初めてホーチミンに滞在するとき、真っ先に感じるのは「空気の密度が違う」ということだった。バイクの量、人の熱、物音、声のボリューム——すべてが他の街より一段階強い。
ただ、実際に歩いてみた印象は「思っていたほど怖くない」だった。夜20時のブイビエン通りも、何度か乗ったメトロ1号線も、ベンタイン市場も、身の危険を感じる場面はなかった。それでも財布とスマホの扱いだけは、ハノイより一段階緊張感を上げる必要がある。ホーチミンの治安とは、そういう種類の話だ。
この記事では、自分で歩いて確かめたことを軸に、Numbeoのデータと外務省の情報を合わせて整理する。何を、どこで、どう警戒すればいいのか。読み終わる頃には、自分なりの「歩き方」が決まっているはずだ。
数字で見るホーチミンの治安|ハノイとの差はどのくらいか
Numbeoの安全指数(2026年3月更新)
世界中の都市の安全度を比較できるNumbeoのデータを見ると、ホーチミンの立ち位置がはっきり見える。
Numbeo – Crime in Ho Chi Minh Cityの最新値(2026年時点・過去5年間の利用者投稿ベース)では、ホーチミン市の安全指数はおおむね50ポイント前後。同じ時期のハノイは約66ポイントで、同じ国の2都市で16ポイントもの開きがある。
周辺都市と並べるとこう見える。
| 都市 | 安全指数 | 感覚 |
|---|---|---|
| ダナン | 約76 | ベトナム国内で最も穏やか |
| 東京 | 約75 | 世界でもトップクラス |
| 大阪 | 約67 | — |
| ハノイ | 約66 | 大阪と同じくらいの感覚 |
| ホーチミン | 約50 | 軽犯罪への警戒が必要 |
Numbeoは利用者の体感投稿をベースにしていて、日々変動する指標なので「絶対値」として見るのではなく、都市間の相対的な差を読み取るのが正しい使い方だ。それでも、ホーチミンがハノイより体感治安で劣るというのは、住んでいる人間の感覚とも綺麗に一致する。
ひとつだけ補足しておきたいのは、暴力犯罪への不安度はホーチミンでも依然として低いということ。ホーチミンで警戒すべきは「命を狙われること」ではなく、財布とスマホを狙われることだ。この区別を最初にしておくと、過剰に怖がらずに済む。
結論から言えば、ホーチミンは「治安が特別悪い街」ではない。東南アジアの大都市としてはむしろ標準的で、凶悪犯罪の発生率も低い。ただし「危険度ゼロ」ではない。ハノイと同じ感覚で歩くとスリやぼったくりに引っかかる場所はいくつもあるし、夜になると空気が変わるエリアもある。重要なのは「ホーチミン全体の危険レベル」を語ることではなく、エリアごとの治安の濃淡を知っておくことだ。次の章で、旅行者が関わる主要エリアを安全度順に整理する。
外務省が発信しているベトナム情報
外務省の海外安全ホームページでは、ベトナムに対して現在、危険情報は出ていない。旅行が制限されているわけではなく、普通の海外渡航として扱える国だ。
ただしホーチミンについては、旅行者が知っておくべき重大な事件がひとつある。
2024年6月4日の昼前(現地午前11時頃)、ホーチミン市1区ベンゲー街区のタイバンルン(Thai Van Lung)通りで、36歳の日本人男性が刃物で刺されて死亡する事件が発生した。この通りはホーチミンの日本人街のど真ん中で、日本食レストランと駐在員が集まる場所だ。
逮捕された28歳のベトナム人容疑者は、被害者と面識がなかった。動機として供述されているのは「前職で外国人上司から叱責された恨み」で、日本人一般を継続的に狙っていたわけではない。とはいえ、昼間の路上で面識のない相手に刺される事件が日本人街で起きたという事実は、旅行者が心の片隅に置いておくべき情報だ。
こうした事件は統計的には極めて稀だが、旅行者や在留邦人も突発的な重大事案に巻き込まれる可能性はゼロではないという認識は持っておきたい。
なお、外務省の安全対策基礎データ(ベトナム)では、ホーチミン市の軽犯罪多発地域としてグエンフエ通り、ドンコイ通り、レタントン通り、ベンタイン市場周辺が具体的に名指しされている。この4箇所は観光客の動線と完全に重なっているので、後ほどエリア別マップで詳しく見ていく。
外務省のベトナム領事メール一覧には、現地で起きたトラブルの注意喚起が随時掲載されている。「たびレジ」に登録しておけば、リアルタイムで日本語の注意喚起メールが届くので、渡航前にやっておきたい準備のひとつだ。
ホーチミン治安マップ|エリアごとに「体温」が違う

ホーチミンは広い。そして、1区の中心部でさえブロックごとに空気が違う。「治安の悪いエリア」と一括りにできるほど単純な街ではなく、同じ区の中でも通り1本で体感が変わる。旅行者が関わる主要エリアを、安全度の高い順に整理する。危険度ランキングのように読んでもらえばいい。
比較的安全:1区中心部(ドンコイ〜グエンフエ〜市民劇場)

ホーチミン観光のメインステージ。サイゴン大教会、中央郵便局、統一会堂、オペラハウスなど主要スポットが徒歩圏に集中していて、外資系ホテルやブランド店も多い。夜遅くまで人通りがあり、警察官やセキュリティの姿も日常的に見る。初めてのホーチミンで宿を取るなら、まずこのエリア。
ただし、観光客が集中するということはスリの稼ぎ場でもある。外務省がホーチミンの多発地域として挙げているドンコイ通り・グエンフエ通り・ベンタイン市場周辺はここに含まれる。特に以下の瞬間が狙われやすい:
- 地図を確認するためにスマホを取り出した瞬間
- 写真を撮ろうとスマホを掲げた瞬間
- カフェの席でバッグを椅子の背にかけた瞬間
- 市民劇場前やグエンフエ通り中央の遊歩道(プロムナード)で立ち止まった瞬間
対策はシンプルで、「立ち止まらない」「出さない」「離さない」の3点。この3点さえ守れば、1区中心部で深刻な被害に遭う確率は大きく下がる。
比較的安全:タオディエン(トゥードゥック市側)
サイゴン川の対岸にある外国人居住エリアで、旧2区、現在は行政再編でトゥードゥック市の一部になっている。欧米人向けのおしゃれなカフェ、ブティック、レストランが集まり、中心部の喧騒から逃れたい時の逃避先として機能している。
2024年12月に開業したメトロ1号線のおかげで、中心部からタオディエンまで約10分、渋滞フリーでアクセスできるようになった。このエリアは治安面でも比較的落ち着いているので、疲れたら半日ここで過ごすのはホーチミン滞在の賢い使い方だ。
注意エリア:日本人街(レタントン・タイバンルン通り)
1区の北東側、駐在員と在住日本人が集中するエリア。外務省が「スリ・ひったくり等盗難被害多発地域」として明示的に名指ししている。日本食レストランと日本人向けサービスが密集していて、昼夜問わず賑わっているが、2024年6月の邦人刺殺事件の舞台でもある。
このエリアで気をつけるべきは以下:
- 夜間に人通りの少ない脇道に入らない
- 路上の揉め事には絶対に関わらない(関わると巻き込まれる)
- 「日本人だから安全」という逆の油断を持たない
通常時は危険なエリアではないが、「油断しやすい場所」であることを認識しておくのが重要だ。
注意エリア:ベンタイン市場周辺

ホーチミンを代表するローカル市場で、外務省の多発地域リストにも入っている。通路が狭く、人でごった返していて、その混雑に紛れたスリが発生しやすい。市場内だけでなく、東側・南側の出入口付近でのひったくりも報告されている。
昼間の観光は問題なく楽しめるが、リュックやバッグの前抱え、少額紙幣の準備、ポケットへの貴重品の収納禁止を徹底すれば問題は大幅に減る。
要警戒エリア:ブイビエン通り(バックパッカー街)


1区内、ファングーラオ地区にある外国人バックパッカー向けのバー・クラブ密集地帯。昼間は平穏だが、日が落ちると空気が一変する。深夜まで路上は人で溢れ、ここで発生するトラブルの代表例はバー・クラブでの高額請求と酔客に紛れたスリ。
20時頃に行って、路上で踊っている店に入って飲んだ。正直に書くと、身の危険を感じる場面はなかった。「客引きには絶対についていくな」という一般的なアドバイスは、この通りに関しては現実的ではない。どの店の前でも必ずキャッチが立っていて、それを全部避けると入れる店がなくなる。誘われるまま入る形になるのが普通だ。

だから警戒すべきなのはキャッチそのものではなく、店に入った後の会計と、周りが酔って騒いでいる中での持ち物の2つに絞られる。
- 席に着く前にドリンクの値段を確認する
- クレジットカードを店員に渡さない
- 現金は最小限だけ持っていく
- 深夜の一人歩きは避ける
繁華街のどんちゃん騒ぎの中にいる、という自覚さえあれば過度に怖がる場所ではない。逆に、その自覚を持てないくらい飲むなら、別のエリアで飲む方が無難だ。
旅行者が行く必要はないエリア:4区・8区の夜間
1区の南に隣接するローカルエリア。4区は再開発が進んで以前より落ち着いたと言われるが、8区はさらに郊外色が強い。観光スポットがほぼないので、旅行者がわざわざ夜に入り込む理由はない。慣れないうちは主要導線から外れないのが無難だ。
比較的安全:ビンタン区(Bình Thạnh)
1区の北側に隣接するビンタン区は、日本人駐在員や欧米系の長期滞在者が多く住むエリア。高層コンドミニアムと古い市街地が混在していて、生活感と落ち着きがある。ランドマーク81(ベトナム最高層ビル)があるのもこの区だ。
治安は基本的に安定していて、昼夜ともに大きなトラブルは少ない。ただし観光名所が密集しているわけではないので、短期旅行者が積極的に訪れる場所ではない。1区中心部から少し離れて「暮らすように滞在する」なら候補になるエリア、という位置づけで覚えておけばいい。
チョロン(5区・6区の中華街)

ホーチミン最大の中華街で、昼間の観光は面白い。ただし17時頃から閉店する店が多く、人通りが急激に減る。行くなら午前から午後早めの時間帯に済ませるのが正解。
ホーチミンで本当に多いトラブル6選
① バイクひったくり|歩道を歩いていても油断できない
ホーチミンで被害件数と怪我のリスクが最も大きいのがこれ。歩道を歩いていると、背後からバイクが音もなく近づいて、肩のバッグやスマホを奪って走り去る。抵抗すると引きずられて大怪我につながるので、取られたら追わないのが鉄則。
外務省の安全対策基礎データにも、「携帯電話やセカンドバッグ等を持って歩いている人を狙い、後方からバイクに乗った犯人が追い越しざまにひったくる事例」が明記されている。犯行の多くは、観光客が地図を確認するためにスマホを出した瞬間や、カフェから出てすぐの瞬間だ。
対策:
- 地図を確認する時は、店内や壁際に寄って、体を建物側に向けて立ち止まる
- バッグは車道と反対側(建物側)に持つ
- ショルダーバッグは斜めがけで体の前に抱える
- スマホには落下防止リングか首掛けストラップを装着する
ホーチミンで「歩きスマホ」は、冗談ではなく本気で命にかかわる行為だ。
② タクシー・Grabのぼったくり|偽アプリ詐欺も登場
ホーチミンのタクシートラブルはハノイより多く、手口も進化している。メーター改造、遠回り、お釣り返却拒否に加えて、近年では偽のGrabアプリ画面を見せて声をかけてくる手口が報告されている。特にタンソンニャット国際空港の到着ロビー周辺が悪質な現場として知られている。
対策:
- 移動は原則Grab(グラブ)を使う。料金が事前確定し、ドライバー情報も記録される
- Grabを呼んだら、アプリに表示された車のナンバーと実車のナンバーが必ず一致しているか確認する
- 空港で声をかけてくる白タクやアプリ画面を見せてくる人物には絶対についていかない
- Grabが使えない場面では大手の「Mai Linh(緑の車体)」または「Vinasun(白の車体に赤緑ライン)」を選ぶ
③ スリ・置き引き|人混みと市場は狙われる

ハノイより発生件数が明確に多い。ベンタイン市場の中、ドンコイ通りの人混み、カフェのテーブル上に置いたスマホ、ルーフトップバーのバッグ——観光客が集まる場所ほどリスクが上がる。
対策:
- リュックは前に抱える、背中側のファスナーは確実に狙われる
- ファスナー部分にカラビナや小さな南京錠で固定する
- スマホをテーブルや椅子の背に置かない
- バッグを置いたまま席を立たない(「ちょっとトイレへ」が一番危ない)
- ポケットに財布・スマホを入れて歩かない
④ バーの高額請求|ブイビエン通りに集中
「日本語話せますよ」と声をかけられてついていった先で、会計時に桁違いの金額を請求される——ホーチミンで定期的に報告されるトラブルだ。舞台のほとんどはブイビエン通り周辺。
対策:
- 入店前にドリンクの価格を確認する(ブイビエン通りでは客引きを避けること自体が現実的でない)
- Googleマップのレビューで店を事前に確認する
- 会計時に必ず明細を自分の目で確認する
- クレジットカードを店員に渡さず、目の前で決済してもらう
⑤ お釣りトラブル|ベトナムドンの桁を利用される
50万ドン(約3,030円)と5万ドン(約303円。1円≒165VND換算)は色が似ていて、慣れない旅行者は瞬時に見分けられない。これを利用して、お釣りを故意にごまかす店や個人商店が存在する。
対策:
- 1万・2万・5万ドン札を常に多めに持ち歩く。これが最強の自衛策
- 両替する時に小さい紙幣を混ぜてもらう
- 支払い前に紙幣の額面を相手に見せて確認する
桁の多いお札に慣れるまで、しばらくは「支払いの時にじっくり確認する」のが恥ずかしくない。慣れている人ほどやっている。ベトナムドンの相場感や両替・物価の目安はホーチミンの物価記事にまとめている。
⑥ 昏睡強盗|見知らぬ人との飲食
外務省の安全対策基礎データでも警告されている手口。ホテルのバーやブイビエン通り周辺で親しくなった異性と飲食を共にしたところ意識を失い、目覚めると所持品が全部消えていた——という事案だ。
対策:
- 初対面の相手との飲食は避ける
- 目を離した隙に飲み物に何か入れられる可能性を認識する
- ブイビエン通りでは、店の客引きではなく「個人として」飲みに誘ってくる相手に応じない
ホーチミンの夜|何時まで、どこまで歩けるか
「ホーチミン 治安 夜」で検索する人が気にするのはここだと思うので、夜について集中的に書いておく。
結論から言えば、1区中心部(ドンコイ通り・グエンフエ通り・市民劇場周辺)の主要通りは、夜になっても比較的人通りが維持される。このエリアは深夜営業の店も多く、現地の人が普通に歩いている。
ただし、夜になるほどひったくりや酔客トラブルのリスクは上がることも事実。外務省もホーチミン多発地域での夜間の屋外スマホ利用に対する注意喚起を出している。ハノイと決定的に違うのは、ホーチミンは深夜でも街が完全に眠らないということ。ブイビエン通り周辺は明け方まで騒がしく、1区中心部の一部のバーやクラブも深夜営業している。賑やかさは安全の保証ではなく、むしろ酔客と客引きが増える時間帯に旅行者がトラブルに巻き込まれやすい。
夜に守るべき5つのルール
- ブイビエン通りで薬物を持ちかけてくる声かけには絶対に応じない。ベトナムの薬物犯罪は外国人にも容赦なく適用される
- 路上の揉め事には関わらない。2024年6月の邦人刺殺事件は、路上の諍いが発端になった
- 路上でスマホを出したまま歩かない。特に信号待ちや横断の瞬間は狙われる
- 人通りの少ない脇道・路地に入らない。メイン通りだけを歩く
- 深夜の移動は必ずGrabを呼ぶ。歩きを選ばない
女性の夜の一人歩きについて
1区中心部の主要通りであれば、夜でも比較的歩きやすい。実際、女性ひとりで旅をしている人も多く見かける。ただしブイビエン通りと日本人街の脇道、人通りの少ない路地は避けるべき。深夜の移動は例外なくGrab。宿泊先を1区中心部かタオディエンに取っておけば、動線が安定して安全度が上がる。
道路の渡り方は「もうひとつの治安問題」

スリやぼったくり以上に、初めての旅行者が怖がるのがホーチミンの道路横断だ。バイクが途切れない車道を前にすると、足が動かなくなる。ホーチミンはハノイよりもバイクの密度が高く、横断の難易度も一段階上がる。
コツは「ゆっくり一定の速度で歩く」こと。止まったり走ったりすると、バイクのドライバーが動きを予測できず、かえって危険になる。地元の人が渡るタイミングを見計らって、一緒に進むのも有効な戦術だ。
これは治安の話とは少し違うが、ホーチミンで身の安全を守る上で避けて通れないテーマなので、覚えておいてほしい。
警察と総領事館|困った時の連絡先
ホーチミンで軽犯罪の被害に遭った場合、正直なところ盗まれた物が戻ってくる可能性は低い。言葉の壁もあるし、軽犯罪に対する捜査の優先度も限られる。それでも、保険金請求のためのポリスレポート(被害届)は取得する必要がある。
基本姿勢は、被害を最小限に抑えること、そもそも被害に遭わないこと。
緊急時の連絡先:
| 項目 | 連絡先 |
|---|---|
| 警察(公安) | 113 |
| 消防 | 114 |
| 救急 | 115 |
| 在ホーチミン日本国総領事館 | (+84) 28-3933-3510 |
| 総領事館住所 | 261 Dien Bien Phu Street, Xuan Hoa Ward, Ho Chi Minh City |
| 総領事館公式サイト | https://www.hcmcgj.vn.emb-japan.go.jp/ |
| ベトナム語で助けを求める | 「ゴイ コンアン!」(公安を呼んで!) |
総領事館の住所は、2025年のベトナム行政再編で「District 3」から「Xuan Hoa Ward」に変更されている。古いガイドブックには「3区」と書かれていることが多いので、タクシーに見せる時は公式の最新表記を使うのが安心だ。
夜間や休日は代表電話が留守番電話に切り替わるが、生命に関わる緊急事態は音声案内の指示に従って番号を押せば担当者につながる。宿のフロントに相談すれば、通訳のサポートをしてくれることも多い。
女性一人旅のホーチミン|押さえておきたいポイント
ハノイに比べると軽犯罪への注意度は上がるが、女性一人旅ができない街ではない。昼間の1区中心部は問題なく歩けるし、主要通りなら夜もある程度歩ける。実際に女性ソロで来ている旅行者は多い。
押さえておきたいのは次の点:
- 宿は1区中心部かタオディエンに取る。動線が安定する
- 夜は明るく人の多い通りだけを歩く。脇道に入らない
- ブイビエン通りの深夜は女性ひとりでは避ける
- 宗教施設を訪れる時は肩や脚を大きく露出しない服装を選ぶ
- カフェではバッグを椅子の背にかけず、膝か体の前に置く
- 見知らぬ人からの誘いには応じない
これらを守れば、ホーチミンでの女性ソロ旅行は十分楽しめる。エリアの安全度を踏まえた具体的な回り方はホーチミン観光モデルコースを参考にしてほしい。
よくある質問(FAQ)
Q. ホーチミンは女性の一人旅でも大丈夫?
大丈夫。昼間の1区中心部は問題なく歩けて、夜も主要通り(ドンコイ通り・グエンフエ通り・市民劇場周辺)なら比較的歩きやすい。深夜のブイビエン通りと人通りの少ない路地は避けるのが無難。宿は1区中心部かタオディエンを選ぶと動線が安定する。
Q. ハノイとホーチミン、どっちの治安がいい?
データでも体感でもハノイの方が穏やか。Numbeoの安全指数でハノイ約66、ホーチミン約50と16ポイント差がある。ひったくり、ぼったくり、高額請求バーなどの軽犯罪はホーチミンの方が警戒が必要。ただし凶悪犯罪はどちらも稀で、油断さえしなければ両方とも旅行できる。
Q. 2024年の邦人刺殺事件は今も警戒すべき?
統計的には極めて稀な事案で、日常的に同様の事件が起きているわけではない。容疑者の動機も「外国人上司への恨み」という個別の事情で、日本人を継続的に狙う犯罪組織が存在するわけではない。ただし、旅行者や在留邦人も突発的な重大事件に巻き込まれる可能性はゼロではないという認識は持っておきたい。路上の揉め事に関わらず、夜の一人歩きを控えれば、過剰に恐れる必要はない。
Q. 夜は何時まで出歩ける?Grabは深夜でも呼べる?
1区中心部(ドンコイ通り・グエンフエ通り)の主要通りは夜でも比較的人通りがある。ただし夜になるほどひったくり等のリスクは上がるので、深夜の移動はGrab一択。Grabは深夜でもアプリで呼べるが、ブイビエン通りの混雑時間帯以外は配車まで多少待つこともある。
Q. タンソンニャット国際空港の治安は?
空港内は比較的安全。ただし到着ロビーを出た直後の客引きタクシーには強い注意が必要。料金の吹っかけ、「高速代」「政府税」などの架空追加料金、偽Grabアプリを見せて近づく手口も報告されている。空港からの移動は正規のGrab乗り場でアプリから配車するか、タクシーならMai LinhかVinasunに限定する。空港から市内への具体的な移動手段と料金はタンソンニャット空港から市内への移動記事で詳しく解説している。
Q. ベンタイン市場は安全?
昼間は問題なく歩ける。ただしスリの発生率は市内で最も高いエリアのひとつ(外務省も多発地域として名指し)。リュックは前に抱える、ポケットに貴重品を入れない、値段交渉中にも荷物から目を離さない——この3つを守れば過度に怖がる必要はない。
Q. スリや盗難に遭ったら、どう動けばいい?
①その場の安全を確保する → ②クレジットカード会社に連絡してカードを停止する → ③最寄りの警察署でポリスレポート(被害届)を作成する → ④海外旅行保険会社に連絡する。ポリスレポートは保険金請求に必要なので必ず取得する。ホテルのフロントに相談すれば、通訳を手配してくれることもある。
Q. ブイビエン通りは行ってもいい?
昼間の通過や早い時間帯の食事なら問題ない。深夜の飲み歩きは覚悟と準備が必要。入店前にドリンクの値段を確認する、現金は最小限だけ持ち歩く、クレジットカードを渡さない、深夜に一人で店に入らない——この4つが守れない自信があるなら、別のエリアで飲む方が安心だ。
Q. 外務省の最新治安情報はどこで確認できる?
外務省 海外安全ホームページ(ベトナム)が基本。渡航前に「たびレジ」に登録しておくと、現地の注意喚起が日本語でメール送信される。領事メール一覧で過去の配信内容も確認できる。
Q. 子連れでホーチミン旅行は可能?
十分可能。ベトナム人は子どもに親切で、レストランや公共の場でも歓迎される雰囲気がある。ただしホーチミンは交通量が非常に多いので、道路横断時は必ず子どもと手をつなぐ。ベビーカーは歩道の段差やバイクの路上駐車で使いにくい場面が多いので、抱っこ紐のほうが機動力が高い。
Q. ホーチミンで治安が悪いエリアはどこですか?危険度ランキングで教えてください
旅行者の視点で、警戒レベル順に並べるとこうなる。
- ブイビエン通り(深夜) — 最も警戒が必要。客引き、昏睡強盗、高額請求バーが集中する
- 4区・8区の夜間 — 旅行者が立ち入る必要のないエリア。昼でも用事がなければ避けたい
- ベンタイン市場周辺 — スリ発生率は市内最多クラス。昼間でも油断しない
- 日本人街(レタントン・タイバンルン通り)の深夜 — 2024年の邦人刺殺事件発生エリア。一人歩きは避ける
- タンソンニャット空港到着ロビー出口 — 客引きタクシーと偽Grabアプリの定番スポット
逆に1区中心部(ドンコイ・グエンフエ・市民劇場周辺)、タオディエン、ビンタン区は基本的に安全で、普通に歩ける。「治安の悪い街」ではなく「治安の悪いスポットが点在する街」と理解するのが実態に近い。
Q. ホーチミンのメトロ(地下鉄)は治安的に安全ですか?
2024年12月に開業したばかりの1号線だが、治安面でのトラブル報告はほぼ出ていない。駅構内には監視カメラと警備員が配置されていて、車内も日立製作所製の新しい車両で清潔感がある。
ハノイのメトロと比べると乗客はずっと多く、何度か乗ったが空いている時間帯の方が少ないくらいだった。それでも張り詰めた空気はまったくない。車内は乗客のほとんどがスマホを見ているだけの、普通の通勤路線だ。バイクの洪水を避けて移動できる分、むしろ気楽に使える。
路線や乗り方はホーチミンのメトロ記事にまとめている。
おわりに|ホーチミンは「警戒」と「楽しみ」の両方を持てる街
ハノイから南下してホーチミンに来た人間として、この街への評価ははっきりしている。
ハノイより軽犯罪の警戒度は上げる必要がある。でも、それを差し引いてもホーチミンは訪れる価値のある街だ。
Numbeoの数値も、外務省の情報も、2024年の邦人刺殺事件も、全部「ホーチミンはハノイより注意深く歩くべき街」というシグナルを出している。けれど、凶悪犯罪に日常的に巻き込まれる街ではない。準備と姿勢さえ整えれば、バイクの洪水の向こうに広がるフランス植民地時代の建築、路地裏のフォー屋台の湯気、タオディエンのカフェで流れる午後の時間——どれも安心して楽しめる。
ホーチミン観光全体の計画やほかのエリア情報はホーチミンの基本ガイドにまとめているので、あわせて読んでほしい。
「歩ける」と「油断できる」は違う。この2つを分けて考えられるようになれば、ホーチミンはあなたにとっても悪くない街になる。