SNSで見かける、赤い線香が一面に敷き詰められたあの写真。ハノイから35km離れたクアンフーカウ村(Quảng Phú Cầu)で撮られたものです。
行ってみて分かったのは、あの景色が広がっているのは村の一角だけだということでした。この記事では、料金を払う場所と払わなくていい場所、どれくらい時間がかかるのかを、2025年10月に実際にまわって確かめたことから書きます。

線香村(クアンフーカウ)とは|ハノイから南に35km
クアンフーカウはハノイ市ウンホア地区にある村で、100年以上前から線香の軸(竹ひご)を作ってきました。ここで作られた線香は国内だけでなく、中国、インド、マレーシアなどにも出ています。
線香作りはもともとフールオントゥオン集落だけの仕事でしたが、そこからダオトゥー集落、カウバウ集落へと広がり、いまは村全体が線香の産地になっています。
数年前から、赤く染めた線香を扇のように広げて並べた写真がSNSで広まり、撮影目的の来訪者が増えました。いまは観光の受け入れ場所が用意されていて、外国人観光客のほうが多い状態です。
撮影スポットは2か所ある|ディンバウとチュアモイ
まず知っておきたいのが、写真を撮る場所は村の中に2か所あるということです。
- ディンバウ(Đình Bầu):カウバウ集落。村の集会所(亭)の前。空間が開けている
- チュアモイ(Chùa Mối):ダオトゥー集落。お寺の境内。撮れる場所が多い
2か所は約550m離れているので、両方まわることもできます。料金はどちらも同じです。
今回行ったのはディンバウのほうです。Googleマップで「クアン・フー・カウ 線香工芸村」を目的地にすると、こちらに着きます。住所はĐ. 429, Cầu Bầu。

亭の門を背にして、赤い線香が地面を埋め、その中に緑の道が曲がりくねって作られています。星や花の模様が色違いの線香で描かれていて、撮るために作られた場所だとひと目で分かります。

脇には銀色の脚立が7、8台立てかけてあります。上から全体を入れて撮るための道具で、誰でも使えるように置いてあります。ノンラーや扇子、椅子も貸してくれます。
料金は1人50,000ドン|払う場所と、払わなくていい場所

料金は1人50,000ドン(約300円)。青いテントの下が受付で、ここで払います。テントは受付だけでなく、飲み物と線香の販売も兼ねていました。
その日のうちなら何度でも撮り直せます。アオザイなどの衣装を借りる場合は別途100,000ドン前後です。
ハノイからの行き方
中心部から35km、車で1時間ほどです。郊外なので、帰りの足をどうするかまで決めてから出るのが要点になります。
貸切チャーター(ドライバー付き)
いちばん確実なのがこれです。4時間・8時間といった時間制で、行き先を伝えて見積もってもらう形の手配があります。
料金が距離ではなく行き先と時間で決まるので、郊外を往復しても金額が事前に確定します。日本語で相談できる手配もあります。事前の予約と問い合わせが必要になるぶん、当日に呼ぶ手軽さはありません。
Grabの時間貸し
Grabのアプリにも時間単位で車とドライバーを借りるメニューがあり、燃料代とドライバー代が含まれています。2026年9月にアプリで確認したところ、4時間547,000ドン(約3,300円)、6時間756,000ドン(約4,500円)と表示されました。料金は利用時のアプリ表示を確認してください。
路線バス91番
安く行くならイエンギア(Yên Nghĩa)バスターミナル発の91番です。クアンフーカウ村付近の停留所で降りて、そこから村までは徒歩数分から10分ほどです。
イエンギアはハノイメトロ2A号線(カットリン〜ハドン)の終点でもあるので、旧市街からメトロでイエンギアまで行き、91番に乗り換えるという組み立てができます。降りる停留所が分かりにくいので、乗る前にGoogleマップで経路を出しておくと安心です。
道は国道21Bから省道429号
車でもバイクでも、中心部から国道21Bを南下して省道429号に入る一本道です。信号の少ない広い道なので、時間は読みやすいほうです。
所要時間|撮影スポットは15分、村を歩くと30〜40分
撮影スポットそのものは、15分ほどで見終わります。脚立に上って構図を決め、何枚か撮って、模様の周りを一周する。それで終わりです。衣装を借りるならもう少しかかります。
35km走って15分、と聞くと割に合わないように思えますが、時間の使いようは撮影スポットの外にあります。村の道を歩いてまわると、そこから30〜40分は使えます。
往復の移動を入れると半日の予定になります。Grabの時間貸しなら6時間プランを取っておくと、距離も時間も余裕があります。
撮影スポットの外|色を付ける前の線香と、牛
撮影スポットを出て村の道に入ると、景色が変わります。

道の両側に、色を付ける前の生成りの束が延々と立てかけて干してあります。赤く染めたものではなく、割った竹をそのまま干している段階のものです。その道を牛が歩いています。

脇の草地では鶏が餌をついばんでいます。撮影スポットのように整えられてはいませんが、村が実際に線香で動いていることが見えるのはこちら側です。

通りには、緑の袋を山積みにした三輪トラックが走っています。線香の材料や製品を運ぶ車で、村のあちこちで見かけます。
村を歩いていて起きたこと
撮影スポットを出て、ノンラーだけかぶって村を歩いていました。男2人です。地図に出ていた村の外れの寺まで行ってみるつもりでした。
途中、道端で村の男性が5、6人集まって話しているところを通りました。まだ昼過ぎでしたが、明らかに酒が入っていました。通りすがりに「どこから来た」と聞かれたので「ジャパン」と答えると、笑いながら何か言っていました。
しばらく歩いていると、その中の1人がバイクで追いかけてきました。何か言っているのですが分かりません。寺に行くところだと身振りで伝えると、乗れ乗れと手で示されました。3人乗りで寺まで運んでくれました。

着いた寺は門が閉まっていました。そのおじさんは周りの人に声をかけて、なぜ開いていないのかと熱心に聞いてまわってくれましたが、結局開きませんでした。
戻ろうとすると、また乗れと言われました。今度は村の売店に連れて行かれ、ココナッツジュースをごちそうしてくれました。そのうち雨が降ってきて、カッパを2つ買ってくれました。お金を渡そうとしても受け取りません。

翻訳アプリを向けても「いい、いい」と手で断って、最後までベトナム語で話し続けていました。言葉はひとつも通じていません。それでも、寺が閉まっていたことを一緒に残念がって、雨が降ったらカッパを買ってくれる人がいる。そういう村でした。
いつ行くか|天気と時期
線香を干すのは晴れた日です。曇りや雨の日は干す量が減るので、行く前に天気を確認してください。
撮影スポットの赤い模様は常設で並べてあるので、雨上がりでも色は出ています。ただし村の道の干し場は天気に左右されます。今回は曇りで路面が濡れていましたが、生成りの束は干されていました。
村がいちばん忙しいのは旧暦11月から12月のテト前で、生産の最盛期にあたります。旧暦なので、西暦では年によって時期がずれます。写真を撮るなら光がしっかりある乾いた季節が向きます。
ハノイ近郊のほかの村と比べて
ハノイの近郊には、ほかにも職人の村があります。
バッチャン村は陶器の村で、中心部から南東に13km。店と市場と博物館があり、買い物をする場所として時間が使えます。ダーシー村は包丁とハサミの鍛冶の村で、こちらは工房で仕事を見る村です。
線香村はこの2つと比べると買う場所や見学する施設が少なく、写真を撮る村という性格がはっきりしています。何を目的に行くかで、選ぶ村が変わります。
よくある質問
入場料はいくらですか?
撮影スポットが1人50,000ドン(約300円)です。その日のうちなら何度でも入れます。衣装のレンタルは別で100,000ドン前後。村の道を歩くだけなら無料です。
撮影料は別にかかりますか?
別料金はありません。50,000ドンに撮影が含まれています。ただし場所によっては100,000ドンを取るところもあるので、入る前に確認してください。
ハノイからどうやって行きますか?
車で1時間ほどです。時間制の貸切チャーターを手配するか、Grabの時間貸しを使います。安く行くならイエンギアバスターミナルから91番のバスで、クアンフーカウ付近の停留所で降ります。
Grabの時間貸しは何時間で取ればいいですか?
往復で約70km走るので、60kmまでの4時間プランでは超過分が加算されます。90kmまでの6時間プランを取っておくと距離を気にせずにすみます。
何時間みておけばいいですか?
撮影スポットだけなら15分、村を歩くところまで入れて30〜40分です。往復の移動を含めると半日みておくと余裕があります。
開いている時間は決まっていますか?
Googleマップの表示は24時間ですが、受付に人がいる時間帯に行くのが確実です。日が出ている時間に合わせて行けば問題ありません。
線香は買えますか?
買えます。受付のテントで販売しています。
子ども連れでも大丈夫ですか?
広場は平らで歩きやすい場所です。ただし日陰がなく、村の道には車やバイクが通ります。手をつないで歩ける年齢なら問題ありません。
おわりに
線香村は、ハノイから片道1時間、入場料50,000ドン、撮影スポットは15分で見終わる場所です。写真を撮りに行く村だと分かったうえで行けば、期待とのずれは起きません。
そのうえで、村の道は無料で歩けます。色を付ける前の線香が干された道を牛が歩いていて、三輪トラックが荷を運んでいる。撮影スポットの写真だけでは分からない村の姿は、そちら側にあります。
車を6時間押さえておけば、その両方に時間を使えます。