ シン オー ダウ ア
タクシーで降りたい Anh ơi, cho em xuống ở đây ạ. アイン オイ、チョー エム スオン オー ダイ ア
ホテルやお店で声をかける Anh ơi, cho em hỏi một chút ạ. アイン オイ、チョー エム ホイ モッ チュッ ア

「注文する」の文だけ、自分が男性なら「cho anh」、女性なら「cho chị」に変わります。自分の呼び方が文の中に入ってくる、というのはここでも同じです。

全部覚えなくてだいじょうぶです。「Anh ơi」「Chị ơi」「Em ơi」で呼びかけたあとは、指をさすだけでも十分伝わります。呼びかけができるかどうかが、いちばん大きいところなんです。

別れるとき、実際に言うことば

「さようなら」は「Tạm biệt(タム ビエット)」と習いますよね。これは使います。使いますが、毎日は使いません。

もう少し親しい関係だと、こちらのほうが多いです。

  • Em về nhé(エム ヴェー ニェー)── わたし、帰りますね
  • Anh về nhé(アイン ヴェー ニェー)── ぼく、帰るね
  • Em về trước nha(エム ヴェー チュオック ニャ)── お先に帰りますね
  • Mai gặp nhé(マイ ガップ ニェー)── また明日

気づかれたかもしれません。ここでも最初に来るのは自分の呼び方なんです。年上の方に対しては「Em về nhé」、年下の方に対しては「Anh về nhé」「Chị về nhé」になります。

「Tạm biệt」は、少しあらたまった感じがします。空港でしばらく会えない人を見送るとき、という空気です。毎日の「じゃあね」には、ちょっと重たいかなと思います。

「お疲れさま」にあたることばは、ありません

日本語を勉強していて、いちばん訳せなかったのが、これでした。

ベトナム語には、「お疲れさま」のようにどんな場面でも使える決まったことばがありません。

仕事が終わったとき、誰かががんばったとき、すれちがったとき——日本語ならぜんぶ「お疲れさまです」で足りますよね。ベトナム語では、その場ごとにちがうことばを言います。

なので、日本の会社でベトナム人といっしょに働いている方には、こうお伝えしたいです。「お疲れさま」をベトナム語に直そうとしなくて大丈夫です。対応することばが、そもそも存在しません。

ていねいに言おうとして、逆に遠くなってしまう言い方

これは、日本の方によくあることだと思います。

ひとつめは、どんな場面でも「Xin chào」を使ってしまうこと。ていねいにしようという気持ちは、とても伝わります。でも、お友だちにも、お店の方にも、毎回「Xin chào」だと、少し距離を感じてしまいます。

ふたつめは、日本語のあいさつを、そのままベトナム語に置きかえようとすること。「いつもお世話になっております」「失礼します」「お疲れさまです」。日本語には、関係を保つための決まった言い方がたくさんありますよね。ベトナム語には、同じ形のものがないんです。直訳すると、意味は通じても、あいさつとしては不自然になってしまいます。

ベトナム語は、あらたまった言い方をするほど、相手との距離が遠くなる言語だと思います。ていねいさは、ことばの長さではなく、呼び方で表します。

日本の方がよくかんちがいされること

日本から来られた方と話していて、よく出てくるものを5つ書いておきますね。

① 「Xin chào」を、どんな場面でも使うと思っている

まちがいではありません。ただ、いつでもいちばん自然というわけでもない、ということです。

② 「anh」は「お兄さん」の意味だけだと思っている

ちがいます。会話の中では、自分より年上の男性を呼ぶときに広く使います。血のつながりは関係ありません。

③ 「em」は子どもに使うことばだと思っている

これもちがいます。大人でも、自分より年下なら「em」で呼びます。

④ 話す前に、年齢を聞かないといけないと思っている

旅行では必要ありません。見た目でだいたい選べば十分です。

⑤ 「お疲れさまです」をそのまま訳そうとする

ベトナム語には、これにぴったり対応することばがありません。訳そうとしなくてだいじょうぶです。

場面別・ベトナム語のあいさつ一覧

ここまでに出てきたことばを、まとめておきますね。ハノイでわたしが実際に使っているものだけです。

場面 ベトナム語 読み方
年上の男性に話しかける Anh ơi アイン オイ
年上の女性に話しかける Chị ơi チ オイ
年下の人に話しかける・店員さんを呼ぶ Em ơi エム オイ
中高年の方に話しかける Cô ơi/Chú ơi コー オイ/チュー オイ
年上の男性に会ったとき Anh ạ アイン ア
年上の女性に会ったとき Chị ạ チ ア
かなり年上の方に会ったとき Bác ạ バック ア
朝のあいさつ代わり Ăn sáng chưa? アン サーン チュア
朝のあいさつ代わり Sáng nay đi làm sớm thế à? サーン ナイ ディ ラム ソム テー アー
年齢をたずねる Bạn bao nhiêu tuổi? バン バオ ニエウ トゥオイ
生まれ年をたずねる Bạn sinh năm bao nhiêu? バン シン ナム バオ ニエウ
お礼を言う Cảm ơn カム オン
帰りますね(自分が年下) Em về nhé エム ヴェー ニェー
お先に帰りますね Em về trước nha エム ヴェー チュオック ニャ
また明日 Mai gặp nhé マイ ガップ ニェー
さようなら(あらたまった場面) Tạm biệt タム ビエット
あらたまった場面のあいさつ Xin chào シン チャオ

カタカナは、ハノイの発音を目安にしたものです。ベトナム語は声の高さで意味が変わるので、カタカナだけでは正確に表せません。それでも、声に出してみてくださいね。

よくある質問

Q. 発音がうまくできなくても、通じますか

通じないこともあります。でも、それでも言ってみてほしいです。

外国の方がベトナム語であいさつしてくださると、わたしはうれしくなります。発音が正確でなくても、気になりません。ベトナム語を覚えようとしてくださったことが、伝わるからです。ひとことだけでも、うれしいです。これはわたしだけでなく、まわりのベトナム人もだいたい同じだと思います。

Q. 「Xin chào」を使ったら、変ですか

変ではありません。意味は完全に通じますし、失礼でもありません。

ただ、毎回それだと少しあらたまって聞こえる、というだけです。旅行中に「Xin chào」だけを使っていても、何も問題は起きません。

Q. 男性と女性で、言い方は変わりますか

変わります。ただし、変わるのは自分の呼び方のほうです。

たとえば「帰りますね」は、自分が年下なら「Em về nhé」。自分が年上の男性なら「Anh về nhé」、年上の女性なら「Chị về nhé」になります。相手の呼び方と、自分の呼び方、両方が関係してきます。

Q. 年齢を聞かれたら、答えないといけませんか

答えなくても問題ありません。ただ、答えると相手が呼び方を決めやすくなるので、そのあとの会話がスムーズになります。ベトナムでは年齢を聞くことは失礼にあたらないので、聞かれても深い意味はありません。

Q. お店で「Xin chào」と言われたら、何と返せばいいですか

同じように返して大丈夫です。または、軽く会釈するだけでも問題ありません。お客さんが返事をしないことも、ベトナムではふつうのことです。

おわりに

ベトナム語のあいさつは、「こんにちは」を覚えることではなく、目の前の人をなんと呼ぶかを決めることから始まります。

anh、chị、em。この3つだけ持って来てください。あとは、相手が自分をどう呼ぶかを聞いて、合わせればいいんです。まちがえても、たいていは問題になりません。

ハノイで、みなさんに「anh ạ」「chị ạ」と声をかけていただける日を楽しみにしています。

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ライター

日本での生活経験あり。リンランを生活圏に、文化背景の翻訳と取材サポートを担当。

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