ベトナムの両替ルールが変わった【政令340号】|罰則の中身と、店の選び方

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ベトナムに着いてまず必要になるのが、現金(ベトナムドン)の両替です。その両替のやり方が、2026年に入って少し変わりました。2月9日に施行された新しいルール(政令340/2025/ND-CP)で、許可を持たない店での両替の取り締まりが強くなったためです。

旅行者にとって実際に効いているのは、条文そのものより現場が変わったことのほう。市場周辺の金屋(ゴールドショップ)で両替の取り扱いをやめる店が出ていて、「去年のブログに載っていた店に行ったらもうやっていない」が普通に起きています。

この記事では、何が変わって何が変わっていないのか、そして旅行者はどう店を選べばいいのかについてまとめました。

まず、変わっていないほうから

無許可店での両替は、以前から違法です

実は、「2026年から突然両替が厳しくなった」わけではありません。許可を持たない店での外貨両替は以前から法令違反で、個人も行政処分の対象でした。2019年の政令88/2019/ND-CPの時点で、そう定められています。

よく紹介される「1,000米ドル未満なら原則は警告」という枠組みも、2019年の改正で導入されたものです。今回の政令340で新しく登場したルールではありません。

つまり、法令上の建て付けは以前からありました。変わったのは、その運用のほうです。

では政令340で何が変わったのか

政令340/2025/ND-CPは、通貨・銀行分野の行政罰則を全面的に改訂したものです。旅行者が押さえておくべき点は3つあります。

  • 取り締まりが強化された。施行後、各地で検査や摘発の動きが報じられています
  • 一定の違反について、罰金に加えて取引された外貨・ベトナムドンの没収が規定されている
  • 金(ゴールド)取引の規制も同時に強化された。ベトナムでは金と外貨の商売が同じ店で行われていることが多く、いわゆる「金屋」がまとめて影響を受けています

なお、法人については個人の2倍の罰金が規定されています。駐在や出張で会社の資金を扱う場合は、街中の両替所ではなく銀行を使ってください。旅行者の話とは分けて考える必要があります。

現場で実際に起きていること

旅行者から見て分かりやすいのは、こういう変化です。

  • 両替の取り扱いをやめた店が出ている
  • 取り締まりを受けて休業した店、そのあと再開した店が混在している
  • 結果として、店名を覚えていく方式があてにならなくなった

「レートが良い」と評判だった店ほど状況が動いています。半年前の記事に載っていた店が、いま同じ状態とは限りません。

旅行者が替える金額は、どのくらいの話なのか

「無許可店は避けましょう」と言われても、リスクの大きさが分からなければ判断のしようがありません。金額の目安を置いておきます。

罰則は取引金額で段階が分かれている

政令340第27条では、罰則は取引金額や違反状況に応じて次のように分かれています。

取引金額(米ドル換算) 罰則の目安(個人)
1,000ドル未満 警告
1,000〜10,000ドル未満
または1,000ドル未満でも再犯・複数回
1,000万〜2,000万ドン
+外貨・ドンの没収
10,000〜100,000ドル未満 2,000万〜3,000万ドン
+外貨・ドンの没収
100,000ドル以上 8,000万〜1億ドン
+外貨・ドンの没収

1万円は米ドルに直すとおおよそ65ドル。5万円で約320ドル。つまり1回の両替が数万円なら、警告の範囲に収まるため、過度な心配は不要です。

★重要:少額でも、再犯・複数回なら罰金と没収の対象

ただし、少額でも注意が必要な場合があります。

第27条第2項では、1,000米ドル未満であっても、再犯または複数回の違反に該当する場合は、警告ではなく1,000万〜2,000万ドンの罰金が規定されています。さらにこの第2項の違反については、取引された外貨・ベトナムドンも没収の対象です。

「1回あたりの金額を小さくして、無許可店で何回かに分けて替える」という考え方はやめてください。少額でも、再犯・複数回の違反に該当すれば、警告ではなく罰金と没収の対象になります。

この表は無許可店を利用するための目安ではなく、違反した場合の処分内容を理解するためのものです。数百円のレート差のために、あえて法令上のリスクを取る意味があるか——その判断材料として使ってください。

認可されている店の見分け方

店頭の登録証明書を確認する

街中の両替所を使う場合は、カウンター付近に外貨両替業務についての登録証明書が掲示されているかを確認してください。

政令340の条文では「Giấy chứng nhận đăng ký đại lý đổi ngoại tệ」(外貨両替代理店登録証明書)という名称が使われています。掲示物には提携する銀行名、店名、所在地などが書かれています。

ベトナム語なので全部読む必要はありません。この表記の証明書が掲示されていて、店の名称・所在地と一致しているかを見るだけで足ります。見当たらなければ「exchange license?」と確認すると安心です。

迷いたくない人は、確実な場所を選ぶ

判断に迷いたくない場合は、次のような場所を選ぶのが安心です。

  • 確実:空港の正規両替カウンター
  • 利用しやすい:大型商業施設に入っている両替所(銀行系や認可業者が多い)
  • 要確認:街中の独立した両替所、金・宝石店

空港の正規両替カウンターや銀行の外貨取扱窓口なら、自分で登録証明書を判別する負担はほとんどありません。大型商業施設内の両替所では、銀行直営か、外貨両替代理店登録証明書が掲示されているかを確認してください。判断に迷いたくない人ほど、空港を選ぶのが合理的です。

ホテルのフロントでの両替も選択肢になります。大手ホテルは適法な形でサービスを提供していることが多く、レートは市中に劣るものの、替えた現金をそのまま部屋の金庫に入れられるという実務上の利点があります。

まとめて替えるか、必要な分だけ替えるか

以前からよく言われてきたのが「手数料がもったいないから1度にまとめて替える」という考え方です。手数料の理屈としては正しいですが、近年ではクレジットカードが利用できる店舗も多いため、旅行中の防犯を考えると、必要以上の現金を一度に持ち歩く理由もありません。

  • レートと手間を優先する人:認可された場所でまとめて替え、ホテルの金庫などに分けて保管する
  • 持ち歩く現金を減らしたい人:認可された場所で、旅程に必要な分だけ数回に分けて替える

どちらにせよ判断基準は、罰則の区分を下げることではありません。紛失や盗難に遭ったときの被害を小さくすることです。どちらを選んでも、登録証明書を確認できない店は使わない——そこだけは共通です。

レートの見方|「損していない」の基準を持つ

店選びと同じくらい、ここが金額に効きます。

見るのは「BUY」の数字

両替所の掲示には「BUY」と「SELL」が並んでいます。日本円をドンに替えるときに見るのは「BUY」です。店があなたの日本円を買う、という意味になります。

「BUY 164.08」なら、1円=164.08ドンで替えられます。

マーケットレートから1〜2%以内なら優良

店に入る前に、為替アプリで実勢レートを確認しておいてください。基準がなければ、提示された数字が良いのか悪いのか判断できません。

たとえばマーケットレートが1円=165ドンなら、

  • 手数料1%相当 → 1円=約163.4ドン(1万円で163.4万ドン)
  • 手数料2%相当 → 1円=約161.7ドン(1万円で161.7万ドン)
  • 5%も取られている → 1円=約156.8ドン(1万円で156.8万ドン)

1%と5%の差は、1万円あたり約6.6万ドン。日本円で400円ほどです。フォー2杯分と考えると、店を何軒もはしごするほどの差ではない、という見方もできます。

ドン基準で提示されたときの読み方

ここで間違える人が多い。レートの提示には2通りあります。

  • 円基準:「1円=163ドン」→ 数字が大きいほうが得
  • ドン基準:「1,000ドン=6.06円」→ 数字が小さいほうが得

向きが逆になります。日本の空港の両替所が「1ドン=0.007円」と書いているのも同じ形式で、逆にすると1円=約143ドン。現地の163ドン前後と比べると、同じ1万円でも届く額が20万ドン、日本円で約1,200円違います。

数字の大小だけ見て「こっちが大きいからお得」と判断すると、逆をつかみます。

街ごとに、事情はけっこう違う

ここまでは全国共通の話です。ただし実際にどこで替えるかは、街の作りによって変わります。

都市 特徴 気をつけること
ハノイ 旧市街に観光客も宿も両替所も集中 選択肢が多く、歩いて比較できる
ダナン 両替所は川の西側、宿は海側 動線が分かれている。事前に決めておく
ホーチミン 1区に全部そろっている その1区がスリの多発エリアでもある

それぞれの街での具体的な選び方は、こちらにまとめています。

よくある質問(FAQ)

登録証明書があるか、どう確認すればいい?

掲示物を探すだけで足ります。見当たらなければ「license?」と一言聞いて、店員が掲示を指せばそれで確認完了です。要領を得ない反応なら、替えずに出るのが安全です。

空港の両替所は安全?

空港に入居できるのは認可を受けた銀行・両替業者です。許可証を確認する必要はありません。到着直後に迷いたくないなら、ここで必要分を確保するのが確実です。

金・宝石店での両替はもう完全にダメ?

許可を持っている店なら違法ではありません。ただし認可店と無許可店が混在していて、外から見分けるのが難しいのが実情です。レート差が数百円である以上、旅行者があえて選ぶ理由は薄くなりました。街によって事情が違うので、各都市の記事も参照してください。

日本で両替していったほうがいい?

基本的には現地です。日本の空港のレートは1円=143ドン前後で、現地の163ドン前後と比べると1万円あたり約1,200円の差がつきます。深夜着で不安なら、数千円分だけ日本で持っておくのはありです。

両替にパスポートは必要?

銀行では必要です。街中の両替所では求められないことも多いですが、念のため持っておいてください。

米ドルを持って行って替えたほうが得?

円→ドン、円→ドル→ドンのどちらが得かは、その時々のレート次第です。手数料が2回かかる分、日本円のまま持っていくほうが単純で分かりやすい。ドルを両替に使う前提で持ち込むメリットは、いまはほとんどありません。

おわりに

ルールが変わって面倒になった、と感じるかもしれません。ただ実際にやることは、店に入る前に掲示を見る、それだけです。

そして替えたあとの数百円の差より、替えた現金をどう持ち歩くかのほうが、旅の安全にはずっと効きます。こまめに替えて、必要な分だけ持って歩く。それが2026年の答えだと思います。

※本記事は2026年7月時点の法令・公表資料をもとに、旅行者向けに制度を整理したものです。法律相談ではありません。制度や運用は変更される場合があるため、重要な判断をされる際は最新の情報をご確認ください。
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編集者

ベトナムに魅せられた東京出身の経営者。数字よりも人の営みに惹かれ、現地のリアルを言葉で伝えている。

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