ハノイの中心部、ホアンキエム湖から歩ける場所に、黄色い塀に囲まれた刑務所の跡が残っています。ホアロー刑務所、日本語ではホアロー収容所とも呼ばれる場所です。
行く前に調べると引っかかるのが料金です。入場料も音声ガイドも、書かれている数字がまちまちで、いくら持っていけばいいのかが分かりません。筆者は2026年8月に実際に行き、入口の料金掲示とチケットを確認してきました。この記事では、その掲示に書かれていた金額と条件、そして館内で何を見ることになるのかをまとめます。

ホアロー刑務所とは|1896年から1993年まで
1896年、フランス植民地政府が、陶器づくりで知られたフーカイン村の土地を接収して建てた刑務所です。フランス語の名前はMaison Centrale(メゾン・サントラル)で、正門の上に今もその文字が残っています。インドシナでも最大級の規模で、植民地支配に抵抗したベトナム人が次々にここへ送られました。
1954年にフランスが撤退したあとはベトナム側の施設になり、1964年から1973年にかけては、撃墜されたアメリカ軍のパイロットが収容されました。1993年に大部分が取り壊され、残った一角が保存されて博物館として公開されています。
ベトナムの近代史の流れは、こちらにまとめています。
ホアロー刑務所の入場料は50,000ドン
入口の脇に、ベトナム語と英語を併記した料金の掲示が立っています。そこに書かれているのは、大人ひとり50,000ドン(約300円)です。

チケットは薄い紙の半券で、金額の50,000ドンが印字されています。裏面に刑務所の正門の写真が入っていて、そのまま持ち帰れます。

16歳未満は無料。半額の区分はベトナム国籍が条件
掲示には無料と半額の区分が書かれています。旅行者に関係があるのは、無料のほうです。
- 大人:50,000ドン
- 無料:16歳未満(出生証明書または学生証。身長1.3m未満でも可)/特別重度の障害がある人
- 半額:重度の障害がある人/ベトナム国籍で60歳以上の人/ベトナム国内の学校が発行した学生証を持つ16歳以上の生徒・学生/山間部や遠隔地の困難地域の住民/革命功労者/社会政策の対象者
半額の区分をよく読むと、年齢と学生の欄に「ベトナム国籍で」「ベトナム国内の学校が発行した」という条件が付いています。日本から来た大人は、シニアでも学生でも半額にはならないと考えておくのが確実です。
一方、無料のほうは「16歳未満」という書き方で国籍の条件がありません。子ども連れなら、その場で聞いてみる価値があります。
掲示の下のほうには、施設紹介の冊子が1冊20,000ドン(約120円)とあります。
音声ガイドはベトナム人50,000ドン、外国人100,000ドン
ホアロー刑務所には、番号を入れて解説を聞く音声ガイドがあります。これは入場料とは別で、料金はベトナム人が50,000ドン、外国人が100,000ドン(約600円)です。
入場料が50,000ドンだと思って行くと、音声ガイドのほうが高いという状態になります。2人で借りれば200,000ドン、入場料と合わせて300,000ドン(約1,800円)。先に知っておくと、窓口で戸惑いません。

受付は、チケット売り場を通って敷地に入ってすぐの左手です。カウンターにヘッドホンが積まれていて、その場で借りられます。
日本語がある。全部で35話
受付の横の掲示によると、収録されているのは35話、対応言語は8か国語。ベトナム語・英語・フランス語・スペイン語・韓国語・日本語・中国語などが並んでいます。
これは大きいです。館内の展示パネルはベトナム語・英語・フランス語の3言語で、日本語はどこにもありません。日本語で解説を聞けるのは、この音声ガイドだけです。
借りると、折りたたみの案内図をもらえます。1階と2階の見取り図に赤い番号が振ってあり、その番号の場所で該当する解説を再生する仕組みです。館内の壁や説明板にも、同じ番号のヘッドホンマークが貼られています。

案内図に並んでいる項目を見ると、この施設が何を見せようとしているのかが分かります。「はじめに」から始まり、フーカイン村(刑務所が建つ前にあった村)、刑務所の全体像、囚人の食事、囚人の服、暗い独房、バンの木、1945年の脱獄、1951年の脱獄、ギロチン、拷問の道具、死刑囚の房、慰霊碑、そして「ハノイ・ヒルトン」とアメリカ人の将校、と続きます。
借りるかどうかの目安
パネルに日本語がない以上、展示の中身まで踏み込みたいなら100,000ドンを払う価値はあります。逆に、建物と展示の雰囲気を見て回るだけなら無しでも成立します。人形を使った再現展示が中心なので、解説がなくても何が起きていた場所なのかは伝わってきます。
ホアロー刑務所の所要時間は30分から1時間
音声ガイドを使わずに一通り歩いて出てくるまでで、約30分でした。展示は1階と2階に分かれていますが、順路はほぼ一本道で、迷うところはありません。
音声ガイドを借りるなら、35話ぶんの解説を聞くことになるので1時間前後を見ておくと落ち着いて回れます。
いずれにしても半日かかる場所ではありません。旧市街の観光の合間に組み込めます。ハノイの回り方はこちらを参考にしてください。
開館時間は8時から17時。昼休みはありません
料金の掲示には「Ban ngày(昼間)8h00 – 17h00」と書かれています。昼に閉まる時間帯は設けられていません。祝日もテト(旧正月)も開いています。
わざわざ「昼間」と書いてあるのは、夜に別枠の見学プログラムがあるからです。これは記事の後半で触れます。
行き方とチケット売り場の場所
住所はSố 1 phố Hỏa Lò(ホアロー通り1番地)。チケットにも公式サイトにも、区の表記はCửa Nam(クアナム)坊と印字されています。ホアンキエム湖の南西側で、旧市街からは歩ける距離です。
Grabで行くなら、目的地は「Hoa Lo Prison」で問題なく着きます。ハノイでのGrabの使い方はこちらにまとめています。
着いてから迷いやすいのが、チケット売り場です。

ホアロー刑務所の見どころ
まず模型で「ここは一部」だと分かる
入ってすぐの展示室に、1896年の設計図と、当時の刑務所全体の模型があります。模型を見ると、敷地が今よりずっと広かったことが分かります。現在残っているのは南東の一角だけで、残りは取り壊されて高層ビル(ハノイタワー)になりました。

共同房と足枷
板張りの床がひな壇のように傾いていて、その上に囚人の人形が並んでいます。全員の足首が、床に固定された木の枷にはめられています。

枷は近くで見ると仕組みが分かります。足首を通す穴が等間隔に並んだ長い木の桁で、外から棒を通して固定する構造です。寝返りも打てません。

暗い独房
案内図で「Ngục tối(暗い独房)」と書かれている区画があります。ここだけ通路も部屋も本当に暗く、天井から裸電球が1つ下がっているだけです。壁の高い位置に小さな窓が開いていますが、光はほとんど入ってきません。

ギロチン
展示のなかでいちばん目を引くのがギロチンです。木の枠と刃がそのまま残っていて、下に受けの籠が置かれています。ガラスケースにも柵にも入っておらず、すぐ横まで近づけます。

死刑囚の房
死刑を待つ囚人が入れられていた房が並ぶ通路があります。片側にずらりと厚い木の扉が並び、中を覗くと人ひとりが座れるだけの幅しかありません。扉の脇には、誰がいつここに入れられたかを書いた札が付いています。

下水道からの脱獄が、2か所そのまま残っている
中庭に、コンクリートと石の遺構が保存されています。どちらも下水口で、それぞれ別の脱獄の現場です。見落としやすいので、説明板を読んでみてください。
1つ目はJ棟の中庭にある下水口。説明板によると、1945年3月12日から16日の夜にかけて、100人以上の政治犯がここから脱出しました。彼らはそれぞれの地元に戻って八月革命に加わり、その多くがのちに党と国家の要職に就いています。

2つ目は死刑囚房の中庭にある下水口です。1951年、死刑判決を受けた16人がここから脱獄を試み、5人が逃げ切って組織との連絡を回復しました。残りの11人は再び捕らえられて別の刑務所に送られ、1954年のジュネーブ協定によって釈放されています。

中庭の慰霊碑
屋外の中庭に、ここで亡くなった人たちを悼む慰霊碑が立っています。背後の壁は大きなレリーフになっていて、線香と花が供えられています。順路の途中にあるので、通り抜けるついでに足を止められます。

屋外通路の企画展
建物と塀のあいだの細長い通路が、企画展の会場として使われています。パネルが両側にずらりと並び、内容は時期によって入れ替わります。筆者が訪れたときは、八月革命から81年という節目に合わせた展示と、コンダオ刑務所を扱った展示が並んでいました。

「ハノイ・ヒルトン」の区画
ベトナム戦争でこの刑務所に収容されたアメリカ人パイロットに関する展示があります。捕虜たちがここを皮肉って「ハノイ・ヒルトン」と呼んだことが、そのまま展示の名前になっています。音声ガイドでも、ハノイ・ヒルトン、海軍中尉、空軍大尉と、独立した項目が立てられています。
ベトナム戦争そのものの流れは、こちらの記事にまとめています。
売店はかなり充実している
順路の途中に売店があります。刑務所跡の施設と聞いて想像するよりずっと品数が多く、絵、漆の器、置物、Tシャツ、キーホルダー、菓子まで並んでいます。

夜の見学プログラム「デム・ティエンリエン」
ホアロー刑務所には、通常の見学とは別に夜のプログラムがあります。ベトナム語で「Đêm thiêng liêng(デム・ティエンリエン/聖なる夜)」といい、暗くなった館内を、照明と音、俳優の演技を交えて回るものです。
金曜・土曜・日曜の夜19時開始で、内容によって90分または120分。料金は399,000ドン(約2,400円)から499,000ドン(約3,000円)ほどで、昼の入場料とは桁が違います。人気があって数か月先まで埋まっていることが多く、予約は施設のFacebookページで受け付けています。
解説はベトナム語です。言葉が分からなくても演出は伝わりますが、昼の見学とは性格の違うものだと思っておくといいでしょう。
行く前に知っておきたいこと
- 現金を用意しておく。入場料も音声ガイドもドンで払います
- 展示は重い内容です。拷問や処刑を人形と実物で見せる展示が続きます。小さな子ども連れなら、暗い独房とギロチンの区画で先に声をかけておくといいかもしれません
- 屋内と屋外を行き来します。展示室、中庭、屋外の通路とつながっているので、雨の日は傘があると動きやすいです
- 写真は撮れます。館内で撮影を止められることはありませんでした
- 2階へは急な鉄の階段で上がります。雨の日などは滑りやすいので注意してください
よくある質問
ホアロー刑務所とホアロー収容所は同じ場所ですか?
同じ場所です。日本語では「ホアロー刑務所」と「ホアロー収容所」の両方が使われています。ベトナム語ではNhà tù Hỏa Lò、英語では Hoa Lo Prison です。
休館日はありますか?
ありません。料金の掲示にも公式サイトにも、8時から17時まで毎日開いていると書かれています。祝日とテトも開館します。
日本語のガイドはありますか?
音声ガイドに日本語が入っています(外国人100,000ドン)。展示パネルはベトナム語・英語・フランス語なので、日本語で解説を聞きたいなら音声ガイドを借りることになります。
所要時間はどれくらいですか?
音声ガイドを使わずに回って約30分、借りるなら1時間前後です。
ギロチンは本物ですか?
本物です。フランス植民地政府が処刑に使った実物が、そのまま保存・展示されています。木の枠と刃、受けの籠が揃った状態で、柵などで隔てられていないのですぐそばまで近づけます。
近くに一緒に回れる場所はありますか?
ホアンキエム湖と旧市街が歩ける距離(徒歩20分ほど)です。歴史の順で並べるなら、フランス植民地期のこの場所に、王朝時代のタンロン遺跡と、独立後のホーチミン廟を組み合わせると、一日でベトナムの近現代をたどれます。
まとめ|30分で、ベトナムの100年を歩く
最後に要点だけ。
- 入場料は50,000ドン。16歳未満は無料
- 半額の区分はベトナム国籍やベトナム国内の学生証が条件。日本から来た大人は対象外と考えておく
- 音声ガイドは別料金で外国人100,000ドン。日本語を含む8言語・35話
- 開館は8時から17時。昼休みなし、祝日もテトも開館
- チケット売り場は敷地の外、塀沿いの歩道にある
- 所要時間は音声ガイド無しで約30分、借りるなら1時間前後
- 見どころはギロチン、暗い独房、死刑囚房、そして2か所の脱獄用の下水口
- 夜の見学「デム・ティエンリエン」は金土日19時から。399,000〜499,000ドン
建物を見に行く場所ではありません。フランス植民地期からベトナム戦争までの100年ぶんが、同じ敷地の中に並んでいるのを歩いて確かめに行く場所です。旧市街の観光の合間に、30分だけ寄ってみてください。
※入場料・音声ガイドの料金・開館時間・夜のプログラムの内容などは変更されることがあります。渡航前に最新の情報をご確認ください。(2026年8月時点の情報)