ホーチミンの1区に、一歩足を踏み入れると「ここは東京のどこかの路地裏か?」と錯覚する一角がある。レタントン通りと、そこから枝分かれするタイバンルン通り一帯——ホーチミン最大の日本人街だ。
日本食レストランの看板、日本語のメニュー、提灯の灯り、日本語で話しかけてくる店員。ベトナムのはずなのに、ベトナムらしさを探す方が難しい区画だ。昼はオフィスワーカーがランチに列をなし、夜になると路地の奥までネオンが灯る。
この記事では、レタントン通りの全体像、歩き方、昼と夜の顔の違い、マッサージやホテルの選び方、治安上の注意点までをまとめた。ホーチミン全体の歩き方はホーチミン観光ガイドを参考にしてほしい。
レタントン通りとは|ホーチミン最大の日本人街の全体像

レタントン通り(Lê Thánh Tôn)は、ホーチミン1区を東西に横断する全長約2.3kmの通り。ベンタイン市場の北側からサイゴン川方向に伸びていて、その中間部分——タイバンルン通り(Thái Văn Lung)との交差点を中心とした一帯が、「日本人街」として知られている。
通り全体が日本人街というわけではない。実際に日系飲食店が密集しているのは、レタントン通りのうち数百メートルの区画と、そこから直角に伸びるタイバンルン通りのあたり。この限定されたエリアに、居酒屋、ラーメン店、焼き鳥、寿司、とんかつ、おでん、カフェ、マッサージ店が軒を連ねている。日本人向けレジデンスのサイゴンスカイガーデンやランカスターもこの区画にあり、タクシーで「サイゴンスカイガーデン」と告げれば、この名前で日本人街の中心まで伝わる。
なぜここが日本人街になったのか
レタントンが日本人街として育ってきたのは、1990年代以降の日本企業のベトナム進出と深く結びついている。日系企業の駐在員がこの周辺に住み、仕事帰りに安心して食事ができる場所を求めた結果、日本食の店が一軒、また一軒と増えていった。1990年代後半から2000年代にかけて「リトルトーキョー」と呼ばれる密度に育ち、今では海外にある日本人街としては世界最大級と言われている。
近年は日本食ブーム自体がベトナム人の間で広がっていて、昼のランチタイムは日本人よりもベトナム人の客の方が多い店も珍しくない。日本食は今やこの街の観光資源でもある。
レタントンエリアの歩き方|昼と夜で顔が変わる街
レタントンを理解する上で大事なのは、この街は昼と夜で完全に別の街になるということだ。同じ道を同じ時間差で歩くだけで、受ける印象が180度違う。
昼のレタントン|オフィス街とランチの行列

平日の昼12時前後のレタントンは、ホーチミン有数のオフィスランチ激戦区だ。周辺の日系企業で働くベトナム人スタッフと日本人駐在員が、日本食の店に列を作る。ラーメン店の前には並びが発生し、定食屋ではベトナム人客が日本語のメニューを指差しながら注文している。
特にラーメンの密度が高く、1区のレタントン一帯は「ホーチミンのラーメン激戦区」と呼ばれている。博多系、家系、つけ麺、二郎系まで、日本の主要なラーメンジャンルがひととおり揃っている。日本の有名チェーンもあれば、現地の日本人オーナーが個人で経営する専門店もあり、日本で食べるのとほぼ同じクオリティが成立しているのがこの街の凄さだ。
昼のレタントンは健全で活気がある。家族連れでも、女性一人でも、全く問題なく歩ける。
夜のレタントン|提灯とネオンとヘム(路地裏)

日が落ちると、レタントンは別の顔を見せる。18時を過ぎるあたりから、居酒屋と酒場の提灯が灯り、焼き鳥の炭火の匂いが路地に流れ、ビジネスマンがネクタイを緩めながら集まってくる。19時以降のタイバンルン通りは、日本の新橋や神田の仕事帰りの雑踏とほぼ同じ光景になる。レタントン酒場と呼ばれるジャンルが根付いているのもこの街の特徴だ。
問題は、この時間帯から路地裏(ヘム)の顔が出てくること。「ヘム(Hẻm)」はベトナム語で「路地」を意味する単語で、レタントン通りから一本中に入った細い路地の迷路を指す。このヘムこそが、日本人街の核心であり、最も妖しい区画でもある。
ヘム(路地裏)の正体|レタントンの夜の核心
レタントン一帯のヘムに入ると、世界が突然、細く狭く、カオスに変わる。
幅2メートルほどの路地の両脇に、居酒屋、カウンターバー、カラオケラウンジ、ガールズバー、マッサージ店、スナック、看板のない店——これらがびっしり並んでいる。日本語の看板が多い。日本語で話しかけてくる店員がいる。呼び込みの女性が「オニイサン、日本人?安くしとくよ」と声をかけてくる。
ヘムの代表格「8Aタイバンルン」

ヘムの中でも特に有名なのが、タイバンルン通り8A番地の路地。この区画だけで数十軒の日系店舗が軒を連ねている。焼き鳥屋の隣にカラオケラウンジがあり、その向かいが高級寿司店、さらに奥にマッサージ店——という密度の濃さは、日本の都市でもあまり見ない。観光として歩く分にはとにかく面白い。写真を撮りたくなる。
ヘムを歩く時の心構え
ヘムは観光散歩の対象としては魅力的な場所だが、夜の客引きと店選びには注意が必要。
- 「日本語で話しかけてくる客引き」についていかない|良心的な店は基本的に客引きを路上に出さない
- クレジットカードを店員に渡さない|目の前で決済してもらう
- 会計前にメニューと価格を必ず確認する|「おまかせ」「時価」は要警戒
- 深夜の一人歩きは避ける|特に女性
- 路上のトラブルに関わらない|見物人になろうとしない
ヘムには健全で素晴らしい名店もたくさんある。日本人オーナーが丁寧に経営する焼き鳥屋、昭和の空気を残すそば屋、カウンター越しに店主と話せる寿司屋——こういう店はガイドブックやGoogleマップの口コミで事前に調べて行くのが安全だ。一方で、路上の客引きに連れて行かれる店には、ぼったくりバーや不明瞭な料金体系の店が紛れている。この区別さえできれば、ヘムは怖がる場所ではなく、楽しむ場所になる。
レタントンで食べられるもの|日本食の密度が異常な街

レタントンの食の特徴を一言で言うと、「日本の専門店が1区画にまとまっている」。具体的に何があるかというと:
- ラーメン|博多系、家系、つけ麺、二郎系、味噌、塩——日本の主要ジャンルはほぼ揃う。激戦区
- 焼き鳥・居酒屋|炭火焼きの専門店から、カウンターだけの小さな店まで
- 寿司・刺身|日本から食材を輸入している高級店が複数
- とんかつ・そば・うどん|それぞれ専門店がある
- おでん・焼肉・お好み焼き・たこ焼き|日本の家庭料理系の専門店も
- カフェ・パン屋|日本式のベーカリーや喫茶店もある
- 日本食スーパー・コンビニ|日本から輸入した食材や日用品を扱う店が複数。日系コンビニ(ファミリーマートなど)もあり、日本の食材や日用品が手に入る
正直、ホーチミンで日本食なら、まずレタントンを思い浮かべれば外さないレベルでまとまっている。具体的な店選びは、Googleマップの口コミや、ホーチミン在住日本人のブログ・Facebookグループの情報が信頼できる。観光客向けの記事には登場しない「地元の隠れた名店」がこの街には多いからだ。エリア別・タイプ別にホーチミンの食を見渡すならホーチミングルメ完全ガイドも参考になる。
ベトナム料理は食べられるのか
「日本人街でベトナム料理を食べるのは邪道」と思うかもしれないが、レタントン一帯にもローカルのベトナム料理店はちゃんとある。フォーの屋台、バインミーの売店、ブンチャーの食堂、ベトナムコーヒーのカフェ。日本食の店が9割を占めている中に混ざっているので、むしろ「日本食で満腹になった翌日の朝、近所のフォー屋で口直しする」みたいな使い方が定番だ。フォーやバインミーなどベトナム料理の全体像はベトナムの食べ物ガイドを参照してほしい。
レタントンのマッサージ|アオザイマッサージと「健全店」の選び方

レタントン一帯は、日本食と並んでマッサージ店の密度が高いエリアでもある。日本語が通じて、日本人の好みに合う丁寧な施術が受けられる店が多く、ランチや買い物のついでに立ち寄る人が多い。
このエリアのマッサージで知っておきたいのが、「アオザイマッサージ」と呼ばれるスタイル。セラピストがベトナムの民族衣装アオザイを着て施術するのが特徴で、レタントン周辺の日系マッサージ店の定番になっている。アオザイそのものの背景はアオザイ完全ガイドで詳しく扱っている。
宿泊しなくても使える「東屋マッサージ」
日本人街のマッサージで分かりやすい選択肢が、日系ビジネスホテル東屋(Azumaya)が併設しているマッサージだ。宿泊客でなくても利用でき、フットマッサージや全身のボディマッサージを日本語が通じる環境で受けられる。料金が明朗で、初めてでも入りやすいのが利点。露天風呂とセットで使える店舗もある(東屋ホテルそのものは後述)。
「健全な店」と「そうでない店」を見分ける
注意したいのは、レタントンのマッサージには純粋に施術を受ける店と、いわゆる風俗寄りの店が混在していること。前者は看板やメニューに料金が明示されていて明朗会計、後者は路上の客引きや不明瞭な料金で誘ってくることが多い。見分けの基本は食事の店選びと同じで、事前にGoogleマップの口コミで料金と評判を確認し、目的の店に直行すること。路上で声をかけてくる客引きにはついていかない。マッサージの種類・相場・健全店の選び方の全体像はホーチミンのマッサージ完全ガイドにまとめている。
レタントンに泊まる|日本人街の代表格・東屋ホテル

「日本食と日本人コミュニティの空気の中に泊まりたい」なら、レタントン周辺のホテルは便利だ。観光名所が集まるドンコイ通り側に比べると名所からは少し歩くが、日本語が通じて、和食の朝ごはんが食べられて、夜は徒歩圏で居酒屋に行けるという安心感がある。
このエリアで名前がよく挙がるのが、日系ビジネスホテルの東屋(Azumaya)。タイバンルン通りやレタントン通りに複数の店舗(タイバンルン1号店・2号店、レタントン店など)を構えていて、屋上の露天風呂(温泉ではない)、和朝食ビュッフェ、日本語対応、フットマッサージ併設が共通の特徴。日本のビジネスホテルの感覚にいちばん近い宿だ。
- 立地|日本人街のど真ん中。コンビニ・居酒屋・日本食が徒歩圏
- 客室|日本式のシングル〜。店舗や部屋タイプで設備差があるので、料金だけでなく窓の有無なども確認したい
- 料金|中級ビジネスホテル帯。時期・部屋で変動するので、予約サイトで最新の料金を確認するのが確実
東屋以外にも、レタントン周辺には日本人向けの中級ホテルやサービスアパートメントが点在している。一方で、観光名所を効率よく回りたいなら、ドンコイ通りやグエンフエ通り周辺のホテルの方がアクセスは良い。ドンコイ通りの記事でホテル選びを比較しているので、自分の旅の目的に合わせて選んでほしい。料金の相場感はホーチミンの物価ガイドも参考になる。
レタントン通りの治安と注意点

日本人街だから日本のような安全な街、と思うと足をすくわれる。レタントンはホーチミン市内でも軽犯罪が多発するエリアのひとつで、外務省の海外安全ホームページでも名指しで注意喚起されている。
2024年6月の邦人刺殺事件
2024年6月4日の午前11時頃、1区ベンゲー街区のタイバンルン通りで、36歳の日本人男性が刃物で刺されて死亡する事件が発生した。容疑者はベトナム人の男で事件後に逮捕されており、報道によれば被害者との面識はなく、動機は外国人(日本人)上司への恨みとされている。事件は昼前の路上で起きている。
統計的には極めて稀な事案で、日常的に同様の事件が起きているわけではない。ただし白昼に近い時間帯の路上で、面識のない相手に刺される事件が日本人街で起きたという事実は、歩く時に頭の片隅に置いておきたい。路上の揉め事には関わらない、これが基本姿勢になる。
事件の詳細や治安全体の話は、ホーチミンの治安記事で詳しく書いている。
夜間のトラブル類型
レタントン一帯で報告されているトラブルは、主にこの4つ:
- バーの高額請求|ヘムの客引きに連れて行かれた店で、会計時に桁違いの額を請求される
- 強引な客引き|日本語で話しかけてきて、断っても袖を引かれる
- スリ|バッグや財布、スマホが狙われる。夜の人混みで特に多い
- 偽タクシー・偽Grab|酔客が狙われやすい時間帯に横付けしてくる
対策をひとことで要約すると、「客引きに応じない・現金を最小限にする・カードを渡さない・深夜の一人歩きを避ける」の4点に尽きる。
レタントンへの行き方
1区中心部のどこからでも徒歩圏内なのが、このエリアの便利なところ。Googleマップで「Le Thanh Ton Street」または「Saigon Sky Garden」と検索すれば、日本人街の中心位置がすぐに地図で確認できる。
- ベンタイン市場から|徒歩約10〜15分、約1km(市場の北門=レタントン側)
- サイゴン大教会・中央郵便局から|徒歩約10分
- ドンコイ通りから|徒歩約5〜10分
- 市民劇場(オペラハウス)から|徒歩約5分
- 統一会堂から|徒歩約15分
Grabで来る場合は、目印は「サイゴンスカイガーデン」。このレジデンスの名前を告げれば、ドライバーはほぼ確実にこの日本人街の中心にたどり着く。
メトロ1号線の駅からはまだ少し距離がある。最寄りはベンタイン駅または市民劇場駅で、そこから徒歩5〜10分。メトロでタオディエンから戻ってきて、そのままレタントンで夕食、という動線は現実的に成立する。メトロの使い方はホーチミン・メトロの記事にまとめている。レタントンを旅の動線にどう組み込むかは、ホーチミン観光モデルコースの記事も参考になる。
よくある質問(FAQ)
Q. レタントンは日本語だけでも大丈夫ですか?
ほぼ問題ない。日系の飲食店では店員に日本語が通じるし、メニューも日本語表記がある店が多い。呼び込みや客引きの女性も日本語を話せる人が多い。ただし、ローカルのフォー屋や路上の屋台では英語か簡単なベトナム語が必要になることがある。
Q. 昼と夜、どちらに行くのがおすすめですか?
初めてなら両方行くのが正解。昼のランチタイム(12〜14時)にラーメンや定食を食べて、街の健全な顔を見る。そして夜(19時以降)に戻ってきて、提灯とネオンのヘムを散策する。この両方を体験して初めて、「レタントンを歩いた」と言える。観光として行くなら、昼のランチ→午後は別のスポット観光→夜にレタントンのヘム散策+夕食、という動線が自然だ。
Q. 女性一人でも歩けますか?
昼間は全く問題なく歩ける。ランチタイムのレタントンは女性客も多いし、健全な雰囲気だ。夜も、メインのレタントン通りや人通りの多いタイバンルン通りなら比較的歩きやすい。ただし、深夜(23時以降)のヘムの奥や、人通りの少ない路地に入るのは避けた方が無難。女性一人旅でレタントンを楽しむなら、20〜21時頃に夕食で訪れて、22時前には切り上げるのがバランスの良い歩き方だ。
Q. ガールズバーやカラオケなどのナイトスポットの雰囲気は?
ヘムには日本語で呼び込みをしてくるガールズバー、カラオケラウンジ、スナック風の店が多い。明朗会計をうたう店もあれば、料金体系が不透明な店やぼったくりバーが紛れているので、路上の客引きについていくのは勧めない。どうしてもこういう店で遊びたい場合は、事前に信頼できる情報源(在住日本人のブログやレビュー)で店を選んで、料金システムを確認してから行くのが最低限の自衛策になる。この記事では具体的な店の紹介は扱わない。
Q. マッサージはどこで受けるのが安心ですか?
料金が明示された明朗会計の店を選ぶのが基本。日系ホテル東屋のマッサージは宿泊客でなくても利用でき、初めてでも入りやすい。アオザイマッサージなど日系の店も多いが、路上の客引き経由ではなく、口コミで料金を確認して直行するのが安全だ。詳しくはホーチミンのマッサージ完全ガイドを参照。
Q. 客引きにしつこく声をかけられたらどうすればいい?
基本は無視して歩くのが一番。目を合わせず、相手にせず、早歩きで通り過ぎる。日本語で話しかけられても返事をしない。強引に袖を引かれた場合は、はっきり「No」と言って振りほどく。それでもついてくるようなら、明るい場所や人通りの多い通りに出る。店を探すなら、事前にGoogleマップで調べて目的の店に直行するのが、客引きを避ける最も確実な方法だ。
Q. 2024年の邦人刺殺事件の現場はどこですか?
タイバンルン通りで発生した。ただし現場を特定する行為は意味がないし、むやみに話題にすべきでもない。事件の詳細と、それを踏まえた歩き方の注意点は、ホーチミンの治安記事で詳しく書いている。「路上の揉め事に関わらない」「夜の一人歩きを避ける」の2点を守れば、過剰に恐れる必要はない。
Q. タイバンルン通りとレタントン通り、どう違うのですか?
物理的に別の通りだが、実質的にはひとつのエリア。レタントン通りは東西に走る幹線道路で、タイバンルン通りはそこから直角(南北方向)に伸びる細い通り。2本の通りが交差する一帯が「日本人街」と呼ばれている。在住者は両方を区別せず「レタントン」と一括りに呼ぶことが多いが、検索しやすさや位置特定のために別名で呼ばれることもある。
Q. ホテルはこのエリアに泊まるべきですか?
日本食と日本人コミュニティの雰囲気を重視するなら便利。東屋をはじめ日本人向けの中級ホテルやサービスアパートメントが複数ある。ただし観光メインで回るなら、ドンコイ通りやグエンフエ通り周辺のホテルの方が観光スポットへのアクセスが良い。詳しくは上の「レタントンに泊まる」の項を参照。
Q. ファンビッチャン通り(第二の日本人街)との違いは?
ここ数年、ビンタン区のファンビッチャン通り(Phạm Viết Chánh)が「第二の日本人街」として注目を集めている。レタントンが駐在員と出張者向けの伝統的な飲み屋街の雰囲気なのに対して、ファンビッチャンは新しい日本食レストランやカフェが集まる落ち着いたエリアで、客層もファミリー層や在住者が中心。ランドマーク81のあるエリアに近く、ガールズバーやカラオケがほぼなく、食事を静かに楽しめるのが特徴だ。詳しくは別記事で扱う予定なので、ここでは概要のみに留める。
まとめ|レタントンは「歩いて理解する」街
レタントン通りを一言で表すなら、「日本とベトナムがひとつの路地に同居している街」だ。
昼は健全な日本食ランチ街。夜は提灯とネオンとヘムの混沌。そのどちらもがこの街のリアルで、片方だけを見て帰ると「レタントンを体験した」ことにはならない。日本食を食べに来るだけでも十分楽しめるし、ヘムの散策やマッサージに時間を使うならさらに濃い体験になる。
歩く上で守ることはシンプルで、「客引きに応じない、カードを渡さない、深夜の一人歩きを避ける、店は事前に調べて行く」。これだけ押さえておけば、トラブルに巻き込まれる可能性は大きく下がる。
ホーチミンに数日滞在するなら、レタントンは一度は足を運ぶ価値がある。「日本人街」という名前から受ける印象以上に、この街は立体的で、複雑で、歩いていて飽きない。提灯の灯りと客引きの声と焼き鳥の匂いの中を、自分のペースで歩いてみてほしい。